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新興国情報

露金融大手VTB、モスクワ銀行の経営支配権の掌握ほぼ確実に
2011/03/30

ロシア2位の国営金融大手VTB(対外貿易銀行)が同国5位のモスクワ銀行の完全買収を目指して、2月22日にモスクワ市政府からモスクワ銀行の株式46.48%を取得してから1カ月余りが経過したが、ここにきて、ようやくモスクワ銀行の過半数の株式を獲得し、経営支配権を握ることがほぼ確実な情勢となってきた。

ロシア経済紙ヴェードモスチ(電子版)が3月21日に伝えたところによると、モスクワ市政府からモスクワ銀行の株式46.48%を取得したあと、VTBはスイス金融大手クレディスイスからもモスクワ銀行の株式2.77%と少数株主のスイスの投資会社からも同1.7%の計4.47%を取得したほか、暗礁に乗り上げていたゴールドマン・サックス(GS)の同3.88%の取得も、ロシアの上院議員で大富豪のスレイマン・ケリモフ氏を通じて獲得することで合意したからだ。

当初の計画では、VTBはGSからモスクワ銀行の持ち株3.88%を取得することで合意していたが、その事実を知ったモスクワ銀行のアンドレ・ボロディンCEO(最高経営責任者)やレフ・アラルイエフ副会長ら経営陣は急きょ、3月3日に、それを阻止するため、ロンドン商事仲介裁判所に対し、GSの持ち株の差し押さえを求めている。

その結果、同裁判所も同日には、GSの持ち株3.88%をエスクロー口座に保管する形で、事実上、差し押さえの決定を下したため、モスクワ銀行の経営陣の作戦は成功したかにみえた。しかし、3月18日に、同裁判所が差し押さえ命令を解除してからは情勢が一変、GSはケリモフ氏にいったん問題の持ち株3.88%を71億ルーブル(約210億円)で売却する戦術に変更したのだ。

これには裏があって、ケリモフ氏とVTBは事前に、ケリモフ氏が取得したモスクワ銀行の株式をVTBの株式と交換することで話がついていたといわれる。GSにすれば、差し止めの当事者であるVTB以外の投資家に持ち株を売れば、再度、差し止め請求が行われることはないとの読みがあった。

このため、GSは3月23日に、実際に持ち株を処分したことを明らかにしたものの、事柄の性質上、誰に持ち株を売却したか明らかにできず、売却先は公表していない。しかし、ケリモフ氏にその株式が渡ったというのは公然の秘密になっている。

ケリモフ氏はVTBが2月にIPO(新規株式公開)を実施した際、同氏がオーナーを務める2つの投資会社を通じて、VTBの株式1.5%を5億ドル(約410億円)で取得し、個人としてはVTBの最大株主となっている。

今回、同氏がGSのモスクワ銀行株をVTB株と交換することを決めた背景には、ケリモフ氏のVTBに対する持ち株比率をさらに拡大することにあるというのが大方の見方だ。

VTBは傘下にロシア2位の投資銀行VTBキャピタルを保有しており、ロシアの国営企業の民営化が今後、急ピッチで進むため、VTBの投資部門が民営化で大きな役割を果たしていくことが予想される。それだけに、ケリモフ氏にとってVTBの持ち株比率の拡大は当然の選択といえる。

ちなみに、ロシアの民営化スケジュールは、アレクセイ・クドリン財務相が昨年9月15日に明らかにした計画では、今後5年間に銀行を含む大手国営企業の民営化で、毎年100億ドル、5年間では計500億ドル(約4兆800億円)の資金を調達するとしている。

ただ、ロシア連邦院のホバネス・オハニアン経済政策委員長は、この民営化規模は2倍の1000億ドル(約8兆1,600億円)規模に拡大する可能性があるとも指摘している。こうした中、ロシア政府は昨年11月17日に、当面の民営化政策として、向こう3年間(2011-2013年)の銀行を含む国営企業主要10社の民営化計画を承認している。それによると、政府は10社の株式売却で1兆ルーブル(約2兆9,000億円)の資金を調達する見通しだ。

(増谷 栄一)

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