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新興国情報

ロシア、資本流出に歯止めかからず=大統領選控える中、質への逃避で(前編)
2011/05/11

ロシア中銀によると、一大“産油国”であるロシアは最近の原油高の恩恵を受けているにもかかわらず、同国の1-3月期の資本流出額は純額ベースで前年同期比45%増の213億ドル(約1兆7,300億円)に達し、わずか3カ月間で昨年1年間の資本流出額353億ドル(約2兆8,600億円)の6割を占めるほど急ピッチで資本流出が続いている。

流出超に転じたのは2010年第3四半期(7-9月)からで、そのときは31億ドル(約2,500億円)だったが、同年第4四半期(10-12月)には一気に215億ドル(約1兆7,400億円)となった。今年に入ってからも、流出超は1月だけで前年同月比11%増の130億ドル(約1兆500億円)を記録している。第2四半期(4-6月)に入った4月だけでも53億ドル(約4,300億円)と、3月の43億ドル(約3,500億円)を上回るハイペースだ。

アナリストは、資本流出は主に、ロシア経済の低成長や国内の投資環境の乏しさ、さらには年末から来年春にかけての連邦議会選挙や大統領選挙を控えて外資系企業が大きな投資案件を進めにくいことやロシア企業の賄賂(わいろ)体質、主要産業に対する国の関与の大きさなどで投資資金の“質への逃避”が起きているとみており、今後、国内の投資環境が改善されない限り、ロシア国内からの資本流出は続くと指摘している。

また、ロシアの経済成長率は、今年は市場では+4.4%(政府の標準シナリオでは原油価格1バレル75ドルでGDP成長率は+4.2%)と予想しているが、これは中国の+8%やブラジルの+4.5〜+5%に比べて見劣りするばかりか、インフレ率もロシア政府の+6〜+7%予想に対し、市場では+8%が現実的と指摘するように、ロシアは投資対象として魅力が低いことも背景にあるようだ。

さらに、ロシアは世界的な原油高騰で余剰資金は豊富なものの、国内には高利回りの資金運用先が見つからず、結局、行き場に困った資金が国外に流出しているのが実態だという。

政府、対内直接投資促進基金設立へ

このため、政府では外国投資家の関心を喚起させようと、さまざまな対策の検討を開始している。その一つは、経済発展省による対内直接投資促進基金の設立だ。これはエルビラ・ナビウリナ経済発展相が中心になって検討しているもので、外国企業と共同で、ロシア国内のハイテク産業など経済近代化に貢献する産業分野への直接投資を促進するため、2015-2016年をメドに総額100億ドル(約8,100億円)規模の基金を設立する計画。

同相は、今年は手始めに10億ドル(約810億円)を政府が拠出して基金を立ち上げるとしている。同基金は国営のロシア開発対外経済銀行(VEB)が管理・運営する。同相はサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに間に合うよう、6月1日までに外国企業に対し、同基金設立構想を提案する考えだ。

すでに、政府は基金創設に向けて、非公式に米証券最大手ゴールドマン・サックスに助言を求めているという。この構想自体はドミトリー・メドベージェフ大統領自らが提案したもので、同基金への出資者として、アポロ・マネジメントやブラックストーン・グループ、カーライル・グループなどの米国のプライベートエクイティ(PE)ファンドや中東のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、国家投資ファンド)などがすでに打診を受けているという。

しかし、これまでのところでは、カーライルなど多くのPEファンドはロシア投資に対しては国内の法規制や商慣習、汚職などに対する懸念が強く、慎重な姿勢を崩していないのが実情のようだ。

最近でも、5月末に米ナスダック店頭市場でのIPO(新規株式公開)を予定しているロシアのインターネットサービス最大手ヤンデックスが投資家向けの上場目論見書の中で、同社が国の関与や新興財閥による買収攻勢にさらされる可能性が高いことを警告している。

国の関与については、メドベージェフ大統領がインターネットと科学技術を優先順位の高い国策として位置づけており、大統領自身もしばしば、ロシア語の国営検索エンジンの必要性やロシアのインターネット企業に対する外国資本の投資を規制する考えを表明していることが背景にある。

また、新興財閥については、有力視されているのは露鉄鉱石鉱山最大手メタロインベストの共同オーナーであるアリシェル・ウスマノフ氏で、同氏は、昨年11月にロンドン証券取引所(LSE)でIPO(新規株式公開)を実施した露インターネット大手メール・グループ(mail.ru)の株式26.9%保有しているというように、ロシアでは主要企業の大株主には新興財閥の存在は当たり前となっているのが実態だ。(「後編」に続く)

(増谷 栄一)

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