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新興国情報

英金融大手HSBC、ロシアのリテール金融市場から撤退へ=バークレイズに続き
2011/05/25

国営銀行が幅を利かせているロシアのリテール(消費者向け小口金融)市場では、ロンドン金融街(シティ)のトップ銀行のHSBCやバークレイズさえも国営大手銀行の前では無力に等しいようだ。

それというのもHSBCは4月下旬、バークレイズに続いてロシアのリテール市場から撤退する方針を明らかにしたからだ。

HSBCは、2009年半ばから2年間にわたって、ロシア国内でリテール金融サービスの提供を開始したが、同国最大の国営銀行ズベルバンク(ロシア連邦貯蓄銀行)と同国2位の国営VTB(対外貿易銀行)は両行合わせて資産規模でロシア国内金融市場の約60%も占有、特に、リテール分野では外国銀行はこれら国営2行の前では完全に競争力を失っているのが実態だ。

すでに、HSBCはロシア国内の顧客に対し、6月30日までにすべての預金口座を解約するよう求めており、今後は、ロシアではM&A(企業の買収・合併)やIPO(新規株式公開)、起債などの法人向けの投資銀行業務に特化していく考えだ。

英バークレイズもリテール市場から撤退

バークレイズは2008年からモスクワに拠点を置くエキスポバンクを7億4,500万ドル(約611億円)で買収してリテール市場に進出したが、HSBC同様、今年2月にリテール市場からの撤退を発表。今後は投資銀行業務に専念する方針を明らかにしている。両行が投資銀行業務に方向転換するのは1兆ルーブル(約2兆9,000億円)といわれるロシアの国営企業の民営化計画が今後、本格的に動き出すからだ。

ちなみに、ロシア政府は昨年11月に、向こう3年間(2011-2013年)の銀行を含む国営企業主要10社の民営化計画を承認したが、10社の株式売却による資金調達額は1兆ルーブルに達する見通しだ。

内訳は、石油・天然ガス大手ロスネフチは株式全体の25%、水力発電会社ルスハイドロは7.97%、送電系統運用大手のフェデラル・グリップ・カンパニーは4.11%、造船最大手ソブコムフロットは50%、金融大手ズベルバンクは7.58%。

また、金融2位のVTB銀行は35.5%、ユナイテッド・グレイン・カンパニーは2012年までに100%、農業関連リース大手ロスアグロリーシングは2013年から50%、ロシア鉄道も2013年から25%、ロシア農業銀行(Rosselkhozbank)は2015年までに25%を売却するとしている。

2013-2015年の民営化計画については、主要10社のほか、イーゴリ・シュワロフ第1副首相は2015年までに合計で約900社の株式を売却し、1兆8,000億ルーブル(約5兆2,000億円)の資金を調達する見通しを明らかにしている。

しかし、外国銀行はロシアの国営企業の民営化に的を絞った投資銀行業務の分野でも、ズベルバンクとVTBとの厳しい競争にさらされる。VTBは傘下にロシア2位の投資銀行VTBキャピタルを保有しており、VTBの投資部門が民営化で大きな役割を果たしていくことが予想される。

他方、ズベルバンクもVTBに対抗して投資銀行業務を開始するため、今年3月に露大手投資銀行トロイカ・ダイアログを買収することで合意して準備に余念がない。

また、アイスランドの投資会社シュトラウムボルグ(Straumborg)も世界的な金融危機が起こる前の2006年に露リテール銀行ノルビック(Norvik)を買収したが、HSBCやバークレイズと同様、近く売却する見通しとなっている。

HSBCもバークレイズもロシアに進出したのはわずか2-3年前と比較的歴史が浅く、支店数も少ないため、他行との競争力に劣っている。逆にいえば、それほどロシア市場に深入りしていないだけに撤退も比較的容易にできる面もあるようだ。

対照的に、ロシア進出が早かった米金融大手シティグループや伊2位の金融大手ウニクレディト、オーストリアの大手行ライファイゼン銀行、仏ソシエテ・ジェネラル銀行などは引き続きリテール業務を続けるとしており、明暗を分けている。

中銀、ストレステストを実施

一方、ロシア中央銀行は5月3日に、国内900行余りの銀行の経営の安全度を測るストレステスト(健全性審査)の実施結果を公表したが、全体の3分の1は自己資本がぜい弱なことが分かっており、強い銀行だけが生き残るという自然淘汰がますます進むことになりそうだ。

ストレステストの結果によると、今後、2008年に起こったような世界的な金融危機が再発した場合、ロシアの銀行の約3分の1に相当する321行は融資の焦げ付きや証券投資など資金運用の損失などで中銀が規定する最低自己資本比率を下回り、国内銀行全体の自己資本の約半分の50.7%が失われるとしている。

ストレステストでは、2008年10月の金融危機で見られたように個人向け預金全体の10-20%と法人向け預金の5-10%が引き出され、株価が半分に急落、ルーブルも20%安となり、外国銀行から国内銀行への銀行間貸し出しも約3分の1減少したと仮定して実施されたという。

(増谷 栄一)

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