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新興国情報

ロシア、ベラルーシ国営企業買収計画に狂い=EUの追加制裁検討開始で
2011/06/01

ロシアは通貨危機に陥っているベラルーシ経済を救済するため、ロシアが80%を拠出して実質支配しているEAEC(ユーラシア経済共同体)の危機対策基金を通じて、5月中旬に30億ドル(約2,430億円)の緊急融資を決めたばかりだが、EU(欧州連合)がベラルーシに対する新たな経済制裁措置として、アレクサンドル・ルカシェンコ政権の資金源となっている大手国営企業も新たに制裁対象に加える検討を開始したことから、緊急融資の条件であるベラルーシの国営企業の売却計画に暗雲が立ち込め始めている。

ベラルーシに対する緊急融資は、5月17日にベラルーシのルカシェンコ大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領の電話会談で合意したが、ロシアは融資の条件としてベラルーシに自助努力を求めており、ベラルーシ政府は今後3年間にわたって、国営企業の民営化を進めることで75億ドル(約6,100億円)の資金を調達することが義務付けられている。これは毎年少なくとも25億ドル(約2,030億円)の民営化を実現しなければならないことを意味する。

融資は、今後3年間にわたって実行される予定で、1回目の融資は6月4日にEAECの危機対策基金から8億ドル(約650億円)が供与される。ロシアのアレクセイ・クドリン副首相兼財務相によると、2011年のベラルーシに対する緊急融資は合計で12億4,000万ドル(約1,000億円)になる。

ベラルーシは昨年12月の大統領選挙を控える中、再選を狙うルカシェンコ大統領が大幅な賃上げや国民への融資を拡大するなど積極財政策をとる一方で、貿易赤字が急激に悪化したため、外貨準備が急減。その一方で自国通貨のベラルーシルーブルの急落を阻止するための為替介入も加わって、外貨準備をほぼ使い果たし、今年3月初めには深刻な外貨不足で社会混乱が起きている。

追加制裁、ロシアのベラルーシ国営企業買収に狂い

ところが、EUはルカシェンコ大統領が昨年12月19日の大統領選挙で、反対派の野党候補を反政府デモに参加したとして逮捕したことに抗議して、すでに同大統領を含む約170人の政府関係者の資産凍結とEU渡航を禁止する措置を取っているが、5月20日には、ベラルーシの裁判所が野党のニコライ・ネクリャエフとビターリ・リャマシェフスキーの両大統領候補に対し、執行猶予2年の禁固刑判決を言い渡したことから、ルカシェンコ政権の資金源となっている主要な国営企業に対しても新たな制裁措置の検討を開始している。

制裁措置の具体的な内容についてはまだ明らかにされていないが、もし、大手国営企業に制裁措置が適用されれば企業価値の大幅な低下は避けられず、主要国営企業の買収を企てているロシアにとっては“損な買い物”になる可能性がある。

ロシアはベラルーシへの緊急融資の一方で、ベラルーシ政府は同国の天然ガス輸送会社ベルトランスガスや石油精製所、携帯電話会社、リン酸肥料会社などの国営会社をロシアに売却することで75億ドルの資金を調達する計画を進めている。

ベラルーシの国営企業の売却で最大の案件は、ベルトランスガスだ。すでに、ロシアの国営天然ガス大手ガスプロムは同社の株式50%を2007−2010年の3年間で数回にわたって取得しており、残りの50%を25億ドル(約2,025億円)で買い取る計画だ。

EUのベラルーシ企業制裁合意は数週間後か

このため、ロシア政府は、5月20日に同国西部のバルト海の保養地カリーニングラードで開かれたフランスとドイツ、ポーランドとの外相会談で、EUがベラルーシに対し、国営企業の制裁措置を検討する方針を固めたことに対し、猛烈に反対の意向を表明している。

一方、リトアニアもベラルーシへの追加制裁は、かえって、ロシアのベラルーシへの支配を強める結果になるだけで逆効果だとして反対している。ルカシェンコ大統領はIMF(国際通貨基金)やEUとの関係が悪化していることから、ベラルーシの通貨危機を解決するために追加支援が必要になった場合、IMFやEUからの融資を得るにはかなり厳しい条件が付けられるため、ほぼ困難となり、制裁強化後は頼れるのは唯一ロシアだけとなると主張している。

5月23日に開かれたEU外相会議では、結局、追加制裁措置は新たに13人の政府関係者を制裁対象者リストに加えたものの、国営企業に対する制裁措置はベラルーシとの貿易額がGDP(国内総生産)の3%にも達しているラトビア、さらにはイタリアなどの数カ国がルカシェンコ政権への打撃よりも失業者の急増による国民への影響やラトビアなどの周辺国への間接的な影響の方が大きいとして反対したため、結論は先送りになった。

しかし、EUの外交筋によると、合意に達するにはあと数週間はかかる見通しだ。その場合、制裁対象となる国営企業としては、昨年12月の大統領選挙の際、市民デモの制圧に利用された兵器を製造している国営企業と政府と密接な関係にある石油関連企業が制裁対象になるとみられているようだ。

(増谷 栄一)

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