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新興国情報

ベラルーシ首相の市場介入発言、今後の融資獲得に悪影響か
2011/06/29

ロシアは今月21日、深刻な外貨不足で経済危機に陥っている旧ソ連・ベラルーシに対し、ユーラシア経済共同体(EAEC)の危機対策基金を通じて総額30億ドル(約2,420億円)の緊急融資のうち、1回目の融資として8億ドル(約645億円)を供与したが、ベラルーシのミハイル・ミャスニコービッチ首相がこの資金を自国通貨ベラルーシルーブルの下落阻止のための市場介入資金として使う意向を明らかにしたことから、今後、両国間の融資継続をめぐる協議やIMF(国際通貨基金)との新規融資協議にも悪影響が及ぶ恐れが出てきた。

そもそもベラルーシが深刻な外貨不足に陥ったのは、昨年12月の大統領選挙で再選を狙ったルカシェンコ大統領が大幅な賃上げや国民への融資を拡大するなど積極財政策を取った結果、貿易赤字が急激に悪化し外貨準備が急減したためだが、その一方で自国通貨ベラルーシルーブルの急落を阻止するための為替介入も加わって、外貨準備をほぼ使い果たしたためで、今年3月初めには深刻な外貨不足で社会混乱が起きている。

こうした深刻な外貨不足の中で、自国通貨を防衛するため、ベラルーシ中央銀行は外貨を浪費する市場介入に代わって、ベラルーシルーブルの公定レートを5月24日から35%超切り下げている。大幅切り下げの背景には、闇市場で取引されているベラルーシルーブルの為替レートが、国内の外為市場(店頭市場)で行われる銀行と企業との為替取引に適用される公定レートの2倍近くにまで拡大している状況を解消し、為替レートを実勢レートに一本化する狙いがある。中銀は、通貨の安定によって輸出産業を強化し、経済を活性化することに寄与するとしている。

しかし、今回のミャスニコービッチ首相による市場介入発言はベラルーシ経済にとって新たなリスク材料となるのは必至だ。ロシアは30億ドルの緊急融資が市場介入資金に使われることに対し、強い警戒感を示しているほか、ルカシェンコ大統領が17日の会見で、国内の外貨不足に対処するため、IMFからの新規融資を獲得する条件となっている経済改革を拒否し、その代わりに、輸入を必要最低限に抑制する方針を明らかにしたことにも強い懸念を示しているからだ。

ロシアからベラルーシへのEAEC危機対策基金を通じた今年の融資額は合計で12億4,000万ドル(約1,000億円)だが、ロシアのアレクセイ・クドリン副首相兼財務相は今年末に予定されている2回目の4億4,000万ドル(約355億円)の融資の実行については、ベラルーシの経済改革次第で留保する可能性を指摘しており、今後、曲折が予想されている。

ベラルーシはIMFに対しても80億ドル(約6,450億円)の融資を要請しているが、IMF代表団のクリス・ジャービス団長は13日、ベラルーシで会見し、ベラルーシ中銀が3月に自国通貨の防衛のための市場介入を打ち切ったことは正しい決断と評価していただけに、同首相の市場介入発言は今後のIMFとの協議に暗雲が広がりかねない。

一方、ベラルーシのアンドレイ・カーコベッツ財務相は24日に、EAEC危機対策基金からの30億ドルの緊急融資とは別に、外国の民間金融機関から新たな融資を獲得する協議が調印に向けて大詰めを迎えていることを明らかにしている。

これについては、同国のウラジーミル・マケイ大統領府長官が9日に、新たに10億ドル(約810億円)の融資を確保したことを明らかにしているが、10億ドルの融資の提供元については明らかにしていないものの、今後1カ月以内に融資が実行されるもようだ。

しかし、ロシアのクドリン財務相は、ルカシェンコ大統領による国家プロジェクトに資金を供与するための開発銀行の設立やベラルーシ中央銀行が保有する非中核的資産の売却に対する大統領命令の発布など、様々な融資実行の条件をベラルーシに突きつけている。

また、IMFも13日からベラルーシを救済するために必要な新たな融資プログラムを策定するため、政府や中銀関係者との協議を開始したが、ベラルーシルーブルの安定のためには変動相場制に移行し、現在の複数の為替レートの存在を解消することが重要だとしており、特に、変動相場制への移行は財政赤字と経常赤字の削減にも寄与するとしており、ベラルーシがIMFやロシアから融資を獲得するには大胆な経済改革は避けて通れないと言える。

(増谷 栄一)

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