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新興国情報

ブルガリア政府と露石油最大手ルクオイルの確執強まる=国内石油市場の支配権めぐり
2011/08/03

ブルガリアの石油市場の支配権をめぐり、ブルガリア政府とロシア石油最大手ルクオイルとの確執がエスカレートしている。

両者の確執は、ブルガリア関税局が7月27日に、突然、ルクオイルが運営するブルガリアの石油精製大手ネフトチム・ブルガスに対し、同社の製油所(原油処理能力は日量14万2,000バレル)の操業を停止するよう命じたことでピークに達した。

関税局はこれまで1年半にわたって、同社に対し、売上税の計算の根拠となる、貯蔵施設とターミナルの石油製品の出荷データを国税庁(NRA)に送信するシステムを導入するよう求めてきており、6月末を最終期限としてシステムの導入を指示したが、ネフトチム側は技術上の問題で工事が完了するのは年内になると主張したため、関税局が同社の石油製品の貯蔵施設と輸送ターミナルの操業許可証を一時的に取り消している。

しかし、ネフトチムがこの決定を不服として、首都ソフィアの地裁に決定取り消しを求めた結果、同地裁は8月1日に、操業停止によってネフトチムに甚大な経済的損害の発生が予想されるとして、操業停止命令の執行を停止し、ネフトチムに対し操業再開を認めている。

この地裁判決を受けて、ネフトチムは早ければ今週から操業を再開する計画だが、関税局は7日以内に最高行政裁判所に控訴する方針を明らかにしており、このままネフトチムの操業が継続できるかどうかは依然、不透明だ。

ネフトチムは、ブルガリア国内で売上税の約25%を占め、国内最大の納税事業者となっており、生産量の半分は国内市場で販売しているが、当初、関税局は今回の操業停止による国内経済や税収への影響を否定し、楽観的にみていた。

しかし、ネフトチムはブルガリア国内で唯一の石油精製所のため、製油所の稼働停止によって、石油製品市場で急激な価格変動が引き起こされるとの懸念が次第に産業界に強まっている。このため、ブルガリア政府は先週末(7月29日)、国内の石油製品の供給減少による石油市場での価格高騰を監視するため、トライチョ・トライコフ経済・エネルギー・観光相を本部長とする危機管理対策本部の設置を余儀なくされている。

トラキア高速道路の工事費、高騰懸念

特に、同社の製油所の稼働停止で、国内では道路建設に使われるアスファルト原料であるビチューメンの国内供給が見込めなくなったことで、今後、価格が高騰し、その結果、首都ソフィア近郊のブルガスとセルビア国境に近いカロティナを結ぶ全長443キロのトラキア高速道路(一部区間はすでに開通)の建設工事費用が上昇する恐れが出てきている。

事態を重くみたロセン・プレベネリーエフ地域開発・公共事業相は7月30日に、急きょ、声明を出して、ビチューメンについては隣国のギリシャやルーマニアからの輸入が可能だとして、その懸念を否定、また、灯油の供給量についても十分な国内備蓄があるとして、国内の混乱を抑える対応に追われる緊急事態に発展している。

もともと、今回のネフトチム製油所の操業停止に至った背景には、長年、ブルガリア政府が国内の石油市場をコントロールし、価格の上昇を抑えたいという考えがあり、ネフトチムの親会社ルクオイルと対立していることがある。

アナリストは、ルクオイルはネフトチム製油所の操業停止による影響は会社全体の利益の1%にすぎないため、ブルガリア政府の圧力には屈せず、そのまま、工場を閉鎖する可能性が高いとみており、ブルガリアにとっては新たな問題を抱えることになりそうだ。

(増谷 栄一)

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