本日は、アラブの富豪ということになっているアルワリード・ビン・タラール王子の最新動向をお伝えしたいと思う。
2010年フォーブス長者番付第19位
資産額:194億ドル(約1兆5,800億円)
アルワリード王子率いる投資会社キングダム・ホールディングスは、クウェート最大の携帯電話キャリアZainのサウジ子会社(Zainサウジ)買収に名乗りを上げたことをサウジアラビアの証券取引所のサイトを通じて明らかにしている。しかし、現時点で買収提案価格などの詳細は明らかにしていない。
現在のZainサウジのサウジ国内携帯電話市場シェアは13−14%程であり、サウジテレコム、エティハド・エティサラートに次ぐシェア第3位の企業である。
Zainサウジにはキングダム・ホールディングスの他に、バーレーンのバテルコ、南アフリカのMTNなども買収に名乗りを上げている。
ここにきてなぜZainサウジ争奪戦が勃発したかについて以下で簡単に説明したいと思う。
1.現在、UAE(アラブ首長国連邦)最大の通信企業エティサラートがZainサウジの親会社であるZain(クウェート)買収のためのデューデリジェンス(資産査定)を行っている最中である。買収提案金額は120億ドルで、Zainの株式の46%取得を目指している。
2.そのエティサラートは既にサウジアラビアでエティハド・エティサラートという子会社を通じで通信事業を行っているため、Zain(クウェート)買収が成功した場合、サウジアラビア国内においてエティハド・エティサラートとZainサウジ2社の大株主になることになる。
◆エティハド・エティサラートの現在の株主構成
・エティサラート(UAE):27.5%
・Gen. Organisation for Social Insce:11.2%
・その他:61.3%
3.当然これはサウジアラビア当局も許可できることではないとして、エティサラートによるZain(クウェート)買収が実現した場合は、Zain(クウェート)が出資しているZainサウジ株25%を、他社に売却することを求めている。
◆Zainサウジの現在の株主構成
・Zain(クウェート):25%
・Faden Trading and Contracting:6.9%
・その他:68.1%
ご存知の通り、アルワリード王子はアラブ諸国最大の富豪であり、シティグループ、アップルの大株主であることも知られている。
現在は傘下のエンターテインメントメディア企業ロターナの事業強化に取り組んでおり、携帯電話会社を手中に収めることで、ロターナのメディアコンテンツを携帯電話に配信するなどのシナジーを狙っているのは間違いない。
ここしばらく、あまり表立った動きがみられなかったアルワリード王子だが、ここにきていきなり表舞台に現れたといったところだろうか。
(マウリーシ・ハーリド・ビン・アルワリード)