建設ラッシュに沸くドバイショック前の市街中心部
今年に入ってからのチュニジアでのジャスミン革命に端を発する一連のアラブ諸国での反政府デモ拡大により、思わぬ大きな恩恵を受けている都市がある。
それは、超高層ビルオアシス、ドバイである。
2009年末に発生したドバイ危機が原因で、一時ドバイを訪れる観光客、ビジネス客が減少したこともあるが、今はドバイが世界中から注目を集めていた2007年、2008年当時のような盛り上がりを見せているとのことである。
なんと、タクシーを捕まえるのも、レストランの席を確保するのも困難なほどの賑わいを見せているということだ。
これは、ドバイ在住の日本人の方にも確認を取ったので間違いない。
世界的な観光地であるチュニジアやエジプトの混乱をテレビでみた欧州などの旅行者が、これらの国への旅行を避け、エンターテイメントが全て揃うドバイ観光に切り替える動きが顕著になっている。
現地専門家からは以下のような声が聞かれる。
「棚ボタ的ではありますが、現在のドバイ旅行の盛り上がりは顕著なものがあります。ドバイには6万5,000室のホテルやアパートメントがありますが、現在満室状態で、シングルルームすら予約が取れない状態となっています。周辺諸国での反政府デモの動きが活発化し始めた1月のドバイのホテルの客室稼働率は、前月比7.9%の改善を見せています。2月のデータは入手できていませんが、ショッピングモールや、レストランの賑わいを見ていると客室稼働率がさらに改善していても何ら不思議ではありません」
観光客だけでなく、ビジネスでドバイを訪れる人も増加しているということである。
特に反政府デモが発生したエジプト、オマーン、バーレーンにオフィスを構えていた多国籍企業がドバイに事務所を移転する動きや、デモによりビジネスに支障をきたす恐れのある、デモ発生国のビジネスマンが商談の場所としてドバイを選択していることもドバイの賑わいに拍車をかけている。
ドバイ国際金融センターのコーヒーショップや会議室は、ビジネス客でごった返しているようだ。
周辺諸国の混乱はドバイも憂慮しているが、多額の債務を抱えるドバイにとっては、観光、ビジネス客が大挙してドバイを訪れ、多額の現金を落としてくれることはおおいに助かることであろう。
日本全土で自粛ムードが広がっているため、海外旅行に行くのを躊躇(ちゅうちょ)する方もいるかもしれないが、海外旅行に行き見聞を広げることは決して悪いことではないと思うので、機会のある方は往年の輝きを取り戻しているドバイを訪れてみてはいかがだろうか。
(マウリーシ・ハーリド・ビン・アルワリード)