バーレーンのイスラム金融投資会社アルキャピタが、アメリカの婦人服ブランド「ジェイ・ジル(J Jill)」を、サンフランシスコを本拠とする投資会社ゴールデン・ゲート・キャピタルから買収したことを発表している。
アルキャピタ http://www.arcapita.com/
アルキャピタは具体的な買収金額を明らかにしていないが、今後もゴールデン・ゲート・キャピタルがジェイ・ジルの少数株式を保有することを発表している。
ジェイ・ジルは全米に225店を展開しており、2010年度の売上高は3億9,000万ドル(約320億円)ほどと言われている。
アルキャピタのアティフ・アブドゥルマリクCEO(最高経営責任者)は、
「ここ最近、当社は中東、中国、その他アジア地域の新興国での事業拡大に目を向けてきましたが、今回の買収により、より豊かな市場である、アメリカでの事業拡大を継続していくという意志を国内外に示すことができたと思います」
とコメントしている。
アルキャピタは、今回買収を発表したジェイ・ジルの他にもアメリカのディスカウント(アウトレット)ストア「レーマンズ」やアメリカのコーヒーチェーン「カリブーコーヒー」、同じくアメリカの「チャーチズ・チキン」など、アメリカ企業に多く投資を行っている。
アルキャピタは、今年4月にインドのヘルスケア企業「MedPlusヘルス・サービシズ」の株式を売却しているが、依然としてインド経済の先行きには強気を維持しており、インドでの新たな投資可能性も模索している。
さて、今回アルキャピタが買収したジェイ・ジルは元々、日本のイオングループのアメリカ衣料小売チェーン、タルボット社の一事業だったが、2009年にゴールデン・ゲート・キャピタルに7,500万ドルで売却されている。
日本企業に関係していた企業が巡り巡ってバーレーンのイスラム金融投資会社の手に。
ビジネスの世界は実に面白い。
イオンが不要と判断した企業を、バーレーンの投資会社はどのように評価しているのか。
最後に、本日ご紹介したバーレーンのイスラム金融投資会社アルキャピタの取締役には、カタール首長家一族の名前を見つけることができる。
具体的には、2010年4月からクレディ・スイスの取締役に名を連ねるシェイク・ジャシム・ビン・ハマド・アルサーニー氏。
シェイク・ジャシム氏はクレディ・スイス取締役の他にも以下のような要職に就いている。
・カタールイスラム銀行:会長
・Qインベスト:会長
・カタールイスラム保険:取締役
ものすごい肩書きだが、それもそのはず、シェイク・ジャシム氏はカタール投資庁(QIA)トップのシェイク・ハマド現カタール首相の息子である。
クレディ・スイスの取締役に就任したことで、世界中にその人脈を広げたことであろう。
このように、中東企業の取締役を細かく観察していると、色々と面白いことが見えてくる。
逆に言えば、中東企業の取締役を観察しなければ、面白いことは見えてこないということである。
これは、中東企業に限ったことではないが。
(マウリーシ・ハーリド・ビン・アルワリード)