スペシャルインタビュー 竹川 美奈子氏

竹川美奈子氏

LIFE MAP,LLC代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト
竹川 美奈子(Minako Takekawa)氏
出版社や新聞社勤務を経て独立。2000年ファイナンシャル・プランナー資格取得。書籍や雑誌などで幅広く取材・執筆活動を展開、金融商品・サービスについて投資家目線に立った情報発信を行っている。投資信託やETF、マネープランセミナーの講師なども務める。『株、投信を買うなら必見!税金がタダになるおトクな「NISA」活用入門』『はじめての「投資信託」入門』(共にダイヤモンド社)など著書多数。

資産活用世代の制度の活用法について

 今回は、資産活用世代の制度の活用法について考えていきたいと思います。

 人生には大きく分けると2つのステージがあります。就職してからリタイアするまでの時期と、リタイアしてからの時期です。前者は、仕事でお金を稼ぎつつ、資産をつくっていく「資産形成期」、後者はそれまで運用して増やしたお金を「運用しながら使う時期」といえるでしょう。下図はそのイメージを示したものです。

 リタイアを契機に、運用法を変える必要があります。仕事からの収入がなくなる場合にはこれまで投信の積み立てをしてきた人はやめます。そして、リスク資産の比率を下げて、預貯金などの安全資産に「ふる」ために再配分する必要があります。そのうえで、金融資産の一部を運用しつつ、取り崩していくことになります。

 平均余命を考えると、60〜65歳でリタイアしたとしてもまだ長期投資にはなりますが、資産形成期に比べて、より「リスク管理」が大切になってきます。リタイアすると収入よりも支出が多いケースが多く、現役時代のように追加的な投資をしていくことがむずかしいからです。

図

 では、具体的にどのようにNISAを活用していけばよいでしょうか。

 金融資産全体で資産配分を考えて、NISAにどの資産クラス、商品を割り振るかを考えるという点は資産形成層と変わりません。

(1)ローリスク・ローリターンな商品を利用

 リタイアするまで、定期預金と国債にしかお金を預けたことがないというように、まったく投資経験のない方は、無理せず低リスク(値動きの小さい)の投資信託からはじめてはいかがでしょうか。たとえば、「日本債券ファンド」や「外国債券(為替ッジあり)ファンド」などが候補になります。

 その場合、投資信託は新規に設定されたものではなく、運用実績があり、「リスク」水準が分かるものの中から選びたいものです。運用期間の長いものであれば、NISAの非課税期間にあたる、5年投資した場合の騰落率といった過去のデータを参考にすることも可能です。

(2)金融資産のごく一部を「期待リターンの高いもの」に割り振る

 リタイア世代は金融資産の額が大きく、そのうちの大半を預貯金やMMF(マネー・マネージメント・ファンド)などで運用しているケースもあります。投資経験があり、金融資産全体の中のごく一部(年100万円以内)をNISAで運用するのであれば、NISAには「期待リターンの高いもの」を割り振るということも考えられます。たとえば、日本株や外国株(先進国・新興国)のインデックスファンドなどが候補になります(ETFでもOK)。ただし、この場合、NISA口座以外の金融資産も含めたポートフォリオをきちんと考えられることが必要です。

(3)国際分散投資が可能なバランス型を利用

 NISA口座では、一度売却するとその枠は再利用できないので、自分で比率を考えて分散投資をするとリバランスができにくいという留意点があります。そこで、「国際分散投資が可能なバランス型投信」に投資するというのも選択肢の1つです。
 ただし、国内外の株式・債券に幅広く分散されている、運用実績のあるもの(→過去のリスク・リターンを確認できる)、手数料が低い(購入時手数料はゼロ、運用管理費用は年1%未満)というのが条件になります。

毎月分配型にこだわらなくてもいい

 人気の高い毎月分配型ですが、個人的には、運用を行って、必要な分を解約すればよいと考えているので、必ずしも、退職者層=毎月分配型と考える必要はないと思っています。毎月分配型については、普通分配金だけでなく元本払戻金(特別分配金)が支払われるケースもあります。普通分配金部分は非課税のメリットを享受できますが、元本払戻金は特定口座などの課税口座で購入してもそもそも非課税です。したがって、元本払戻金の割合が高い投信では、非課税の恩恵は十分享受できません。また、毎月分配金型の投信についてはコストの高いもの、リスク水準の高いものもあります。どうしても活用したい方は、分配金の多寡だけでなく、トータルリターンや、リスクの大きさ、コスト水準などをきちんとみていく必要があるでしょう。

 最後に。とくに退職時まで運用をしたことのない人は慌ててNISA口座を開設して、投資をはじめなくてもいいと考えます。まずは、資産運用の知識を学んだり、退職後の生活設計などを考えたりすることが先決です。具体的には、入ってくるお金(公的年金や企業年金など)や毎月かかる生活費を計算してみる、現在の金融資産を把握する、「いつ」「どんなこと」にお金を使う必要があるのかを考えるといったことから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、運用方針を立てて、NISAを利用するかどうかを検討すればよいと思うのです。

 また、現在のNISAの制度設計においては、とくに(2)(3)の場合には、以下の視点も必要かもしれません。

 1つは毎年NISAの「枠」を無理に使わなくてもいい、つまり毎年投資をする必要はないということです。NISAは「非課税期間が5年」であり、損益がスタートのタイミングにかなり左右されます。相場が盛り上がっているときに始めて損をしてしまっては元も子もないからです。

 もうひとつは、利益がでたら確定することも視野にいれるということです。NISAは一度売却すると枠が再利用できないというデメリットがあります。そのため非課税期間をめいっぱい保有したほうがいいと思いがちですが、「損はなかったことになる」という特徴を踏まえると、ある程度利益がでたら、解約・売却するというのも選択肢の一つだと思います。

 ただし、これは現状の制度設計でのお話。制度や非課税期間が恒久化された場合には、長期運用がいちばんの基本になります。現状では、理念(資産形成・長期投資を促す)と制度設計が合致していないことが問題だと考えます。

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