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フランクリン・テンプルトンの債券運用の魅力、投資判断にESGを組入れリスク調整後リターンの向上目指す

2019/05/21 08:24

 世界30カ国超に拠点を構える大手独立系資産運用会社フランクリン・テンプルトンは、全社的に投資意思決定プロセスにおいてESG(環境、社会、ガバナンス)要因についての分析を組み入れる取り組みを行っている。同社で世界の債券・通貨を主な投資対象とした運用を行う「テンプルトン・グローバル・マクロ・グループ」が運用する債券ファンドは、世界中で提供されている。その運用の魅力と投資判断にESG要因を組み入れる狙いや活用方法について、同グループの機関投資家向けポートフォリオ・マネージャーのエルサ・ゴールドバーグ氏とモーニングスターの朝倉智也氏が対談した。

朝倉 貴社は、ESG投資では株式に比べてなじみの薄い債券分野の投資判断にもESG要因を組み入れています。ESGを考慮した債券投資とは?

エルサ 先頃、独自のESGスコアリングシステムである「テンプルトン・グローバル・マクロ・ESG指数」をつくりました。この指数は、世界60カ国近くの先進国・新興国のESGスコアを算出・評価し、今後数年の予想を行っています。

 ESGへの対応が改善している国々は、様々な外的ショックに対して、より耐久性のある国々だと思われます。ESG要因は、各国の経済成長、投資、インフレ、財政といったマクロ経済に影響を与え得るものです。効果的なガバナンスは、政策の予見可能性や好ましいビジネス環境につながる透明性の向上に寄与します。社会的結束やインフラの強化は、問題の解決や生産性の向上につながります。

 運用チームは、マクロ経済分析と、ファンダメンタルズ重視の長期的な運用を行う投資戦略においては、ESG要因を考慮することが重要だと考えています。債券投資においてESG要因は、投資対象国が投資対象として適切か、長期投資に耐え得るかといった判断の1つの材料となります。ESG要因を考慮することで、長期にわたる国のリスクと信用力をより正しく理解することが可能になり、ひいては、投資判断の精度とリスク調整後リターンの向上につながると考えています。

朝倉 「テンプルトン・グローバル・マクロ・ESG指数」とは、具体的にはどのようなもので、どのように投資判断に活用されているのですか?

エルサ はじめに、長期にわたってマクロ経済やバリュエーションに大きな影響を与えると考える合計13の評価項目を設定します。環境は3つ、社会とガバナンスは各々5つの評価項目があります。調査対象ごとに、環境、社会、ガバナンスの評価項目について平均点を算出し、環境は20%、社会とガバナンスは各々40%のウエイトで加重平均し、総合スコアを算出します。

 ESG分析においては、国ごとに現在と将来のスコアを算出しますが、我々はスコアの改善・悪化に着目し、現在の水準に比べ改善傾向にある国、および現状が維持される国を高く評価します。将来にわたってのスコアの変化こそが、運用パフォーマンスに与える影響としては重要であると考え、変化に向けて正しい方向に向いている国に注目しています。

朝倉 運用するグローバル債券ファンドでは、組み入れ上位の国々は新興国の債券ですが、この理由は?

エルサ グローバルに投資機会を分析した結果が現在のポートフォリオ構成になっています。投資対象国の分析では、各国固有のリスクに着目しています。新興国への投資においては、単に金利水準が高いだけでなく、構造改革を実施し、正しい政策を継続している国や、そのような政策が効率的に行われることで、よりリターンの向上が期待される国などに着目しています。また、より内需主導型で、貿易摩擦や海外情勢の影響を受けにくい国にも着目しています。

 ここで重要なことは、金利の上昇や市場の変動からの影響を吸収しうる強い状況にある国とぜい弱な国とを峻別することです。新興国のなかには、信頼できる金融政策を実施し、ビジネス寄りの政策を行い、より正しい方向に向かった政策運営を行っている国があり、高く評価しています。

朝倉 日本の投資家へメッセージは?

エルサ 日本のESGスコアは、比較的高水準です。しかし、ESGスコアの改善と魅力的な利回りという観点では日本国債に投資妙味はあまりないと考えています。

 ただ、日本の投資家の皆様も、日本以外の市場で比較的魅力的なリターンを享受できる投資機会を見出すことができると思います。我々はESGスコアも利用して、さまざまな国における投資機会を見出しています。グローバル債券運用において、ESG要因を組み入れた分析は、他の運用会社と比べ非常にユニークな手法ではないかと考えています。
提供:モーニングスター社