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「年金2000万円不足問題」もきっかけに、銀行等の投信窓販の潜在成長力が動き出す=三井住友TAM

2019/07/17 10:16

 三井住友トラスト・アセットマネジメントは7月12日、東京・丸の内で地域金融機関の販売担当者向けセミナーを開催した。同社代表取締役会長の平木秀樹氏は、「資産運用ビジネスのパラダイムシフト」というテーマで講演した。平木氏は、「ETFを除く公募株式投信残高は、2014年12月末の66.5兆円から、19年5月末に62.3兆円へとむしろ減少している」と現状を分析し、今後の市場拡大のために今起きている変化の注目ポイントを解説した。

 まず、「年金2000万円不足問題」などによって、人生100年時代に備える長期の資産形成の必要性が自覚されるようになった。また、つみたてNISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)等の各種積立商品の拡大によっても、「長期投資」の進展が期待されるとした。

 ただ、公募株式投信(除くETF)の平均保有期間は、1998年1月−2019年5月までの約20年間で約3.5年だった。平木氏は「リーマンショックで株価が大幅に下落した2009年7月に平均保有期間は4.84年と過去20年で最長となるが、アベノミクスで株価が上昇し始めた2013年7月には1.67年に縮小している。株価下落時に保有期間が長くなり、株価が上昇すると期間が短くなるという循環的な動きになっていて、持続的な長期保有には至っていない」と分析している。

 そして、「グローバル投資」については、海外資産、また、国内外に広く投資するグローバルファンドの本数や残高が過去10年間で継続して拡大していることから、グローバルファンドへの資金シフトは明確になっていることが分かる。「マイナス金利の長期化などの影響もあって、国内資産だけでは資産形成上、充分な成果を期待することは難しく、成長性の高い海外資産の組み入れニーズが今後も高まると想定される」(平木氏)とみている。

 一方で、過去3年の累積純増額トップ20ファンドと累積リターンのトップ20ファンドを比較すると、両方にランクインしているのは1ファンドのみ。過去5年ではゼロという結果になった。ここから、「販売が好調で人気のあるファンドが、パフォーマンスが良いとは限らない」ということが分かる。また、5年前に新規設定された設定1年後残高上位10ファンドの累積リターンと残高を調べると、パフォーマンスの優劣に関係なく全てのファンドが5年間で残高を大幅に減らしていることがわかった。平木氏は、運用会社の立場で「今後は、長期的に良好なリターンのファンドを提供することが重要」と語るとともに、「長期投資を促す投資教育の重要性が高まるだろう」と見通した。

 そして、投信販売の現場の変化として、過去10年間で、投信残高に占める銀行等のシェアが42.7%(2009年3月末)から24.9%(2019年3月末)へとダウンし、証券会社の残高・シェアが拡大していると指摘。メガバンク・地方銀行におけるグループ内証券への販売シフトが顕著になってきたようにみえる。

 ただ、各種アンケートの結果などから、投資未経験者の中にも「投資に関心がある」という回答をする人が少なからず存在する。特に、20代−40代という若年層では男女ともに2ケタの比率で、「投資の経験がないものの関心はある」という層が存在する。平木氏は、「日本の年代別人口から、約2500万人の潜在投資人口が存在すると考えられる。この多くは銀行等のお客様だ。また、関心があっても投資に踏み切れていないのは、『やり方がわからない』『投資に回すお金がない』という理由が大きい。積立投資によって少額から投資ができるなど投資資金のねん出に関するアドバイスも行うことによって、投信ビジネスの潜在成長性が一段と高まると期待される」(平木氏)とした。

 その上で、「これからは、お客様一人ひとりの状況に応じた個別の運用プランの提供や、金融リテラシー、投資教育の提供など、より幅広い側面で付加価値を提供していくことが重要」と語り、その点でも貢献したいとした。運用会社としては、よりコストの低い商品の提供、また、中長期にインデックスを上回るパフォーマンスが期待できるアクティブファンドの提供に尽力していきたいと語っていた。

 なお、今回で9回目となる同セミナーは、第1部の基調講演を「グローバルリスクとアベノミクスの行方」というテーマで前在スイス特命全権大使兼在リヒテンシュタイン特命全権大使兼欧州金融経済担当大使であった本田悦朗氏が行った。また、三井住友信託銀行執行役員 資産運用ソリューション推進担当の森木重喜氏が資産運用ビジネスをテーマに同行の取組みを講演した。
提供:モーニングスター社