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<視点>東電の損害賠償はいくらになるのか?

2011/03/31 15:27

 東北地方太平洋沖地震により重大事故が発生した東京電力 <9501> 福島第一原子力発電所。放射線汚染や放射性物質の拡散などにより、半径20kmまでの住民に避難指示が出され、半径30kmまでの住民に対しても屋内退避・自主避難が促されている。さらに、避難が必要な地域は拡大する様相を呈している。加えて、農産物や水への汚染、海水の汚染による漁業被害など、被害状況は広がるばかりだ。いったい、東京電力の損害賠償額はいくらになるのであろうか。99年に発生した東海村臨界事故を参考に推計した。

 原子力事業者による損害賠償を定めた「原子力損害賠償法(原賠法)」では、第3条1項に「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない」と定められている。

 同法は、事故を起こした原子力事業者に対しては、事故の過失・無過失にかかわらず、無制限の賠償責任があるとし、賠償を迅速かつ確実に行うために、原子力事業者に対して、損害保険会社との間で原子力損害賠償保険へ加入し、国との間で原子力損害賠償補償契約を結ぶなどの損害賠償措置を講ずることを義務づけている。

 これらの契約に基づく損害賠償額の上限は、通常の商業規模の原子炉の場合には1200億円と定められている。また、賠償額の上限を超える事故が発生した場合には、国が原子力事業者に必要な援助を行い、被害者救済に遺漏がないよう措置することを定めている。

 今回の東電の損害賠償額を推計するにあたっては、わが国で唯一の原賠法に基づく損害賠償が行われた東海村臨界事故をベースにするしかない。

 東海村臨界事故は99年9月30日に茨城県那珂郡東海村の住友金属鉱山 <5713> の子会社JOCが核燃料加工施設で起こした臨界事故で死者2名と667名の被ばく者を出した。

 この事故では、半径350m以内の住民40世帯強に避難指示が出され、半径500m以内の住民に避難勧告、10km以内の住民約31万人(約10万世帯)へ屋内退避が行われた。損害賠償は避難指示が出た住民40世帯強や農家に対する農産物補償で合計約700件の補償対象に約150億円が支払われた。

 今回の福島原発のケースでは、一部報道では半径30km以内の屋内退避・自主避難世帯まで住民約22万人が損害賠償の対象となり、さらに農家への農産物補償などが加わるとされている。

 大ざっぱな推計だが、東海村のケースでは避難指示が出た40世帯強(1世帯あたり4人家族として160−180人程度)を対象に150億円の賠償金が支払われたわけで、今回も同様に半径20km以内の避難指示が出た世帯の約8万人を対象としても、東海村の約450倍の約6.8兆円の損害賠償額になる。

 東海村のケースでは、約150億円の賠償金を保険会社が10億円、残り約140億円をJCOが支払い、政府負担はなかった。事業者の過失度合いにより、保険金の支払い額が変わるため、今回の東電に対しても、どの程度の保険金が支払われるかは定かではない。

 一部報道によれば、政府は今回のケースでは原賠法の「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない」という例外規定を適用する方向で検討に入ったという。しかし、東電がまったく賠償責任を負わないということは考えづらい。どの程度の負担になるかは現時点で知りようもないが、国が損害賠償を行うにせよ、前代未聞の巨額な賠償額になることは間違いなさそうだ。(鈴木 透)

提供:モーニングスター社