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<新興国EYE>中国の空母機動部隊が誕生へ、地域パワーバランス変わる可能性

2011/07/12 11:53

 まもなく中国海軍念願の空母が就役し、いよいよ中国に空母機動部隊が誕生する。この空母は旧ソビエト連邦で建造されていた旧ヴァリャーグで、ソ連崩壊のあおりを受け放置されていた。それを1998年にマカオの中国系民間会社が海上カジノとしてウクライナから購入。当初から中国が軍事目的に使用するのではないかと言われていたが案の定、大連港に入港したヴァリャーグはその後本格的な空母への艤装を開始し、この度改修がほとんど終了したようだ。

 報道では早ければ中国人民解放軍創設84周年記念日の8月1日にも進水し、12年に就役するという。満載排水量6万7500トン、全長305メートルの通常動力型空母で、主力艦載機はロシア製艦上戦闘機Su−33を元に中国の瀋陽飛機工業集団が開発した殲撃十五型(J−15)になる。

 中国の空母保有は周辺国と大きな摩擦を生むことは間違いない。中国が空母保有をより強く意識するようになった出来事として1996年に行われた台湾総統選挙にからむ台湾海峡ミサイル危機は良く知られ、このときは空母2隻による米機動部隊に半ばどう喝される形で引いた。米軍への対抗はこのときの経験から当然だが、相手を上回る軍事戦力を使えば相手方は黙るほかないということを身をもって体験したともいえる。

 ここ数年の中国は周辺国への軍事的な威圧が目に付く。日本の尖閣諸島で起きた騒動は記憶に新しいが、その他に南シナ海の南海諸島(南沙諸島、中沙諸島、西沙諸島)をめぐりベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、中華民国(台湾)との紛争も続く。海底資源が豊富なこれらの諸島に関し中国の譲歩は考えにくい。海上を自在に動ける航空戦力の保持は想像する以上に脅威で、何かあれば機動部隊による示威行動を取ってくるであろうことは容易に想像できる。

 また、中国が空母を保有したがるもう一つの大きな理由として資源ルートの確保が挙げられる。中国の経済成長はそれだけ多くの資源を必要とし、原油、石炭、鉄鉱石、食料など中国にとって必須の物資はすでに海外からの輸入が頼り。南スーダン独立で中国のアフリカ進出がクローズアップされたが、アフリカ進出も資源獲得が最大の目的。当然、資源ルートの確保は死活問題。空母を保有していると艦隊のエアカバー領域が圧倒的に広がり、防空上有利になる。こういった点も中国が空母を持ちたがる大きな理由だ。

 いずれにせよ、中国の空母保有が今後の地政学リスクを高める点は注意しておきたい。中国が空母を保有すれば周辺国も対抗上、空母保有を目指す動きは活発化する可能性は高い。すでにロシアは原子力空母を含めた空母建設を目指しており、インドも新型空母の建設を目指す。新興国にとって空母保有は一種のステータスに近く、事実、ブラジル、インド、タイはすでに空母を保有している。経済成長で資金的余裕のできた新興国が軍事的対抗の意味も兼ね空母建造に走る可能性は否定できない。中国はすでにスリランカ、パキスタンに海外補給基地の建設を目指しているとされ、インドなどは必然的に警戒感を強める。アジアではここにきて急速に軍拡競争の恐れが出てきた。

 今回の中国の空母はあくまで旧ソ連空母の改装した練成が目的の練習空母。各種報道では中国は原子力空母を含め2020年以降までに5−6隻の新造空母計画があるとしており、計画が完成すれば中国は強大な戦力を手にする。いまは米国という目の上のコブがあるものの、対抗できる戦力を手に入れれば将来的に中国がこの軍事力を使ったどう喝的な外交、経済政策を行えば他国は簡単に逆らえそうにない。例えば尖閣諸島や原油輸入ルートを締め上げられたら、そのときヘリ空母しか保有計画のない日本はどうするのか。中国の軍事力強化がアジアにおけるパワーバランスを変化させようとしている。

提供:モーニングスター社