株式ニュース



<EMeye>新興国投資の定番ETFに「低リスク型」登場、ディフェンシブの比率高め波乱相場に備え

2011/10/26 09:54

 欧州債務問題の深刻化で各国株式の先行き不透明感が強まるなか、下落リスクを抑えながら長期的に良好なパフォーマンスを目指すETF(上場投資信託)が米国で注目を集めている。

 米資産運用大手ブラックロック・グループは20日、下落リスクを低減した4つのETFを米国で上場した。それぞれ「米国」「北米除く先進国」「新興国」「先進国および新興国」の株式を投資対象とする。いずれも同社のETFブランド「iシェアーズ」の主力のETFをベースとしており、これらのETFの言わば「低ボラティリティ(変動性)版」となる。ブラックロックは、「新しいETFは、一定の価格上昇を狙う一方で下落相場に備えるためのポートフォリオを作成するために役立つ」と説明している。

 新興国に幅広く分散投資できるiシェアーズのETFとしては、「iシェアーズ・MSCI・エマージング・マーケット・インデックス・ファンド(EEM)」が日本の個人投資家の間でも人気だ。ブラックロックは今回、同ETFよりも価格下落リスクを低く抑えた「iシェアーズ・MSCI・エマージング・マーケット・ミニマム・ボラティリティ・インデックス・ファンド(EEMV)」を投入。両ETFが連動する指数のパフォーマンスを比べると、9月30日時点での過去1年間のリターンはEEMがマイナス16.15%、EEMVがマイナス6.38%と下落率は半分以下に抑えられている。

<「通信サービス」や「生活必需品」を重視、より内需を反映>

 EEMVのセクター別の投資比率を見ると、下落相場でも底堅い値動きをするいわゆる「ディフェンシブ」セクターの割合がEEMに比べて高くなっていることが分かる。EEMもEEMVも金融への投資比率が20%超で最も高いのは共通しているが、EEMは2位がエネルギー(投資比率:13.90%)、3位が素材(同13.53%)であるのに対して、EEMVは2位が通信サービス(同13.91%)、3位が生活必需品(同12.81%)となっている。また、EEMに比べて公益関連やヘルスケアの比率が倍以上に引き上げられている。エネルギーや素材は世界的な商品市況の影響を受けやすいとみられるが、EEMVはこれらのセクターの比率を引き下げる一方で、消費関連株などに重きを置いており、より内需を反映したポートフォリオと言える。欧米の一段の景気悪化が懸念されるなかでも、新興国では購買力の向上を背景とした強い内需が経済を支えるとみる向きが多く、こうした内需の拡大をより反映しやすいのも利点となる。

<コスト面での優位性も際立つ、長期投資で有利に>

 EEMVが注目されるのは、下落リスクが低いだけではない。コスト面での優位性も際立っている。エクスペンス・レシオ(日本の信託報酬にほぼ相当するもの)は0.25%と、EEMの0.69%の半分以下。低コストのインデックスファンドの運用で知られるバンガードが提供する新興国株式ETF「バンガード・MSCI・エマージング・マーケットETF(VWO)」のエクスペンスレシオ(0.22%)に迫った。長期投資においては毎年差し引かれる信託報酬がいかに安いかが重要となるため、この点においてもEEMVが投資家の関心を集める可能性がある。

<米国では低リスク型ETFが相次ぎ上場>

 さらに興味深いのは、ブラックロック以外の運用会社も相次ぎ低リスク型ETFを米国で上場していることだ。今年の5月に上場した「パワーシェアーズ・S&P500・ロウ・ボラティリティ・ファンド(SPLV)」は多くの資金が流入し、米国のETFニュースサイトでは「今年最も成功したETFの1つ」と高く評価されている。同じく5月には米資産運用大手ラッセル・インベストメントが米国株の大型株指数のラッセル1000指数と小型株指数のラッセル2000指数をベースにした低リスク型ETFを2本上場。8月には新興国投資に強みを持つ米運用会社のエマージング・グローバル・アドバイザーズが「EGシェアーズ・エマージング・マーケット・ハイ・インカム・ロー・ベータ・ETF(HILO)」を設定した。同ETFは流動性や配当などに着目し、下落リスクが低くなるような銘柄を組み入れている。

 ブラックロックは、欧州債務問題で株価が乱高下する現在のマーケット環境において、リスク管理の重要性が一段と高まっていると指摘する。同社が今回投入したEEMVなどの4本の低リスク型ETFは、日本では残念ながらまだ購入できない。しかし、米国で先行した低リスク型ETFが脚光を浴びれば、日本のETF業界でも同様の商品の上場に向けた機運が高まることも考えられる。

提供:モーニングスター社