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FXを極める=「軽やかな期待とドル・円の青空」

2011/12/02 18:58

 投機筋のポジション動向に、衝撃を感じた。

「円買いポジションの傾きがあのときと同じだ」

 シカゴIMMにおける非商業部門の主要6通貨先物のポジション動向をみる。11月22日時点で円の買い越し幅が4万3180枚に達していた。この買い越し幅、10月25日以来の高い水準である。

「10月25日以来?」

 そう、10月25日以来。この10月25日という日付に格別の意味がある。10月25日(火曜日)時点のポジション動向が明らかになったのは10月28日(金曜日)のNY時間。そして、翌週月曜日は――

 財務省・日銀、大規模介入の日。

 足元で、財務省が為替介入を断行した当時の水準まで円買いポジションが蓄積していることは衝撃的である。

 10月31日、その日まで何回も何回も、当局の「本気度」を試すかのようにドル・円の戦後最安値の更新が続き、当日の未明にも急落。これが介入断行の決め手の1つになったが、同時に31日の段階でポジション動向から「投機筋の過度な円買い」の「傍証」が出ていたことも間違いなく大きかっただろう。いま、激しい値動きをもう一度みるなら、いつ為替介入が行われても不思議ではない。

 そして、今週明かされた為替介入実績から確実になりつつある、日本の「隠密介入」。日本の為替介入戦略は微妙に変化している可能性がある。

 今週前半、ドル・円の粘り腰の復調ぶりを目にしたある為替ストラテジストは「ファンダメンタルズの裏付けが必要」と述べた。しかし、ドル・円の上昇は、米経済指標から明らかになる米国経済の底堅い推移というよりも、むしろポジションの偏りの是正、つまり円の売り戻しによるものと考えられる。

 一方で、11月30日の日米欧6中銀のドル資金供給の強化を受けてドル・円が急落した通り、投資家のリスク許容度が本当に高まれば、ドル売りが進むという「宿命」。11月28日にかけてドル・円は確かに戻したが、それは翌29日のユーロ圏財務相会合に向けた「根拠不明の淡い期待」によるもの。投機筋がポジション調整のきっかけにしたに過ぎない。本当の意味でのリスク選好とは異なる。

 見上げれば、ドル・円の上空には幾層もの分厚い雲が横たわっている。11月1日の高値は78円61銭、200日移動平均線は足元で79円30銭、10月31日、介入当日の高値は79円51銭。そして、1995年4月に付けた、かつての戦後最安値79円75銭。

 東日本大震災で失った1ドル=80円という日本の「精神的な底値」。3月17日、放射能漏れの恐怖のなかで、戦後最安値は79円75銭から76円25銭に掛け代わった。ドル・円が79円75銭を大きく下回っている現状、奪回はまことに厳しい。

 欧州で、また会議が始まる。

 独仏首脳会談が12月5日に設定されたほか、8日にはECB(欧州中銀)理事会、8日から9日にかけてEU(欧州連合)首脳会議が開かれる。11月29日のユーロ圏財務相会合からEU首脳会議までの間をざっと「緊張の10日間」と称する向きもあるようだが、わたしには「失望の10日間」となる気がしてならない。「緊張の10日間」に似たものを、われわれは今年、何度経験して、何度失望しただろうか。

 ただ、「絶望」までは行かず、かといって「ポジティブ・サプライズ」ともならず、市場が「軽薄な期待」に酔っているうちは、ドル・円はジリジリと上がるのだろうが。(和田崇彦)

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提供:モーニングスター社