MORNINGSTAR 株式会社SBI証券

投信エキスポ2016投信エキスポ2016

基調講演 第3部

日本経済の展望

  • 東京大学名誉教授
    学習院大学 国際社会科学部 教授
    伊藤 元重氏

 東京大学名誉教授 学習院大学国際社会科学部教授 伊藤元重氏の講演「日本経済の展望」では、日本経済の現状を「夜明け前が一番暗い」とたとえ、変化の兆しが出ていると語った。講演の要旨は以下のとおり。

「世界中が日本になった」といわれる低成長、低インフレの長期化

 ヨーロッパの「日本化」がいわれ、デフレが長く続き不況から脱しきれないという状況が、ヨーロッパ各国に広がっている。また、「日本は、やっぱり日本だ」、すなわち、日本は何も変わっていないといわれている。米国もサブプライムショック以降は、力強さを欠き、先進国経済は低迷している。世界中が日本になったような状況だ。

 2012年12月に安倍内閣が成立し、「デフレからの脱却」を打ち出した頃は、中国は経済が好調で、米国の景気回復は本格化してきたといわれ金融緩和策を正常化するテーパリングが話題になっていた。欧州は、ギリシャ危機や南欧危機がいわれていたものの、ドイツやオランダの経済は堅調といえた。「世界中が日本になった」とは、世界中の景気が悪くなったということで、日本にとっては一段と厳しい状況になっているということができる。

先進国のセキュラースタグネーションを救うか? AI、IoTの発展

 先進国が「セキュラースタグネーション(長期的不況)」に陥っている。背景の一つは、ベビーブーマー世代が引退し、人口ピラミッドをみると40代より上の高齢者層が大きく膨らんだ人口構成になっている。これは過去になかった状況で、誰もが「老後」を心配している。企業は人口減少を前に、新たな投資ができないと判断している。

 また、リーマンショックの影響が長引いている。そして、大きいのは「イノベーション」が消えてしまっていることだ。1880年から1980年までの100年間はアメリカの黄金の時代といわれるが、電力が普及し、1907年にT型フォードが出て自動車が大衆化し、通信事業が発展した。技術進歩の進捗率を測るTFP(全要素生産性)が大きく伸びたが、1980年に伸びが止まった。

 しかし、この低迷の時代が終わるのではないかと期待されることがある。AI(人口知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボット、クラウドなどの発展は、これまでの社会を大きく変える可能性がある。夜明け前がもっとも暗いといわれるが、現在がその夜明け前ではないかと感じさせる。

 一方、世界経済は成長を続けてきた。先進国の貯蓄が新興国に流れ、新興国経済を成長させてきたためだ。しかし、この新興国の成長も止まっている。2004年〜05年に最も高い成長を記録し、このスピードが速すぎたためにリーマンショックの痛手も大きかった。長い目で見ると、新興国の成長は戻ってくるのだろうが、時間が必要だ。

対談用写真

東京大学名誉教授
学習院大学 国際社会科学部 教授

伊藤 元重氏

 日本は、2012年からのアベノミクスによって、大きく動いた。株価は2万円を付け、為替の円安が進み、企業収益は急速に増えた。雇用も過去23年間で最も高い求人を行っている。にもかかわらず、消費が伸びない。私は、「五右衛門風呂経済」と言っている。金属でできた風呂釜は熱しているのだが、中の水は高齢化などによって冷え切ったままだ。水が温まらないうちに、薪がなくなってしまうのではないかと心配されている。

日本でも表れている変化、「夜明け前が一番暗い」

 日本のデフレが続いているのは、金融緩和で物価が上がり始めたところに、原油価格が2分の1になるという状況が重なったことによる。既に原油は下げ止まっているので、どこかで消費者物価が上がることになる。

 名目GDPを上げることが重要だ。GDPは1997年の一番高かった523兆円をピークに、これを更新していない。消費増税を先送りしたことによって、医療・年金・介護の充実のための財源が先送りされてしまったが、税率8%に据え置かれたことは、実質的な減税といえる。年後半から来年にかけて新しい動きが出てくるのではないか?

 3つの面で変化が起きている。一つは「雇用」。非正規で深刻な人手不足になっている。ここは、最大の改革のチャンスだ。労働時間を減らす変化が求められよう。そして、「ロシア」。初めてロシア担当大臣が置かれたことは、大きな変化だ。加えて、「技術革新」が動き始めた。AIやIoTなどが急速に発展している。AIやIoTによって、金融が変わり始めた、eコマース、教育なども変わろうとしている。

 まさしく、今の日本に言えることは、「夜明け前が一番暗い」だ。

セミナー風景

Platinum Sponsors

Gold Sponsors

Silver Sponsors

Bronze Sponsors

Special Sponsors

この資料は投資判断の参考としてモーニングスターが情報提供しております。モーニングスターのレーティング情報は過去のパフォーマンスに基づくものであり、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。また、モーニングスター株式会社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、安全性等について保証するものではありません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びにMorningstar.Incに帰属し、許可なく複製、転載、引用することを禁じます。

広告企画・制作=モーニングスター株式会社

Copyright© 2016 Morningstar Japan K.K.All rights reserved.