morningstar

年末年始特集

タイ、インドネシアが有望、どうなるアセアン株

米国発の要因で日本株は大幅下落

 18年は株式市場にとって、厳しい年になったといえる。日本株で言えば、日経平均株価が10月に付けた高値から年末にかけて急落、1年3カ月ぶりに20,000円を割り込み年初来安値を付けるなど、ボラティリティ(変動率)の高い展開となった。思えば、18年の日本株に一番大きな影響を与えたのはやはり米国だった。米中貿易摩擦問題は長く尾を引いている上、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締め、トランプ米政権に対する不透明感など、米国発の要因が多かった印象だ。

19年アセアン株反騰の条件

 18年のアセアン株は総じて下落基調にあった。タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアの株価指数は年初来ですべてマイナス・パフォーマンスとなった(18年12月26日終値時点)。

図表1:アセアン株にとって厳しかった2018年

図表1:アセアン株にとって厳しかった2018年

※ 2017年12月29日を100として指数化。期間は2017年12月27日〜2018年12月26日
※ 出所:MorningstarDirect

 ただ、年初来の騰落率で見れば、先進国に比べ、下落率は抑制されている(米国は26日に史上最大の上げ幅で反発している)。特にインドネシアは、下落率がマイナス3%台と小幅だった。

図表2:アセアン各国の株価騰落率

図表2:アセアン各国の株価騰落率

※ インドネシアはジャカルタ総合指数、マレーシアはFTSEブルサマレーシア指数、タイはタイSET指数、シンガポールはシンガポールST指数、米国はダウ工業株30種平均、日本は日経平均
※ 出所:MorningstarDirect

 19年のアセアン株の動向のカギを握るのは、やはり米国だ。19年はリセッション(景気後退)入りへの突入懸念もささやかれるが、市場の見方は楽観的だ。フィリップ証券・証券営業本部 リサーチ部長の庵原浩樹氏は、「過去の統計を見ると、リセッションは利上げが打ち止めとなり、利下げが始まってから13カ月後」になると指摘する。12月のFOMCでは19年の利上げ回数見通しが3回から2回に減少したことに注目が集まっているものの、実は20年にもう1回実施される見通しとなっている。つまり、19年に米利上げ局面にある間はリセッション入りとはならないと考えられる。また、20年11月には米大統領選挙がある。トランプ米大統領は選挙戦に向け、景気対策を充実することが想定される。

 アセアン各国の景気は順調に成長する見通しとなっている。図はIMF(国際通貨基金)のアセアン各国と日米のGDP成長率見通しだが、インドネシアは5%台、マレーシアは4%台後半、タイでも3%台中盤の高い成長が続く見通し。

図表3:高い成長率を維持するアセアン各国

図表3:高い成長率を維持するアセアン各国

※ ハイライト部分がIMFの予想
※ 出所:IMFの「World Economic Outlook Database, October 2018」よりモーニングスター作成

 その中でも「タイとインドネシアへは期待は大きい」(フィリップ証券・庵原氏)。5年推移で見たアセアン株でもインドネシア、タイの株式市場のパフォーマンスは良好だ。

図表4:インドネシア、タイが好調−5年推移で見たアセアン株−

図表4:インドネシア、タイが好調−5年推移で見たアセアン株−

※ 2013年12月27日を100として指数化。期間は2013年12月27日〜2018年12月26日
※ 出所:MorningstarDirect

 タイの経済成長率自体は他のアセアン諸国に比べて高くはないが、経済発展著しいミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムなどがあるメコン地域の中心という地理的優位性が大きい。タイでは14年5月に発生したクーデター以降、事実上、軍が政権を支配してきたが、19年2月に総選挙が実施される予定。この総選挙の最大の焦点は「軍政が維持されるかどうか」だ。もっとも、選挙実施の延期もささやかれており、先行きはまだ不透明な状況にある。そんな中、タイ中央銀行は12月に、11年以来となる利上げに踏み切った。市場ではこの利上げはある程度織り込まれており、特段のサプライズとはならなかったが、利上げが出来るということは経済が好調でもある証拠といえる。

 インドネシアは、アセアン各国の中で5%中盤の高い成長率を維持している。もうおなじみだが、人口が多く、若年層が厚い点も成長期待がかかる理由だ。そのインドネシアも19年4月に大統領選挙を控える。現時点では現職のジョコ大統領が優勢の情勢で、外資への市場開放や規制緩和などの政策は維持される見通し。汚職問題や保護主義への傾倒など懸念材料は挙がっているが、政権や経済は比較的安定しているといえる。

タイ、インドネシアの有望銘柄は?

 では実際に成長期待が大きいタイやインドネシアの有望銘柄を紹介していきたい。

 タイでは、1945年設立の大手商業銀行であるカシコン銀行が挙げられる。タイでは足元で利上げが行われるなど、銀行業には追い風が吹く。同行は不良債権比率が1.28%と低く(18年12月期第3四半期時点)、安全性も高い。12月11日付でジョイントベンチャー「カシコンLINE」を設立、オンラインバンキング事業を展開する方針を示している。タイ国内には4,400万人のLINEユーザーがおり、新事業のポテンシャルは大きい。リリースによれば、サービスの提供開始は19年後半に予定されている。

 魚介類の加工食品に強みを持つタイ・ユニオン・グループにも注目したい。マグロの缶詰を中心に、シーフードの加工品が主力製品。欧米へも展開しており、足元では自社ブランド製品の値上げ交渉が欧州を中心に効果を発揮し始めているという。大株主には三菱商事も名を連ねる。

 タイのヘルスケア施設運営企業も魅力的だ。タイでは高齢化や中間層の拡大で医療に対する需要が高まっている。日本の投資家にとっては、病院を運営する企業への投資が可能になり、分散投資の意味合いも出る。タイ最大の民間病院運営会社であるバンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズなどが関連銘柄。欧米への留学経験を持つ質の高い医師・看護師が多く、英語でのコミュニケーションが出来ることから、国内だけでなく、欧米からの医療ツーリズム先として海外の需要も獲得している。

 インドネシアでは自動車販売が主力のアストラ・インターナショナルを紹介したい。インドネシア自動車製造業協会(GAIKINDO)が発表した、18年1−10月のインドネシア国内の新車卸売販売台数は前年同期比7.4%増の96万台と順調に伸びており、中でも商用車が同19.2%の23万台と大幅に伸長している。インドネシア国内の自動車市場は競争が激化しているが、直近18年12月期第3四半期決算は売上高が前年同期比16%増、純利益が同21%増と業績は堅調に推移している。

 インドネシア最大の建機販売会社で、コマツ、などの世界的なブランドを扱うユナイテッド・トラクターズも有望だ。足元の18年第3四半期累計の売上高は前年同期比32%増、純利益は同61%増と業績が好調に推移している。主力の重機販売の他、採掘請負や炭鉱事業も拡大している。

(宮本 裕之)

【記事一覧】

    年末年始特集トップへ

    ページの先頭へ戻る

    Copyright© Morningstar Japan K.K. All rights reserved.