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掲載期間:2020年1月31日〜2020年3月2日

第一部 講演

2020年の世界経済の展望

  • クレディ・スイス証券株式会社
    マネージング ディレクター 取締役兼副会長 経済調査本部長 チーフ・エコノミスト, Ph.D.
    白川 浩道氏

世界経済は来年に再加速の見通し

 世界経済は2019年12月時点で、既に10年半以上の回復局面が続いています。これは、OECDの統計などをみると、1970年代以降で最長となる、非常に長い景気回復局面になっています。リーマンショックで大きく落ち込んだ後、非常にゆっくりと上がってきているため、過熱感がないことが特徴です。

 今年夏ごろに米国の長短金利が逆転しました。金融を見ている人は、世界景気の後退のシグナルが出ているというのです。実際の米国の長短の金利格差は、今の統計的分析からいくと、だいたい向こう1年半程度は、20年から21年半ばくらいまでは、米景気が腰折れて成長率が鈍化する可能性は低いということが読み取れます。

 なぜ、アメリカの短期金利が低い状態をキープしているかというと、今年、アメリカの中央銀行は3回の利下げを行っています。7月から10月にかけて合計0.75%金利を下げました。金融緩和によって、長短金利格差が引き続きプラスであり、それによって今、金融市場からの示唆は、引き続き景気が向こう1年半は回復をたどるだろうということです。

 また、中国の製造業のPMI(製造業の企業の部品などの購入担当者の景況感)をみますと、どうもここから、中国の生産活動が上を向くようなシグナルがでています。中国の生産関連指標が上を向くことは、世界的にメーカーの生産活動が上を向く可能性が高いと考えられます。

 したがって、国際機関の見方は、2020年の世界の成長率は今年より高くなる見通しです。今年は、一時的に金融市場が混乱し、米中関係が嫌気されて、中国の製造業が弱かったのですが、来年の成長率は上がりそうです。株式市場は、常に世界の景気と一緒に動いているわけではありませんが、来年の方が見通しは明るいということがいえます。

 来年の市場見通しは楽観的です。実は、経験則がありまして、OECDの景気先行指数は一定の水準を下回ると景気後退局面となり、70年代、90年代頭、2000年代の頭、また、リーマンショックなどで景気後退のシグナルが出ました。なぜ、今回は、これほど長い期間にわたって拡大しているかというと、ところどころでガス抜きが起こっています。2011年の南欧危機(ギリシャ危機)、15年、16年の中国経済の減速、そして、今の通商摩擦です。好景気が伸びるということが起こっています。

対談用写真

クレディ・スイス証券株式会社
マネージング ディレクター 取締役兼副会長
経済調査本部長 チーフ・エコノミスト, Ph.D.

白川 浩道氏

図表1:OECD・CLIの長期推移
2009年以降の世界経済は1970年代以降で「最長」となる景気回復局面を謳歌している

図表1:OECD・CLIの長期推移:2009年以降の世界経済は1970年代以降で「最長」となる景気回復局面を謳歌している
  • 出所:OECD、クレディ・スイス
  • 直近ボトム=2009年2月

 また、先進国の投資活動、設備投資の全体の国民所得に対する比率をみると、リーマンショックの時に深い投資不況があり、そこから投資はゆっくりしか戻っていません。それは、所々でガス抜きのイベントがあるものですから、企業がいったん立ち止まって投資を見直しますので、水準がなかなか戻らない状況が続いています。投資が過熱しているわけではなく、多くの企業はまだお金を持っていて、しかも、ところどころで躊躇してきたので十分に投資をし切れていない状況です。

 アメリカの長短金利差(10年−2年のスプレッド)が逆転する(マイナスになる)と、アメリカ経済は1年から1年半後に後退しています。今回は微妙なところで止まっています。しかも、戻っています。経験則上、マイナスになるかどうかは重要です。アメリカは3回利上げして、長短金利差が逆転しそうになって、その後、戻っています。

 アメリカの中央銀行は昨年12月20日に最後の利上げをし、24日にトランプ大統領に叱られ、今年に入ってから利上げができなくなり、夏からは利下げをしました。もし、トランプ大統領が何も言わなければ、長短金利差が逆転し、1年後に景気後退になるシグナルが出ていたかもしれません。したがって、あと1年半くらいは景気後退しないといえます。

 そして、中国の製造業PMIデータは、非常にキレイな4年サイクルになっています。携帯やその部品は4年サイクルです。前回は15年秋にボトムがあり、その前は11年です。テックサイクルといいますが、これが、今終わりに近づいていて。11月は新規受注の底打ちが見えています。ここからは5Gなどが出てきます。その生産を始める局面です。ここから製造業PMIは悪くなりにくいのです。

図表2:中国の製造業PMIデータ
中国の製造業データは底入れしており、世界的な生産活動の再加速が視野に入った

図表2:中国の製造業PMIデータ:中国の製造業データは底入れしており、世界的な生産活動の再加速が視野に入った
  • 出所:中国FLP、the BLOOMBERG PROFESSIONAL™ service、クレディ・スイス

 今年の世界の経済成長は3.0%と少し低くなりましたが、来年は3.4%成長が見込まれています。基本的には来年も急激に成長率が上がるとは言えませんが、減速した経済が再加速する可能性が高いのです。

米中通商摩擦問題は長期化するものの来年は小康状態か

 米中通商摩擦は、80年代の日米貿易摩擦とは質的に全く違います。なんとなくアメリカという国は、他の国の能力が上がって、その国の貿易黒字が大きくなってくると、その国を叩こうとする傾向があります。

 日米は同盟関係にある経済の摩擦であって真に経済問題といえますが、米中は安全保障問題です。米中2大国家による覇権争いなのです。トランプ政権の発足から3年間、側近を次々にクビにしてきました。2人だけ変わっていないのは、ウィルバー・ロス商務長官とピーター・ナバロ米中担当補佐官です。特に、ナバロ氏は、筋金入りのアンチ中国です。「アメリカは中国のせいで死ぬ」という本を書いています。

 中国経済をこのまま成長させると、軍事予算が米国を上回り、アジア、ヨーロッパ、アフリカが中国にとられてしまうという考えがあり、何があっても中国の成長を阻止しなければならないとしています。トランプ大統領は、そこまでアンチ中国ではないのですが、アメリカの保守派は、本当にアンチ中国です。中国経済を弱体化させないと、とんでもないことになるという考えに基づいて通商摩擦が起こっていますので、日米の貿易摩擦とはまったく発想が異なります。

図表3:主要国のGDPと軍事支出
中国のGDPと軍事支出の急拡大は米国にとっての脅威になっている

図表3:主要国のGDPと軍事支出:中国のGDPと軍事支出の急拡大は米国にとっての脅威になっている
  • 出所:世界銀行、IMF、クレディ・スイス

 米国が中国製品に輸入関税を課すことによって中国経済は弱体化しません。関税はアメリカの企業が支払います。昨年から今年にかけて中国の製造業が悪かったのは、単純に3−4年に1回来る、中国のハイテク部門の在庫調整でした。通商摩擦によって中国の経済が悪くなったというデータは、どこにもありません。もともと関税をかけるというのは手段であって、目的ではありません。

 アメリカの目的は、中国経済を破綻させることです。今は、中国に対して知的財産権、技術情報の保護をしたい。北京などではブランドものがコピーされて売られています。バッグ、アクセサリー、ソフトウエアや通信関連など、アメリカが持っている知的財産を盗むなということです。アメリカの商務省のレポートには、中国をセフト(盗人)と書いてあります。中国でビジネスをやる場合は、中国政府に対し、情報を出さないとビジネスができません。

 たとえば、GEが中国に原子力発電設備を売りたいのであれば、その技術情報を全て開示するように求められます。出すと、コピーされます。大変深刻な問題になってきています。年間で200兆円くらい損をしているといわれています。

 中国がアメリカの技術情報をコピーしないようにすることはできません。アメリカの企業が中国でビジネスするときに技術情報を提供しないと進出できないのですから。中国では人口の多さは大変な強みです。

 シカゴ大学の教授が書いた本で、中国の産業スパイという本があります。中国は、留学生、企業人、共産党員、役人という4つのカテゴリーの人が全て産業スパイであるといっています。これらの人々がアメリカに入国することを止める手段がありません。

 中国は法律を作って、外国企業から強制的に情報を取るようなことはしないという法律を施行しますが、どうやって有効性を担保するのか、違反したらどうなるのかということは法律に書いていません。トランプ政権は、その内容を見直すように言っていますが、書き直したところで有効な法律には直らないでしょう。

 米中通商問題は長期化します。決着が見えません。「盗んでいる、盗んでいない」、「盗まない、盗むだろう」という言い合いです。国際社会が監視していくということはあり得ますが、しかし、具体的な手段は見つからないと思います。

 来年は、関税は止まって、拡大せず、摩擦が縮小する可能性があります。アメリカに選挙があるからです。関税はアメリカ企業が払っているので、企業への増税に等しいのです。関税を縮小した方が米国企業への受けは良いですから、政権は世論の動向に配慮するでしょう。これは、対中国ではなく、国内的な理由です。ただ、大統領の再選が決まったら、政権のイメージが変わらなければ、どんどん強硬になるかもしれません。

 中国のGDPは2008−09年に日本を抜きました。このままのスピードで成長すると、アメリカのGDPを抜くかもしれません。ただ、米国の軍事支出7,000憶ドルくらいに対し、中国は2,000憶ドルくらいです。GDP対比で少しでも中国が比率をあげれば、米中の差はすぐに縮んでいきます。

 製造業にはサイクルがあります。生産し、在庫を積み上げ、在庫を処理するということの繰り返しです。これを受けて輸出も上がり下がりします。メディアはとにかく通商摩擦だといいたいがために、中国の景気悪化を米中摩擦のせいにしますが、サイクルにすぎません。中国は人民元を引き下げたので、貿易問題の経済への影響は全然問題ありません。

 一部の企業の間で、中国で生産することを止めて東南アジアに生産拠点を移そうなどという話がありますが、中国の直接投資は、今年は改善しています。中国にお金が入っています。中国は人民元相場を切り下げてコストを安く見せて、規制緩和をして外国企業を呼び込んでいるのです。

米国の大統領選挙の影響は?

 最後にトランプ政権が再選されるのかについて現在の見通しをお話しします。現在、民主党がウクライナ問題でトランプ大統領を訴追する準備を進めています。アメリカは下院の過半数が裁判にかけるべきだと判断すると、上院が裁判にかける制度です。ただ、上院は共和党が過半数ですから、有罪にはならないと思います。

 トランプ大統領の支持率は低くありません。1期目の11月の調査で、支持率は、オバマ前大統領と同じです。そして、国家の状況に満足している国民の比率は、トランプ大統領が一番高いのです。この状況ではたぶん負けないと思います。再選されると、再来年がどうなるのかわからなくなります。通商摩擦は泥沼化していきますので、マーケットはずっと気にしていかなければならなくなるでしょう。

図表4:トランプ大統領支持率について

・米国調査会社ギャラップ社の世論調査によれば、任期2期目の大統領選挙の1年前時点における支持率でみた場合、トランプ大統領は決して低い値ではない。

・また、国家運営に関する満足度は、トランプ大統領が過去3人の大統領よりも高くなっている。

図表4:トランプ大統領支持率について
  • 出所:米国Gallup社、クレディ・スイス

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