MORNINGSTAR

投信エキスポ2020投信エキスポ2020

掲載期間:2020年10月29日~2020年11月30日

基調講演1

ポストコロナはこれまでの資産運用法を再考する

  • モーニングスター株式会社
    代表取締役社長 
    朝倉 智也

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依然として不確実性の高いポストコロナの世界経済とマーケット

 コロナショックは1929年の大恐慌以来の不景気であるといわれています。第2四半期のGDP成長率は、日米欧で年率マイナス20%、30%下がったという報道がありました。IMF(国際通貨基金)による予測では、今年の年間の世界全体の成長率はマイナス4.9%です。OECDはマイナス6%、世銀はマイナス5.2%の見通しです。

 IMFの予想で注目していただきたいのは、4月の予測数字とわずか2カ月もたたずにより悪くなっている点です。見通しは、どんどん悪くなっています。さらに、IMFはこの予測値について「不確実性がある」と言っています。

 先進国では米国マイナス8%、EUがマイナス10.2%と、アメリカ以上にヨーロッパが厳しい見通しです。これと比較すると、新興国は中国がプラス1.0%と主要国の中で唯一のプラス成長期待があります。来年も先進国以上の高い成長が見込まれています。相対的に先進国より新興国の方が、落ち込みが小さいといえます。

 今回の不況は「教科書なき不況」といわれています。本来であれば、景気後退は供給があるものの需要が減退して不景気になるのですが、今回は、需要も減退したのですが、供給もサイプライチェーンが遮断されて制約がありました。需要不足と供給の制約が同時に起こっています。教科書にはない不況の姿ですから、どこまで経済が落ち込むのかわからないという状況です。

 IMFの予想による経済見通しですが、第2四半期を底にして回復が始まるケースと、2021年に再度コロナ感染が広がる場合のシナリオがあります。現在のところ、2021年は5.4%成長の予想ですが、2021年に感染の再拡大があった場合は4.64%マイナスの予想ですので、プラス成長がほぼ期待できなくなります。

 今回はV字回復ではなく、U字、あるいは、L字かもしれないといわれています。景気の落ち込みが大きく、ゆっくり回復していくという見通しです。このような場合は、デフレの圧力が強くなります。日本はずっとデフレですが、アメリカもヨーロッパも「日本化」していくのではないかといわれています。

 一方、各国政府の借金が膨らんでいます。日本においては、定額給付金の支給、法人向けの助成金などを出していく中で借金をしています。日本はGDPに対して268%の借金を抱える世界最大の借金国です。G20の先進国では141%超となり、これは第二次世界大戦後1946年の120%を大きく上回る大借金です。何かあった時に、これ以上の借金を重ねることは厳しい状況といえます。一方、新興国は63%でまだ余裕があります。

対談用写真

モーニングスター株式会社
代表取締役社長

朝倉 智也

 ただ、アメリカも日本も中央銀行による国債の買い入れ枠の上限を撤廃しました。国の借金を支えているのは中央銀行です。本来であれば財政ファイナンスといわれ、禁じ手なのですが、事実上の財政ファイナンスが行われています。ただし、大借金と大きな歳出は継続することは不可能です。どこかで調整が必要になります。

 そして、これまでデフレの世の中でしたが、インフレもあり得ます。1970年代に景気後退とインフレが両方起こったスタグフレーションが起こりましたが、現在、ジャブジャブに資金を出しているので、インフレの芽も出てくる可能性があります。

 このような経済のファンダメンタルズが厳しい中で、なぜ、株価は上がっているのでしょう? 世界株(MSCI ACWI)は、リーマンショック後にずっと上昇を続けてきました。この山は、アメリカ、日本、ヨーロッパの中央銀行が一生懸命に市場に資金を流してきた過剰流動性の結果です。2020年3月に一気に増えました。

図表1:主要中央銀行の資産残高と世界株の推移

図表1:主要中央銀行の資産残高と世界株の推移
  • 出所:モーニングスター作成
  • ※主要銀行の資産残高=各国中央銀行公表の資産残高(円ベース)
  • ※世界株式=MSCI ACWI(税引前配当込、円ベース)
  • ※中央銀行の資産残高の米国と世界株式は米ドルベース、中央銀行の資産残高の欧州はユーロベースをTTM(三菱UFJ銀行)にて円換算
  • ※2007年1月~2020年7月(月次)

 これだけ市場にお金を流してきましたので、行き場を失った資金が株式や不動産に向かっています。株式だけではありません。ハイイールド債券という、投機的な格付けBB以下で、利回りが高い債券も上がっています。FRBがBBBからBBに下がっても買うことにしたのです。ハイイールド債券にも資金が流入し、価格が上昇しました。

 この過剰流動性に加えて金利が株を支えています。主要国の金利は右肩下がりです。債券は、かつてないバブルです。直近では世界の債券の25%がマイナス金利です。その結果、日本の定期預金金利は0.002%です。100万円預けて20円、税金引かれて16円です。時間外ATMで預金を引き出す、送金する手数料でマイナス金利になります。これから通帳を発行してもらうのに手数料が必要になります。口座維持管理手数料を徴収しますというようになってきます。これらがマイナス金利の影響です。

 もう一つ「実質金利」に注目することも大事です。金利から消費者物価指数を引くと実際のお金の価値が分かります。金利が1%のところ物価が2%上がったら、実質的な金利はマイナスです。日本もアメリカもヨーロッパも実質金利がマイナスです。預金金利が0.002%では、消費者物価が0.1%上がっただけで実質金利はマイナスです。実質金利がマイナスですから、株式に投資することが正当化されます。

図表2:実質金利の推移

図表2:実質金利の推移
  • 出所:モーニングスター作成
  • ※実質金利=10年国債利回り-消費者物価指数
  • ※消費者物価指数=各国(地域)の食品・エネルギー等除く指数
  • ※期間:2005年12月~2020年7月(月次)

 米国の10年国債と米国株式の配当利回りを比較すると、通常は債券の利回りが高いのです。株式はキャピタルゲインも期待できますので、利回りは低くなるのです。それが、今は配当利回りの方が高くなり、過去50年で最高の格差になっています。逆にいうと、債券の金利がずっと下がってきましたので、債券の価格が凄まじく上がってきているのです。つまり、債券と株価を比べた場合、株価の方がまだ割安だといえるのです。

 ただ、バリエーションという株価の割高・割安を測るモノサシで測ると、いくつかの指標で株価が割高といえる水準にきています。有名なウォーレン・バフェット氏が使う指標で、株式の時価総額をGDPで割った指標があります。この指標が1を超えると株価が上がり過ぎといえます。ITバブルの時には1.4になりました。リーマンショックの時は1.1でしたが、今回はすでに1.7になっています。GDPに対して株価が7割も割高になっているのです。

 もうひとつ、PER(株価収益率)で、企業の利益の何倍に株価がついているかを測ります。通常はS&P500で16倍~17倍です。CAPE指数は10年間の純利益に対し株価の水準を測ります。30を超えると割高といわれます。ITバブルの時には40を超えました。今回は既に30くらいにきて割高といえる水準です。

 もうひとつ、NASDAQとS&P500の関係です。今回の株高はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)+マイクロソフトがけん引しました。NASDAQ÷S&P500はITバブルの時3.44でしたが、今は3.28です。この指標は投資家のリスク許容度を測る指標にもなりますが、リスクをかなり取り過ぎている水準に来ています。

 S&P500の中でGAFA+Mだけで、既に時価総額の23.7%を占めています。S&P500は年初来で7~8%程度の上昇率ですが、GAFA+Mは6割、7割も上がっています。S&P500をわずか5銘柄で引っ張り上げているのです。ここにも行き過ぎが感じられます。

 私は、どちらかというと「ベア」(弱気)です。毎回、弱気なことを言っているといわれるかもしれませんが、バリエーションの行き過ぎは、どこかで修正されると思います。

ポストコロナの主役交代

 トヨタ自動車とテスラを比較すると、今やテスラの時価総額はトヨタの2倍になっています。テスラは今年黒字転換したのですが、予想PERで117倍です。尋常な株価ではありません。テスラの電気自動車や自動運転の技術、カーシェアサービスを考えるとトヨタはテスラと厳しい戦いをするかもしれませんが、現在の株価の水準は、テスラは行き過ぎていると感じます。8月上旬に1対5の株式分割を発表しました。株式分割で経済的な実態は不変です。それでも株価は上がっています。株式分割で株価が上がるというのは、行き過ぎた株価を表していると思います。

 ネットフリックスもすさまじく値上がりしました。ネットフリックスとディズニーを比較すると、当期純利益は5倍くらいの格差がありますが、今期の予想ではディズニーの利益が半減し、ネットフリックスは倍増すると予想されていますのでPERの水準は50倍程度で同じくらいになっています。それにしても時価総額がディズニーに並ぶというのは、行き過ぎではないでしょうか。

 インテルとエヌビディアという半導体の会社でも、純利益の水準やPERの水準を比較するとエヌビディアの株価は行き過ぎ感があります。確かに、今回のコロナで産業界の地殻変動が起きていることはあります。10年、20年後には立場が変わっているかもしれません。今の水準は高いと感じます。

 この年初からの株価の動きをみると、GAFA+Mの値上がりは60%~70%超と大きいのですが、ズーム・ビデオ・コミュニケ―ションは5.4倍です。PER196倍を超えています。テスラ、ドキュサインなど2倍から5倍に値上がりした株価は短期的な調整はあるのではないでしょうか。

図表3:DX(デジタルトランスフォーメーション)関連銘柄が米国を牽引する

図表3:DX(デジタルトランスフォーメーション)関連銘柄が米国を牽引する
  • 出所:モーニングスター作成
  • 米2019年12月末~2020年9月4日(日次)

 ただ、長期の目線で見ていただくと、新しい産業や企業が芽を出し、不況期に生まれた先進企業がゲーム・チェンジャーになっていきます。ITバブル崩壊の時に生まれたのがアマゾン、アリババ、テンセントです。リーマンショック後の不況時に生まれたのがフェイスブック、ツイッター、テスラなどです。不況期にどんどん新しい企業が生まれ、5年後、10年後の主役になってきます。

 最近ではアリババ子会社でアリペイを展開しているアントグループがあります。アリペイはスマホで決済、送金をするサービスを展開しますが、その利用状況を信用評価し、その評価が結婚などにも影響するほどになっています。アリペイのアクティブユーザーは7億人です。7億人が毎日使っています。上場直前ですが、時価総額20兆円の価値があるといわれています。

 コロナショックの時に、AI、ブロックチェーン、5G、電気自動車などが起こっています。ここから、次の時代の主役が生まれてくるかもしれません。過去を振り返っても10年ごとに主役が変わっています。80年代は日本企業の全盛期でしたが、90年代はIT関連です。2000年はエネルギーとコモディティの会社が活躍し、そして、2010年代は今に続くGAFA+Mの時代でした。2020年代は、GAFA+Mが続くとはいえません。次の成長企業が現れるでしょう。

ポストコロナの資産運用の考え方

 人気ファンドへの投資は慎重に考えましょう。7月の資金流入額の上位ファンドには、GAFA+Mの5銘柄など、デジタルトランスフォーメーション関連の銘柄に投資するファンドが買われたのです。勝ち馬に乗ることは当然大事ですが、勝ち馬に乗り遅れないようにと無理して追いかけていくことはすすめません。

 たとえば、ゴールドマンサックスの「netWIN」は1999年11月の設定です。まさに、ITバブルの最盛期です。資金流入額の推移と積立投資の成績を比較してみてみますと、1999年11月の設定時に一括して投資した場合と、2020年8月まで積立投資をした場合は、設定後にネットバブルが崩壊し、ずっと基準価額は下がっています。元本に戻ったのは14年1カ月後です。過熱している時に大きな投資をしてはいけません。積み立て投資をした場合は、下がっている時にも買い続けていますので、5年8カ月で元本を上回る成績になっています。時間分散で少しずつ買っていくことが大事です。

図表4:「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」の 積み立て投資と一括投資の比較
一括投資:249万円vs積み立て投資(1万円×249ヵ月)1999年11月~2020年8月

図表4:「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」の積み立て投資と一括投資の比較一括投資:249万円vs積み立て投資(1万円×249ヵ月)1999年11月~2020年8月
  • 出所:モーニングスター作成
  • ※一括投資:1999年11月末に249万円を一括で投資を行ったと仮定した場合 積立投資:1999年11月~2020年7月(249ヵ月)の毎月末に1万円ずつ投資し、翌月末の時価で評価
  • ※「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」は税引前分配金再投資後の基準価額、純資金流出入額の2020年8月はモーニングスター推計値

 また、これまではアメリカ一強でした。アメリカ株だけを買っていればよいという状態でした。ただ、GDPでアメリカと中国を比較すると、2010年と2020年で、中国がアメリカを急追しています。2030年には中国が米国を抜くといわれていますが、2025年くらいには中国がナンバーワンになっている可能性があります。

 トランプ大統領がデカップリング(経済の分断)といったように、両方を持っておくべきです。この10年間はアメリカを中心にした先進国が良かったのですが、今後は低迷していた新興国が良くなる可能性があります。

 米ドルと金の動きを重ねてみると、米ドルは10年くらいのスパンで上下していますが、米ドル一強時代は終わるのではないかといわれています。中央銀行がデジタル通貨を出した場合は、米ドルの地位は相対的に下がってくるのではないでしょうか。その中で金が上がってきています。米ドルと金は逆相関の関係です。金を資産運用に加えることは一考の価値があります。

 これからは、中国が経済の1番になる中で、中長期で高い成長をめざすポートフォリオには新興国を加えたいと思います。世界の時価総額は新興国10%ですが、もっと新興国の比率を高めた方が良いというのが一つの提案です。

 一方、安定した運用をめざす場合、これまでは債券7割と株3割といった比率でした。ところが、ずっと金利が下がり期待収益率が下がりました。株が下がった時に債券がクッションの役割が期待できなくなっています。債券の比率は、それほど高くなくても良いのではないでしょうか。株式を5割で良いのではないかと思います。円高の可能性に備えて為替のヘッジをし、金も一部組み入れましょう。

図表4:ポストコロナの資産運用の考え方

図表2:この文章はダミーです。
  • 出所:モーニングスター作成

 ポストコロナで世の中は大きく変わりました。しかし、資産運用の大前提は変わっていません。長期・積立・分散投資は変わりません。ただ、その中身は変えていって良いのではないかと思っています。中身は、できるだけ機動的に変えるようにしましょう。まさにダーウィンの進化論です。「必ずしも強いものが生き残るわけではない。そして、必ずしも賢いものが生き残れるものでもない。変化に対応できるものが生き残れる」のです。変化に対応していただくよう、ポートフォリオを見直していただきたいと思います。

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