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基調講演2

ニューノーマル(新常態)時代の資産配分とファンド選定は自分自身で決める

  • モーニングスター株式会社
    代表取締役社長 
    朝倉 智也

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ニューノーマル(新常態)とは?

 10年、20年単位で金利が大きく下がり、これから期待収益率が非常に厳しい状態です。債券の利回りは、10年前のリーマンショック後の頃は、日本は1%強ありました、欧米は5%以上ありました。1999年の日本のバブル時代は、日本も5%くらい、欧米は7~8%くらいでした。もう、このような高金利の時代に戻ることはないと思います。

現在は、世界の国債の4分の1がマイナス金利です。逆に言えば、この金利が上がる時の方が株価は怖いと思います。景気が浮揚して金利が上がってくる局面こそ、今は株式にとって最悪の事態といえます。悪い情報が出るほど、金利が下がり、過剰流動性が進み、資金が供給されて株価を支えている状況です。

 これまでは、株式と債券を組み合わせたポートフォリオで、株式7割・債券3割、あるいは、安定運用で株式3割・債券7割といった組み方をしてきたと思いますが、その債券の部分の利回りがまったくなくなってしまっています。その結果、ポートフォリオ全体の期待収益率が下がってきます。新常態における厳しい現実です。

 今までは、債券だけでも海外に投資していれば5%程度の利回りが期待でき、株式と債券の組み合わせポートフォリオとして一定の利回りは確保できました。そして、債券を組み入れることによって、株価が下がった時に債券がクッションの役割をしてきました。株価が下がった時には金利が下がって債券の価格が上がるという図式です。株が下がった分は債券の値上がりである程度は補えたのが、金利が高い時の運用でした。しかし、ここまで金利が下がると、これ以上、金利の低下は見込めません。したがって、株価が下がった時に債券がクッションの役割を果たせなくなっているのです。

 ですから、債券への配分比率をできるだけ小さくし、これまでよりも投資リスクを取るようにしたいということです。期待収益率は5年前、10年前より目線を下げて考えなければならないのです。これが新常態です。

対談用写真

モーニングスター株式会社
代表取締役社長

朝倉 智也

 また、これまではアメリカ一強の時代でした。NASDAQやS&P500が大幅に値上がりし、皆様もアメリカ株式に投資をして成果を上げられたと思います。ただ、世界のGDPに占める先進国と新興国の比率を見ますと、今現在で中国を含む新興国のGDPが、アメリカを中心とした先進国のGDPを上回っています。

図表1:世界のGDPに占める比率

図表1:世界のGDPに占める比率
  • 出所:IMF「World Economic Outlook Database(April 2020)」より、モーニングスター作成
  • ※先進国、アジア新興国はIMFの定義に基づく
  • ※2020年、2021年はIMF予想
  • ※期間:1980年~2021年(年次)

 そして、次世代の技術といわれる分野でも中国の台頭が目立ちます。なぜ、アメリカがファーウエイやTikTokを排除しようとしているかというと、中国の技術が怖いのです。先端技術の分野で中国がアメリカを凌駕するということが起こってきています。たとえば、AIアクティブ・プレイヤーの割合は中国が圧倒しています。AI(人工知能)はデータが集まらないと機械学習ができません。中国ではアリペイやウィチャットペイなどスマホで決済・送金することが当たり前に行われています。アリペイのアクティブユーザーが7億人いるそうです。アメリカの2倍です。それほどのデータが毎日得られることで、AIの技術が進化していっています。

 電気自動車の台数も中国が圧倒的に米国を上回っています。自動運転でも中国の市場がアメリカを上回っています。規制が緩いということも技術の進展には優位です。

 ユニコーンと呼ばれる未上場で時価総額が10億ドル以上の企業では、上位20社のうち、アメリカが12社、中国が6社です。筆頭はTikTokを運営している中国のBytedanceで時価総額は約15兆円です。次に中国の配車サービスのDiDi Chuxingで5兆円くらいの規模です。中国の6社の時価総額の合計は、アメリカの12社の合計を上回っています。

 また、教育の分野も重要です。アリババの創業者のジャック・マー氏が退任して中国でAIを使った教育を始めています。コンピューターサイエンスの分野で世界のトップの大学は中国の上海にある清華大学です。

 この10年間の株価は、NASDAQとS&P500が優位でした。日本を除く先進国の株価指数である「MSCIコクサイ」のパフォーマンスも良かったのです。新興国の株価はこの10年間は良くありませんでした。しかし、これからの10年を考えると、新興国への投資比率をあげていく必要があるのではないでしょうか。5年、10年を考えた場合は、ポートフォリオの組み換えが重要だと思います。

図表2:主要株価指数の10年(年率)リターン

図表2:主要株価指数の10年(年率)リターン
  • 出所:モーニングスター作成
  • ※TOPIXは円ベース、上海総合は人民元ベース、その他指数は米ドルベース
  • ※各インデックスは配当無し指数
  • ※2020年8月末時点

 また、米ドルはこの数10年間は基軸通貨として重視されてきました。ドルインデックスは10数年単位で上昇・下降のトレンドを描いてきていますが、これだけ市場にお金が出回る過剰流動性の中で、やはり、通貨そのものの価値は減価します。ドル一強が崩れた場合は、円高になります。これまで、アメリカ株に投資して良かったというのは、原資産であるアメリカ株の値上がりに加え、円が安かったこともプラスに働いています。これからは、円高のリスクを考えていく必要があります。

 そして、通貨に対して実物資産である金や暗号資産などの価値にも注目していくことが大事です。過去、ドルが下落する局面で金が上がる、また、ドルが上昇すると金が下がるということがありました。ドルと金の相関は逆相関ですので、ポートフォリオに組み入れるのは相性がよいといえます。

ニューノーマル時代の資産配分

 日本の年金を運用している世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産配分は、国内株式25%・海外株式25%・国内債券25%・海外債券25%と非常にシンプルです。2014年までは国内債券が6割以上あり、海外債券も含めると債券が7割以上というポートフォリオでした。債券の期待収益率が大きく下がったため、2014年に株式の比率を上げました。

 現在のポートフォリオの期待収益率は4%です。リスクは12%ですので、シャープレシオは0.33です。極めて低い運用効率といえますが、この期待収益率4%は楽観的な見通しだと思います。国内債券の期待リターンを0.7%としていますが、もはや利回りはゼロ%です。海外株式で7%の期待リターンというのは、相当目標が高いです。2001年から運用してきて実際のリターン2.58%程度の利回りと考えましょう。

 その中で、公的年金のプラスαとして自分で運用していくことは大事になります。10年以上の投資期間があり、積立てで時間分散をし、高い収益を求めるのであれば、株式100%のポートフォリオを検討してください。この場合、これから10年、20年を考えて新興国の比率を40%程度にしましょう。新興国株式の現在の時価総額は世界全体の10%程度ですが、これからを考えると比率を上げた方が良いと思います。

 また、これまで債券7割で安定的に運用していた場合のポートフォリオは、株式を5割に増やしてリスクを取りましょう。リスクを高く取る分、投資期間は長く考えるようにしていただきたいと思います。債券部分は国債だけでなく、投資適格社債への投資を加え、金も加えましょう。どのタイミングでインフレになるかわからないので、その備えとして実物資産の金を持っている意味があります。

 現在、アメリカのETFが一気に伸びています。市場規模はアメリカだけで2,100本で450兆円の規模です。ETFは基本的にインデックス投資ですので、インデックス運用に資金がどんどん入っているということです。

 日本も同じです。日銀がETFを買っています。「黒田バズーカ」で年間1兆円、同3兆円、同6兆円と買い続け、この3月に同12兆円に増やしました。このような日銀の買いによって日本株式が支えられています。アメリカも日本もインデックス相場でした。

 GPIFの160兆円の運用資産の実際の運用状況をみると、全てがインデックスというわけではありません。国内債券の2割、国内株式の1割はアクティブ運用です。1割でも金額は大きいです。160兆円の4分の1は40兆円で、その1割ですから4兆円という規模になります。パッシブ運用は運用資産が大きくでも十分に吸収できるので年金資産など大規模資金の運用はインデックス運用が中心になりますが、それでもアクティブ運用を併用しています。インデックス運用とアクティブ運用は併用して良いと思います。

 S&P500とTOPIXを比較してみると、S&P500は、優れたインデックス構成になっています。時価総額61億ドル以上という結構な大型株式を対象とし、浮動株比率が50%以上、日々の売買に困らない流動性があり、IPO銘柄には上場後1年間は投資をしません。そして、赤字の会社は入ってきません。

 一方、TOPIXの採用基準は上場審査基準です。時価総額250億円以上ですが上場後に株価が下がって時価総額が250億円を下回っても問題ありません。現在は約2,100銘柄が対象になっています。単一市場で、これほど多くの銘柄を対象とした株価指数は、ほとんど例がありません。S&P500は500銘柄、NYダウは30銘柄、ドイツのDAXは50銘柄、英国のFTSEは100銘柄です。現在、時価総額100億円以下の銘柄が300社以上あります。100億以下でも東証1部に残っていれば赤字の会社でもTOPIXの対象で、インデックス運用で買ってもらえます。

図表3:日米の主要インデックスの違い

図表3:日米の主要インデックスの違い

 TOPIXは2,100銘柄も対象とし、成長企業だけでなく、自動車、商社、銀行など、また、公益企業のような安定した業績の企業も入っています。日経平均株価は情報通信やサービスの銘柄がけん引役です。30年、50年で比較すると日経平均とTOPIXでそれほど大きな差はありませんが、直近10年では明らかに日経平均が優位です。

 TOPIXには課題がありますので、個人の方々が国内株のインデックス運用をするのであれば日経平均を使っても良いと思います。また、「小型グロース」のアクティブは10年、20年ではインデックスを大きく上回ることができる魅力があります。国内株式への投資は、小型グロースだけでも良いと思っています。小型グロースだけではリスクが高いとお考えならば、日経平均やTOPIXと併用すればよいと思います。

 米国株式はS&P500が良い指数ですので、あえてアクティブに投資しなくても良いと思います。同様に、インデックスとして優れている先進国の「MSCIコクサイ」、そして、新興国の「MSCIエマージング」があります。「MSCIエマージング」は中国への投資比率が低いので、「中国A株」のアクティブファンドを入れても良いと思いますが、現在のところ「中国A株」ファンドはコストが高いので注意が必要です。

自分自身でファンドを選定する

 アクティブファンドを選ぶポイントは4つあります。(1)過去の運用実績、(2)ポートフォリオの中身、(3)純資産の規模と資金流出入の推移、(4)コストです。まず、比較する時は「アップル・ツー・アップル」、同じ種類のものを比べてください。国内株と中国株を比較してはいけません。同じカテゴリーで、トータルリターンやシャープレシオの高いものを、できるだけ長い期間で比較してください。

 ポートフォリオの中身も大事です。「エセ・アクティブ」といわれるようなインデックスと変わらないようなアクティブもあります。中身が同じであれば、コストの分だけアクティブが負けてしまいます。純資産は最低10億円行かないと償還されて運用が続けられなくなることがあります。また、国内の小型株ファンドで資産残高が1,000億円を超えるほどに大型化してしまうと運用が難しくなるという現実もあります。資金の流出入が凸凹しているとファンドマネージャーが運用に困ります。コストも高過ぎるものはダメです。

 バランスファンドも自分で決めてポートフォリオを作ることができます。たとえば、対面のラップ口座やロボアドバイザーを使うと相当の手数料が取られます。たとえば、対面ラップ口座は平均で2.96%です。ラップ口座で7割が債券のようなポートフォリオを運用していたら、3%も手数料を払っていたら収益はプラスにならないと思います。バランスファンドで低コストのファンドを選ぶと、信託報酬は0.15%~0.24%程度で運用ができます。株式が50%のもの、あるいは、株式30%のものなどがあります。

 世界の株式に投資する株式100%のポートフォリオの場合、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」などがあります。新興国株式10%、国内株式8%、米国株式54%の比率です。これで良いとお考えならば、これらのファンド1本で運用できます。コストは0.11%です。

 あるいは、個別ファンドを組み合わせて新興国株式を多く組み入れて、国内株式には小型グロース株のアクティブファンドを入れたポートフォリオを作ることもできます。このように組み合わせても加重平均でコストは0.28%でできます。このように自分でポートフォリオができれば、ラップ口座のように3%も手数料を支払う必要がありません。

図表4:中長期で高い収益を求める運用
積み立て(定時定額)投資で10年以上の投資
グローバル株式:100%

図表4:この文章はダミーです。

 バランスファンドでも、既存の株式50%のポートフォリオ「ダイワ・ライフ・バランス50」を選べばコストが0.22%です。ただ、これでは国内債券が40%を占めるため、もう少し国内債券の比率を下げたいです。また、最近は流行しているリスクを抑えた運用を行うファンドもあります。株式と債券への投資比率を機動的に変えるタイプの運用をします。ピクテ投信投資顧問の「クアトロ」、アセットマネジメントOneの「投資のソムリエ」は運用の実績もありますが、コストはそれなりに取られます。

 このバランスファンドも、自分で組み立てることができます。株式を50%にして、債券部分は為替ヘッジありのグローバル債券や投資適格社債、そして、金にも為替ヘッジをつけて投資するポートフォリオを考えました。

図表5:中長期で比較的安定した収益を獲得する運用
グローバル株式:50%、グローバル債券:20%、投資適格社債:20%、金:10%

図表5:この文章はダミーです。

 株式100%のポートフォリオは、成長をめざして長期・積立・分散で資産形成する目的で使っていただけると思います。一方、株式や債券などのバランス運用型のポートフォリオは、別に積立投資でなくとも利回りを上げていく運用として活用していただけます。

 ファンド選定と資産配分は自分で決めましょう。皆さん一人ひとり考え方も投資の目標もキャッシュフローも資産の規模も違います。一人一人のポートフォリオがあると思います。ぜひ、ご自身で納得のいくポートフォリオづくりに挑戦してみてください。

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