モーニングスターカンファレンス2021 イベントレポートモーニングスターカンファレンス2021 イベントレポート

掲載期間:2021年2月26日~2021年3月31日

特別講演

「金利なき世界」と「バブルの懸念」、難しい時代の資産運用の考え方

  • モーニングスター株式会社
    代表取締役社長 
    朝倉 智也

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水没する世界の金利

 世界の金利はゼロ%以下の水準に水没しています。アメリカ以外の日本、イギリス、スペイン、フランス、ドイツの5年以下の国債は全てマイナス金利です。日本は10年でようやくゼロ%金利です。フランスとドイツは10年でもマイナスです。ドイツは30年金利もマイナスです。米国だけが10年債で1%程度になって金利があります。

 世界の債券の25%がマイナス金利の中で、どうやって安定したポートフォリオをつくれるのでしょう。これまで、株式と債券の組み合わせが良いといわれてきました。株価が下がる時には債券が上がる。すなわち、金利が低下して債券価格が上がるのです。現在の水準から金利の低下には限界があります。アメリカはマイナス金利にはしたくないという考え方です。そうすると、債券価格の上昇という点では、これまでより限られてくると考えられます。ポートフォリオの中で債券が果たしてきたクッションの役割が効かなくなってくるということです。

 金利は過去30年間、ずっと下がってきました。これだけ金利が下がっているというのは、この間は債券価格が上がり続けたということです。債券の黄金時代といえます。これは、2008年9月のリーマンショックから金融緩和を続けてきた影響もあります。そして、コロナショックでさらに金融緩和をして、金利が低下してきました。

図表1:主要先進国の10年国債利回りの推移

図表1:主要先進国の10年国債利回りの推移
  • ※1992年1月~2020年12月(月次)

 もう一つ、金融市場を支えているのが量的緩和です。中央銀行が市場から国債やモーゲージ債、日銀はETFやREITも市場から買ってきました。リーマンショック後は536兆円の資産残高だったものが、今では2,355兆円と4.4倍です。これと同じように株価も上がりました。リーマンショック後の日経平均株価は7,000円でした。今は2万8,600円で約4倍です。資産残高と同じように株価も上昇してきました。株も不動産も債券も上がってきたのです。これだけ中央銀行が市場にお金を流し込みましたから、そのお金の行き場が株価や不動産、金、仮想通貨などに向かっているのです。

 昨年1年間の各資産の騰落率をみると、NASDAQ総合が43%、S&P500が16%、日経平均も16%上昇し、日経平均は30年ぶりの高値に値上がりしました。インド、ドイツ、ブラジルも史上最高値を更新しています。このような株高の中で、この水準はバブルなのでしょうか? 各種の指標から検証してみたいと思います。

対談用写真

モーニングスター株式会社
代表取締役社長

朝倉 智也

図表2:主要株価指数の2020年の騰落率

図表2:主要株価指数の2020年の騰落率
  • ※現地通貨ベース

 ファンダメンタルズに対して株価のバリュエーションを見るバフェット指数は歴史的な高水準です。経済状況は大恐慌以来の不況だといわれGDPも縮小しました。このGDPに対する株式時価総額の比率をみると、1を超えると株価が割高と判断されますが、2000年3月のITバブルの時には1.41でした。その半年後にITバブルが崩壊しました。そして、2007年6月に1倍を超えたときに2007年8月にパリバショックが起こりました。そして、2008年9月にリーマンショックを迎えました。今は、リーマンショックやITバブル以上の時価総額になっています。バリュエーションからみると、ずいぶん高いのです。

 また、ノーベル経済学賞をとられたロバート・シラー教授のシラーPER(CAPEレシオ)というのがあります。PER(株価収益率)は、企業の利益の何倍に株価が買われているかを示します。通常のPERは1年間の利益に対する株価を比較していますが、シラーPERは10年間の移動平均に対して株価を見ています。30を超えると危険水域だといわれます。ITバブルの時は44倍までいきました。リーマンショックの時には30に行く前に株価が崩れました。今は、30を超えています。

株価はバブルなのか?

 局所的には異常値も見られます。テスラはイーロン・マスク氏が創業し、電気自動車を製造販売しています。テスラの時価総額が80兆円を超えています。テスラの株価は1年間で10倍になりました。自動車業界の2位のトヨタからニーオやBYDといった中国の電気自動車メーカー、ダイムラーやGM、BMWや現代、フェラーリなど10位までの時価総額を足し合わせてもテスラの時価総額に適わないのです。テスラのPERは1,000倍を超えています。

 そして、テレワークで皆様も利用される機会が増えていると思いますが、ズーム(Zoom)の株価も昨年5倍になりました。PERは224倍です。シスコはWebex、マイクロソフトはTeamsというズームと同じような会議システムを提供し、それ以外の業務もやっていますが、シスコやマイクロソフトと比較するとズームのPERはずいぶん高いです。

 また、エアビーアンドビーは日本では規制の関係もあって大きくなっていませんが、世界ではルームシェアで大きく展開しています。このコロナ禍の中でも昨年12月に上場を果たしました。この会社の時価総額も10兆円近くになっています。マリオット、ヒルトン、インターコンチネンタルという世界の最高級ホテルを3つ足し合わせた以上の時価総額です。

 ビットコインは1年間で価格が5倍になりました。特に、昨年12月から3週間で価格が2倍になっています。ちなみに、ビットコインの時価総額は、ビザやマスター、JPモルガンなどの世界的な大手金融機関よりも大きくなっています。

 これらの事例は、特に悪いという意味ではありません。時代の潮流に乗っているということですし、次世代の技術、次世代サービスであることは間違いないと思います。しかし、株価のバリュエーションで考えると、あまりに割高なものを追いかけることには注意が必要です。長期で考えていただきたいと思うのです。

 バブルが生まれる条件は、いろいろあります。たとえば、金融緩和によって過剰流動性が生まれると市場にどんどんお金が入ってきてお金がジャブついてしまいます。リーマンショック後の金融緩和・量的緩和で市場に多くの資金が流れ込んでいます。

図表3:バブルが生まれる状況

図表3:この文章はダミーです。

 そして、短期的な、投機的な動きが起こっています。今のように、テスラやビットコインの動きなど、短期的な値動きで売買を繰り返すようなことが起こっているのであれば、それはバブルにつながります。アメリカにロビンフッドというサービスがあり、手数料無料で売買ができるため、アメリカで若い方々が投機的な株式の売買を行っているようです。ロビンフッドは未公開企業ですが、既に時価総額は10兆円程度に評価され、今年は株式を公開するのでないかといわれています。

 バブルの時には新しい金融の仕組みが生まれるという傾向もあります。アメリカでは「SPAC(特別買収目的会社)」ができています。自らは事業を行っていないペーパーカンパニー(空箱)が上場し、その箱の中身は分からないのです。買収をすることによって、その中身が分かります。上場した時には、その会社が何を買収するつもりなのかわかりません。このようなブラックボックスのような取り組みが出てくると、バブルの兆候といえるでしょう。

 また、大きな社会の変革期にもバブルの兆候が表れます。ITバブルの時もそうでした。インターネットという革命が起こって株価が大きく値上がりました。現在、ブロックチェーン、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などといった技術革新があって、ニューノーマルの時代などといわれます。このような時に、良くいわれるのが、「今回は違う」ということです。だから、バブルではないといわれます。しかし、余りにも行き過ぎたバリュエーションは、必ずどこかで修正が起こります。PER500倍、1,000倍という株価は、500年先、1000年先の利益まで株価が織り込んでいるということです。それが妥当なのかということを冷静に判断する必要があると思います。

 「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」という相場格言があります。今は陶酔といえる状況ではないと思います。シティグループのチャップ・プリンスさんが、「音楽が鳴りやむまでは踊り続けなければならない」と言っています。機関投資家はそうなのです。個人投資家は踊り続ける必要はありません。機関投資家はまわりを見て、他に負けたくないと思います。市場が上がっていると、「他が儲かっているのに、なぜ置いて行かれているのか」といわれるのが怖いのです。ですから、テスラやズーム、エアビーアンドビーも買うということになります。しかし、皆様は違います。大切な資金ですから、慎重に運用することが大事です。

これからの資産運用の考え方、長期・積立・分散投資

 では、このような中でどうすれば良いのでしょうか。現在の実質金利の状況では、資産運用をしないとお金は増えません。実質金利とは、名目金利に対して消費者物価指数を引いた指数です。預金金利が0.001%で、物価が0.1%だったら、お金は増えません。日本は現在0.4%です。消費者物価がマイナスなので、実質金利ではプラスに働いています。一方、アメリカやヨーロッパは、それなりに物価が上がっていますので、実質金利はマイナスです。ですから、アメリカやヨーロッパでは投資にお金が回っています。

 日本とアメリカの実質金利は、ここ半年くらいの間で反対の動きをしています。アメリカの方が実質金利が高い状態が続いていたのですが、この半年くらいでは日本の方が高くなっています。この影響もあって、為替も円高の方向に動いています。

 日本の投資家は、日本だけではなく、アメリカ、新興国、ヨーロッパ、アジアの株式や債券など、グローバルにアセットアロケーションをしていかなければなりませんが、為替を考える必要があります。為替リスクのコントロールが大事です。株式は長期の目線で考えると、為替の円高リスクをカバーできるリターンが期待できると思います。債券は、為替ヘッジをしていかなければならないと思います。今は、為替ヘッジコストも低くなっています。

 ドルが主要通貨に対して高いか安いかを示すドルインデックスは、2000年からリーマンショックまで、ドルが安くなっていました。リーマンショック後に、アメリカ国債の格下げがあった後にドルが上がり始めました。そして、実質金利が日米で逆転したタイミングでドルインデックスも下落しています。バイデン氏の200兆円の財政出動を公約は、米国債を発行することに直結します。国債がジャブジャブに出てくると、国債が売られてしまう。このことによってドルが売られているという見方もあります。

 今後は、米国でインフレも進むでしょうから、実質金利は日本が高い状態が続くのではないかと思います。これが円高リスクになるのではないかと思っています。アメリカは、新たに200兆円が加わると、これまでのコロナ対策費と合わせて500兆円になります。アメリカのGDPの25%に相当します。それだけ多くの資金を市場に流しているということです。

 円高リスクを意識すると、円と人民元との関係では人民元は円に対して高くなっています。中国の5年債や10年債の利回りは3%程度になっています。先進国の中では、アメリカは唯一利回りが高く、10年債で1%程度です。ファンドとして中国の債券に投資するファンドを出していただきたいくらいです。中国の国債に投資するファンドはあるのですが、信託報酬が1.4%の手数料がかかって、3%の利回りで1.6%しか残りません。信託報酬が0.3%程度であれば、中国の債券に投資する人は結構いると思います。

図表4:米ドル、中国人民元に対する日本円の推移

図表4:米ドル、中国人民元に対する日本円の推移
  • 出所:ブルームバーグ
  • ※2020年1月1日~2020年12月16日(日次)

 世界の国債市場は、アメリカが一番大きいです。2番目は中国になりました。2018年に日本の国債市場を中国が抜いています。世界の国債インデックスに今年の10月から中国国債が組み入れられます。これによって1500億ドル、約16兆円が一気に中国国債市場に流入すると見込まれています。中国の債券や株式の市場の強さは無視できません。中国人民銀行は世界の中央銀行の中で最初にデジタル通貨を出してくると思われます。来年の冬季オリンピックは北京です。その時に中国のデジタル通貨を世界中の人々に使ってもらおうと計画していると思います。

 為替ヘッジをした世界の国債ファンドと、同じく為替ヘッジをした世界の投資適格債ファンドを比較すると、過去3年トータルリターンは3%程度でほとんど変わりません。ただ、現在の債券利回りをみると、世界国債ファンドの最終利回りは0.27%しか出ません。これを為替ヘッジするとゼロ%以下になってしまいます。投資適格社債で運用するポートフォリオの最終利回りは1.38%です。為替ヘッジをしても1%程度の利回りが残ります。

 世界経済の見通しは、2020年にプラスの経済成長を遂げた主要国は中国しかありません。2021年の見通しは、中国が7.9%、インドが5.4%です。日本は低く2.5%と予想されています。グローバルなアセットアロケーションが重要です。

図表5:世界経済の成長見通し

図表5:世界経済の成長見通し
  • 出所:世界銀行

 先進国と新興国の経済は、21年は大幅に回復するとみられていますが、感染拡大が止まらない、変異種が蔓延するなどということになれば、マイナス成長が継続することもあり得ます。ただ、そういう最悪を考えても、新興国は資産運用には欠かせない市場といえます。

 2030年には中国はGDPで米国を抜きます。この米中逆転の時期は早まると思います。ユニコーンといわれる未上場で時価総額が10億ドル以上の価値がある企業で、上位20社に日本企業はありません。中国が8社で米国も8社です。トップはTikTokを運用しているバイトダンスで1400億ドル、14兆円以上の価値があるといわれています。2位が中国のウーバーといわれるDiDiです。AI、ビッグデータ、電気自動車、シェアリングなどはアメリカを中国が凌駕しています。

 リープフロッグ(カエル跳び)といわれますが、中国でキャッシュレス決済が広がったのは、固定電話のインフラが普及していなかったところにスマートフォンが急速に普及したためです。日本は、国中にたくさんの銀行の支店があり、ATMがたくさんあり、送金サービス・口座引き落としも便利にできるのですが、中国には、そんなシステムやサービスがまったくないので、モバイルPayサービスが一気に広がりました。このようなリープフロッグができるのが中国の市場です。

 世界の大学ランキングは、日本の東京大学、京都大学を超えて、中国の精華大学や北京大学がランクインされています。コンピューターサイエンスの大学ランキングでは精華大学がトップです。

 これだけ中国のポテンシャルは高いのですが、株価の推移を振り返ると過去10年間でアメリカは3倍程度に値上がりし、日本が2倍になっているのに、中国は24%しか値上がりしていません。バリュエーションからみても割安です。

 これからの資産運用の考え方ですが、安定性を重視するのであれば、従来はバランス型のポートフォリオで債券が7割、株式が3割のポートフォリオが基本でしたが、金利が低下して期待収益率が下がったため、債券5割、株式5割で考えましょう。中長期で高い収益を求める場合は株式100%で良いのではないかと考えます。ただし、積立投資で時間分散をしましょう。

 そして、債券は為替ヘッジも組み入れて為替リスクを取らないように運用します。また、株式については、中国を中心にした新興国の組入比率を高めにします。グローバルな資産のアセットアロケーションをしていきます。

図表6:これからの資産運用の考え方

図表6:これからの資産運用の考え方
  • 出所:世界銀行

 積立投資で長期分散が基本です。もちろん、2年間でNASDAQが8割も上昇しましたので、2年前にNASDAQに一括投資した方が、積立投資よりも良い成績になりました。その通りです。それは結果論です。投資をしていると人間の心理が影響します。2年間で8割も上がる中、その間、ずっと持ち続ける勇気と忍耐力があるでしょうか。ビットコインは1年で5倍、テスラは10倍になりました。あくまでも、これは結果です。10倍あがるまで持ち続けた人がとれだけいるでしょう。この過程で損をした人もいると思います。しかし、積立は高値安値をあまり気にせずに投資ができます。皆さんの大事な資金ですので、軽々に一括投資で短期の収益を狙うというようなことはしないで、コツコツ積立で長期に安定的に資産を増やした方が良いと思います。

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