三菱UFJ信託銀行オンラインセミナー レポート三菱UFJ信託銀行オンラインセミナー レポート

掲載期間:2021年3月5日~2021年4月4日

第2回

信託銀行が教える!!
貴金属ETFをどう活かす?
~40年ぶり高値更新!金相場の行方~

  • マーケットアナリスト
    豊島 逸夫氏
  • 三菱UFJ信託銀行
    証券代行部 海外業務推進室 調査役 
    林 恒氏

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2,000ドル超えの金価格、今後を展望するための3つのポイント

林氏:
金価格は国内では2020年夏に40年ぶりの高値を更新し、ニューヨークでは一時2,000ドルを超えました。現在は、少し価格が調整しているところですが、今後について考えてみたいと思います。
今後の動きを考える上で、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)」「需給」「バリュエーション(価格水準を含む)」の3つの側面から考えます。
対談用写真

三菱UFJ信託銀行
証券代行部 海外業務推進室 調査役

林 恒氏

「ファンダメンタルズ」とは、あるものを取り巻く環境のことです。株価であれば、景気、小売売上高、雇用統計などになりますが、金については、「金利」、「通貨」、そして、「物価」が大事な要素になります。

まず、金利は、コロナ禍で世界中が金融緩和を強力に行っています。そのため、世界の国々で国債の金利も非常に低いものになり、中には、マイナス金利の国もあります。金にとって一番の大敵は金利だと考えています。金は原則、配当や利息を生み出しません。金利が高いと、金の魅力が薄らいでしまいます。現状は世界の金利はものすごく低い水準ですから、金の魅力が高まっている状態になっていると考えます。

豊島氏:
安全な資産というと、まず皆さんは預金、国債を思い浮かべると思います。ところが、今は、国債を持っていると日本では金利がほとんどつかなくて、ヨーロッパでは逆に金利を取られてしまうマイナス金利です。景気が悪くても多少は物価が上がっている状況ですから、国債を持っているだけでは、少しずつ価値が目減りしてしまう状態です。銀行預金も同じことがいえます。
一般的に困惑するのは、従来の金利がもらえない、場合によっては、金利をこちらが支払わなければならないところです。一方で、金は少なくとも、それを持っていて物価上昇によって目減りする可能性は低いですから、国債や預金と比較すると、将来を考えた時に金の方が安定感があるというところが今、金利に関して金のメリットと言えるのではないでしょうか。
林氏:
金利面では低金利政策はしばらく続きそうですし、まだまだメリットを受けられる環境だということですね。

忘れられている「インフレ」のリスク

豊島氏:
最近は株価も上がっています。これだけ株価が上がってくると、資産効果といって、なんとなく株式投資をしている人を中心に懐具合が良くなってきます。これまで下がりっぱなしだった物価が少し上がってくるのではないかと心配する人も出始めてきます。これまでは、金利の議論の中で、インフレのことは心配する必要がないということでしたが、株価が上昇したことで、少し様子が変わってきていると思います。この辺は、コロナ禍の中でなぜ金価格が上がっているのかということの核心だと思っています。
林氏:
通貨については、金の価格の推移とドルインデックス(米ドルに対して他の通貨との強弱感を表す指数)との推移を重ねてみると、金価格が上昇するとドルインデックスは下落しています。2015年から2021年はドルが安い局面が続いています。この5年間くらいは、トランプ大統領になって、大変予測のし難い、分かりにくい環境にありました。その環境下では、世界の基軸通貨といわれる米ドルであっても、ドルを購入しようという気持ちにはなれなかったのではないでしょうか。この米ドルに対する不信感も、米ドルの対極にある金価格が値上がりした要因の一つと考えられます。
豊島氏:
金を買うということは、米ドルに対する不信任票を投じることと言い換えることもできます。金はドルの代替通貨であるともいわれます。また、ドルや円、ユーロといった普通の紙幣や貨幣は、印刷して作ろうと思ったら、いくらでも印刷できます。今まさに、コロナ禍の真っ只中で、日本やアメリカ、ヨーロッパの中央銀行は大胆な量的緩和を実施しています。どんどん紙幣を印刷していますから、1万円札の価値、購買力がどんどん衰えていくように感じるのではないでしょうか。中央銀行が新たに印刷できる円やドル、ユーロなどに対して、印刷できない金は、量的緩和でドルの価値が薄まっているからこそ、今、改めて価値が見直されているのだと思います。「刷れる紙幣、刷れない金」です。
林氏:
ファンダメンタルズで、金利、物価、通貨という側面から話をしましたが、金利はなかなか上がりそうにありませんね。
豊島氏:
私は1970年代に原油価格が高騰してトイレットペーパー騒動があったことを覚えています。お金を持っているより、モノを持っている方が良いということになって、モノの値段がどんどん値上がりしました。同じ1万円でも、モノの値段がどんどん上がると、1万円で買えるものがどんどん少なくなっていったのです。50歳代以上の方々には、インフレという言葉に反応されますが、40代より若い世代の方は、インフレや物価上昇について経験がなくて、状況を想像できないようです。ただ、さすがにこれからは、インフレについて意識した資産設計を考える必要があると思います。今年、来年ということではなく、5年、10年、20年という自分の老後を考えると、インフレは考えるべき時期だと思います。
林氏:
ファンダメンタルズ全般的には、金にとっては、向かい風というより追い風と捉えて良いということですね。
豊島氏:
世界的な傾向でいうと、「金(ゴールド)を持っていないとヤバイ」という考えの人が、この1年、2年で増えてきました。3年くらい前は、金の話など聞いてもらえなかったのですが、この1-2年は金の話に身を乗り出して聞いてくださる方が増えています。金が1つのアセットクラスとして再認識されているということだと思います。

アジアの「金の文化」と中央銀行による金の購入

林氏:
金を考える2つ目のポイントである「需給」については、一時期は中国、ロシア等の中国銀行中央銀行が購入しているという話題がありましたが、この1-2年はそのような話も聞こえてきません。現状はいかがでしょうか?
豊島氏:
金の購入については、中国、インド、中東の需要が旺盛です。中国人やインド人の方々は、金が大好きです。誕生日や祝い事など、高揚感のある時に、その記念に金を買っておく習慣があります。日本には、このような習慣はありません。インドでは結婚する時の持参金が、文字通り、金(ゴールド)なのです。20万円から30万円相当の金のジュエリー一式を嫁ぐ娘に持たせます。インドは100円ショップの代わりに、2円ショップがあるという国ですから、インドの所得、生活水準で20万円というのは大変な金額です。このような金の文化があります。
中東のドバイは都市国家ですが、そのキーワードが、「シティ・オブ・ゴールド」です。実際に、ひとつの商店街の全部の店がゴールドショップというところがあります。ドバイは国際都市ですから、中央アジアから北アフリカまで、いろいろな国の人たちが集まって来ます。その中で、皆さんが共通の価値があると認めているのが金です。時代を超え、民族を超え、国境を超えて国際都市国家であるドバイで金が活発に売買されるというのは理由があります。
ドバイにたくさんあるゴールドジュエリーショップには、必ず試着室があります。日本ではアパレルショップには試着室がありますが、金の指輪やアクセサリーを買うのにカーテンで仕切られた試着室があるのは変ですよね。ところが、イスラム教では女性が肌を見せられないので、ネックレスを選ぶのに、試着室でヒジャーブというスカーフを脱いで身に着けてみるのです。日本人の感覚としては、金のネックレスなどは、外から見えるように身に着けるものだという感覚ですが、イスラムの方々は宗教的な感覚で見せられないのです。それでもなぜ金を購入するのかということを聞いてみたところ、「金が好きだから」という答えでした。金を身に着けることによって満足感があるのだそうです。日本人には理解できない感覚ですが、これが“中東の金の文化”だとしか言いようがありません。
対談用写真

マーケットアナリスト
豊島 逸夫氏

中国、インド、中東の3つの地域で金の需要の大半を占めます。2019年までの統計では、年間生産量が3,000トン~3,300トンありますが、中国、インド、中東の3地域の合計で少なくとも半分は購入してしまいます。価格が安い年には70%くらいを3地域が買い占めてしまいます。
そして、リーマンショック後に新たな需要家として出てきたのが中央銀行です。外貨準備として金を買うようになりました。1990年代は、金には金利もつかないので、有事の備えとしては米ドル(米国債)で十分という考えでした。そのため、1990年代は外貨準備の金を売却していました。その結果、1999年には金の価格は250ドルまで下落し、金価格が200ドルを割れるのではないかといわれていました。ところが、リーマンショックが起こると、量的緩和でどんどん米ドルを印刷することを目のあたりにして、外貨準備として米ドル(米国債)だけで良いのかという議論になり、中央銀行による金の購入が始まりました。現在では、中央銀行による金の購入量は年間500トン程度になっています。中央銀行は外貨準備として金を購入していますので、一度買った金を簡単には売却しません。これが金の需給で相当なインパクトになっています。中央銀行が金を購入すれば、その分、金の価格が上昇する要因になります。
また、量は年間400トンくらいなのですが、スマートフォンやパソコンなど電子機器の部品として金が使われています。プラチナなどと同じように産業用の需要が底堅いものがあります。
ただ、金の需給にはマイナス要因もあります。それは、金は腐食しないので、古代エジプト時代以来生産されてきた金が、現在でもどこかに残っているのです。今のように金の価格が大きく上昇すると、リサイクルショップなどを通じて売却され、還流してきます。リサイクルの還流によって供給が増えるのです。私は、将来金価格は一段と値上がりして3,000ドルになってもおかしくないと思っていますが、その過程では大量の還流してくる金も出てくると思っています。したがって、一本調子に金の価格は上がるものではないと思っています。

現在の金価格は割高ではないか?

林氏:
最後に価格水準を含めたバリュエーションについて考えます。2006年秋から現在までの価格を見ると、金の価格は上昇し、過去最高値の水準に来ています。これほど値上がりした金は、ここから買っても大丈夫でしょうか?
豊島氏:
株式投資をしている方から良く聞かれるのは、「金のPERは今いくらですか」という質問です。PERは、何か生み出すものがあって初めて計算できる概念です。金は何も生み出しませんので、株式投資家の方が戸惑う側面です。金の値段は株式などと比較しても今、圧倒的に価格の上昇率が大きくなっています。それだけに、金は割高なのではないかといわれるのです。
金には金独自のバリュエーションがあります。たとえば、金は株式と比較して底割れするようなことはありません。金の割安・割高を測る指標の1つに「生産コスト」があります。金は地下1,000メートルから2,000メートルというところから採掘します。しかも、1トンの金鉱石を採掘して金は2グラムしか含まれていません。今の生産コストは1,000ドルを割る水準です。したがって、金価格が1,200ドルくらいに下がってくると、生産コストの高い金鉱山は生産を減らすか、閉山します。したがって、生産コストを割り込むほどに金価格が下がることは極めて考えにくいのです。
反対に何処まで上がるかということですが、これは量的緩和でどれほどお金がばらまかれるかによると考えています。中央銀行の日銀も米国FRBも欧州ECBも、国債を市場からどんどん買って保有資産が膨れ上がっています。今もコロナ禍を克服するために、“できることは何でもやる”という姿勢を明らかにしています。ここまで金価格が上昇してきた背景は、中央銀行が歴史的に考えられないほどの通貨の増発をしてきたことが背景です。
アメリカの中央銀行にあたるFRBの資産規模は、コロナ前は3兆ドルくらいだったのですが、今は7兆ドルです。場合によっては、今後10兆ドルになるといわれています。今後、中央銀の資産規模がどれだけ拡大していくかが金価格の目安になっていくといえます。中央銀行がどんどん国債を買い入れて資産規模を膨らませているのに金価格が動いていなければ、金は割安ということになるでしょう。今後は、中央銀行の金融政策を見ていくことが重要です。
現在、アメリカは対コロナ救済政策として民主党が1.9兆ドルの追加予算を議論しているところですが、この財政政策で増発する国債を誰が買うのかという問題があります。FRBはやれることは何でもやるといっています。FRBのバランスシートが一段と拡大するのであれば、金価格が一段と上昇してもおかしくないと思います。

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