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アナリストの視点(ファンド)

インベスターリターン
〜投資家は期待した収益を得られているのか?〜

2008-01-28

 通常、ファンドの収益を表すのはトータルリターンという指標です。しかしながら、投資家が実際に手にしたリターンは売買のタイミングによって異なります。そこで投資家が得た平均的なリターンを表す指標としてインベスターリターンというものがあります。インベスターリターンは、金額加重リターンとも言われ、ファンドに資金が流入した時期の比重を高く、資産が流出した時期の比重を低くしています。あるファンドが多額の資金をひきつけると、流入後のパフォーマンスが金額加重収益率に与える影響は流入前のパフォーマンスよりも大きくなります。一時期、大きくパフォーマンスを上げた国内小型株式ファンドや最近の新興国株式ファンドなどリターンの高さが注目されてから、資金流入が増加した場合にはトータルリターンとインベスターリターンの差は大きくなるものと考えられます。今回は資金の流出入を加味したインベスターリターンを算出することで、投資家が得た平均的なリターンとトータルリターンと比較してみます。

 ここで用いるインベスターリターンの定義ですが、期中の月別のキャッシュフローを考慮して、期初の純資産残高が期末の純資産残高に到達するように計算されたリターンをインベスターリターンと定義します。

 モーニングスターの大分類である「国内株式型」、「国際株式型」、「国際債券型」の3つの分類における、2001年から2007年のトータルリターン、インベスターリターンおよびリターン差を示したものが図表(1)になります。リターン差を見ると国内株式型の場合はインベスターリターンとトータルリターンの差はあまり大きくありません。自国のマーケットの場合、平均的に見れば売買のタイミングで大きな損失を出すということは少ないのかもしれません。次に国際株式型ですが2005年にインベスターリターンがトータルリターンを13.59%上回る一方で2007年には11.61%下回りました。インベスターリターンとトータルリターンの差は価格変動に大きな影響を受けますが、2007年のインベスターリターンが低いのはサブプライムローン問題以降のマーケットのボラティリティが上昇したことと無縁ではないと考えられます。国際債券型の場合は多くの年でインベスターリターンがトータルリターンを下回っていますが、資金流入タイミングよりパフォーマンスのよい時期が先行している状況が続いているものと考えられます。



図表(1)・年別インベスターリターン

国内株式型 国際株式型 国際債券型
インベスター
リターン
トータル
リターン
リターン差 インベスター
リターン
トータル
リターン
リターン差 インベスター
リターン
トータル
リターン
リターン差
2001 -22.82% -22.32% -0.49% -14.07% -15.85% 1.78% 12.21% 10.63% 1.58%
2002 -17.76% -19.47% 1.71% -27.95% -28.14% 0.18% 10.69% 3.16% 7.53%
2003 25.83% 28.73% -2.90% 35.46% 30.90% 4.57% 1.31% 0.91% 0.40%
2004 14.00% 10.29% 3.71% 10.56% 6.34% 4.22% 4.33% 5.28% -0.95%
2005 49.17% 47.30% 1.88% 35.83% 22.24% 13.59% 6.45% 10.20% -3.75%
2006 -1.66% -0.32% -1.34% 36.93% 37.13% -0.20% 2.79% 7.45% -4.66%
2007 -13.02% -11.73% -1.30% 0.18% 11.79% -11.61% -1.26% 4.24% -5.50%
(出所)モーニングスター、トータルリターンはモーニングスターカテゴリーインデックスを使用。
トータルリターン、インベスターリターンともに分配金再投資後。




 インベスターリターンとトータルリターンの差は年によって、また資産クラスや投資対象地域、規模によって異なりますが、基本的には価格変動の大きい場合にインベスターリターンがトータルリターンを大きく下回る傾向にあるようです。国内小型株式の中でも過去5年間で最も成績のよかったバリュー型のファンドの場合、2004年にトータルリターンが22.13%だったのに対してインベスターリターンは9.12%とインベスターリターンが大きく下回っています。

 このように投資のタイミングによって得られる収益は大きく異なります。自身のポートフォリオのリターンをトータルリターンにより近づけるにはやはり長期保有というスタンスを堅持することが一番の近道であるといえます。投資家はしばしば自身の投資方針に過剰な自信を抱きがちですが、その多くは単純なバイ・アンド・ホールドの戦略を下回るリターンしか得られないというのが現実のようです。


( 加藤 信之 )


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