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アナリストの視点(ファンド)

ブラジル株式ファンドの動向

2008-06-16

2008年4月30日、格付け会社のスタンダード・プアーズはブラジルの外貨建て長期債格付け(ソブリン格付け)を「BB+」から投資適格級の「BBB−」へ格上げしました。同じく格付け会社のフィッチ・レーティングスも5月29日、同格付けを、投資適格級の「BBB−」に引き上げています。この2大格付け会社の発表を受けて、ブラジル株式市場では上昇トレンドが継続しました。債券市場もこの発表を好感、今後は長期運用資金がブラジルに流入することが予想され、ブラジルへの関心が高まっています。そのような中、個人投資家がブラジル投資を行う場合の選択肢の一つは投資信託を利用することです。今回はブラジル株式に投資するファンドの動向について調べてみました。

 モーニングスターが評価対象としている国内追加型株式投資信託2554本の中で、実質投資対象を主に「ブラジル株式」とするファンドは5本。注目が集まってきたとは言え、まだまだ少ない数です。しかし、純資産額の推移(図表1)では、拡大傾向が顕著となっています。日本で初めてブラジル株式に投資するファンドが設定されたのは2006年3月。その時の純資産額は155億円程度ですが、2008年11月からは相次いで新規ファンドか設定され、2008年5月には約3326億円まで純資産残高を増やしています。ブラジル投資への人気の高まりに加え、堅調なブラジル株式市場の動きを反映した純資産の推移と言えるでしょう。


(図表1)ブラジル株式を投資対象とするファンドの本数と純資産額推移

(図表1)ブラジル株式を投資対象とするファンドの本数と純資産額推移


※モーニングスター調べ


 ブラジル株式市場はサブプライムローン問題を発端とした金融システム不安による世界株式市場の混乱の影響は受けたものの、その後(2008年3月中旬以降)の戻りは素早いものでした。サンパウロ証券取引所の主要株価指数であるボベスパ指数も既に昨年来高値を更新。指数の推移(図表2)を見ると、2007年 02月の中国株安の影響が波及した急落や、米国経済の減速懸念による同国株式市場下落にツレ安した2008年1月など、短期的に相場が乱高下する場面がいくつもあったことが分かります。しかしながら、中長期的には上昇傾向で推移しました。インフレ圧力抑制政策や、他国金融市場の動向による短期的な市場調整局面には十分注意が必要ですが、豊富な天然資源や水力、バランスの取れた産業構造を背景としてブラジルの経済は今後も発展が見込まれています。それに伴ってファンドのパフォーマンスも中長期的には好調に推移することが期待されます。


(図表2)ボベスパ指数の推移

(図表2)ボベスパ指数の推移


※出所ブルームバーグより、モーニングスター作成


ブラジル株式ファンドのラインアップ

ファンド名 運用会社 基準価額(円) 純資産額(百万円) 最小申込単位(円) 信託報酬率合計_税込 トータルリターン 標準
偏差
1年
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
HSBC ブラジルオープン HSBC投信 16,791 157,279 10,000 1.995 17.25 10.19 6.38 14.25 57.57
BNPパリバ・ブラジル・ファンド(株式型) ビー・エヌ・ピー・パリバアセット 10,926 112,290 100,000 1.785 17.73 9.97 16.57    
クレディ・スイス・ブラジル株式ファンド クレディ・スイス投信 11,348 27,457 500,000 1.995 16.12 9.10      
UBS ブラジル株式ファンド ユービーエス・グローバル・アセット 13,026 23,152 10,000 1.869 16.23        
ダイワ・ブラジル株式ファンド 大和投信 12,630 12,435 10,000 1.764 16.03        



 さて、実際のブラジル株式ファンドを見る場合、それぞれのポートフォリオに注目してみます。同じ「ブラジル株式」でもそれぞれの組入れ銘柄には違いがあり、それは今後の運用成果に影響するため、投資家自身の見通しと投資スタイルに一番最適なファンド選択へのキーポイントとなるからです。
 まず、一番歴史の長いHSBC ブラジルオープンは現地主義のアクティブ運用が特徴です。組入れ銘柄トップは穀物及び消費財の鉄道輸送が本業の「ALL AMER LATINA」(約9%)、次に比率が多い「JBS」(約8%)は食肉加工やその運送がメイン、約7%を組入れる「DURATEX」は木材、真ちゅう、タイルの製造や家具デザインを手掛ける企業など、消費財関連の中小型株の割安感に注目したポートフォリオとなっています。したがって、サブプライムローン問題を発端とした世界市場の混乱によるリスク回避志向から、ブラジル株式市場でも流動性の高い大型株に投資が集中した直近半年間は相対的にパフォーマンスが劣後していますが、直近では巻き返しており、中長期的な投資成果に期待したいファンドです。BNPパリバ・ブラジル・ファンド(株式型)は石油生産の「PETROBRAS」(約17%)、鉱山会社の「CIA VALE RIO DOCE」(約17%)、製鉄会社の「GERDAU」(約6%)等、エネルギーと素材関連株の比率が高いファンドです。石油や鉄鋼などの世界的な商品価格の動きに強い影響を受けると言えます。実際に、エネルギー価格の上昇を受けた直近半年は好パフォーマンスとなりました。クレディ・スイス・ブラジル株式ファンドのポートフォリオも特徴があります。組入れ1位の「BANCO BRADESCO」(約10%)を筆頭に商業銀行や投資会社の割合が高めです。他にも、新日鉄が出資を行った鉄鋼メーカー「USIMINAS」(約7%)などが組入れられています。UBS ブラジル株式ファンドの組入れは前述したBNPパリバ・ブラジル・ファンド(株式型)と似ておりエネルギーと素材関連株の比率が大きくなっています。ダイワ・ブラジル株式ファンドもエネルギー・素材関連の組入れが多い組入比率でした。もっとも、各組入比率は変化してゆく為、定期的なチェックは重要となります。

 さらに、参考図表として「ブラジルの債券を組入れるファンド」や「ブラジルを含むラテンアメリカ株式を対象とするファンド」のラインアップも挙げています。リスク許容度が低い投資家はブラジル債券を組入れるファンドを視野に入れてみるのも良いかもしれません。


参考:ブラジルの債券を組入れるファンド

ファンド名 運用会社 基準価額(円) 純資産額(百万円) 最小申込単位(円) 信託報酬率合計_税込 トータルリターン 標準
偏差
1年
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
BNPパリバ・ブラジル・ファンド(バランス型) ビー・エヌ・ピー・パリバアセット 10,639 35,819 100,000 1.785 12.04 6.62 12.23    
クレディ・スイス・ブラジル債券ファンド クレディ・スイス投信 10,134 21,562 500,000 1.68 5.38 2.01      


参考:ラテンアメリカ株式を対象とするファンド

ファンド名 運用会社 基準価額(円) 純資産額(百万円) 最小申込単位(円) 信託報酬率合計_税込 トータルリターン 標準
偏差
1年
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
シュローダー・ラテンアメリカ株投資 シュローダー証券投信 10,576 201,946 10,000 2.0265 14.21 7.37 9.40    
ブラックロック・ラテンアメリカ株式ファンド ブラックロックジャパン 12,683 11,302 10,000 1.9845 12.55 9.12 11.01 17.60 46.31
※モーニングスター調べ


 なお、ブラジル株式ファンドは短期的な値動きの幅が大きいため、長期的なスタンスを持つ事が必要です。地域分散または他の資産とのバランスや、時間分散に留意しながら投資を行うことも肝要。その上では、HSBC ブラジルオープンUBS ブラジル株式ファンドダイワ・ブラジル株式ファンドなど、最小申込単位の小さいファンドも注目です。


( 石倉 麻美 )



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