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アナリストの視点(ファンド)

日米のファンドコスト比較

2009-04-30

投資信託を保有する際、継続的にかかるコストが信託報酬です。長期保有を行ううえで、継続的にかかるコストは、運用成果にも大きな影響を与えます。米国においても、エクスペンスレシオという形で、ファンドを運営するために継続的に徴収される費用があります。今回は日本の国内株式ファンドの信託報酬等(税込み)(モーニングスターでは信託報酬に監査報酬などを含めた保有期間中にかかるコストの総額を「信託報酬等」として表示)と米国の国内株式(米国株式)ファンドのエクスペンスレシオ(直近アニュアルレポートに基づく実績数値)を比較してみます。

 まず、(図表1)を見ると、日本においては単純平均、加重平均ともに年々、上昇傾向にあります。特に加重平均は1998年から1999年に急上昇しています。これは1998年以降、外資系委託会社を中心としてアクティブ運用の日本株ファンドが多く設定されたためです。(モーニングスターでは運用報告書のデータを基に分類を行うため、設定から1年ほどを経て、反映されています。つまり、1998年設定のファンドのデータは1999年以降に反映されます。)具体的には、「アクティブ・ニッポン」、「日興 ジャパンオープン」などの信託報酬が1.5%を超えるファンドの1999年の平均純資産額は1,000億円を超えており、加重平均を引き上げる要因となりました。2000年、2001年も「フィデリティ・日本成長株・ファンド」、「ノムラ 日本株戦略ファンド」などのアクティブファンドが純資産額を大きく増やしたことで、加重平均が引き上げられました。また、2000年に「デジタル情報通信革命」、「日興 エボリューション」、「小型ブルーチップオープン」など、業種特化型ファンド、小型株ファンドの純資産額が大きく増えたことも影響しました。
 次に米国を見ると、単純平均は日本を大きく上回るものの、加重平均は2008年時点で0.88%と日本の2/3程度です。加重平均エクスペンスレシオが日本の加重平均信託報酬と比較して低いのは、アクティブファンド、インデックスファンドに限らず、エクスペンスレシオの低いファンドに資金が集まっているためです。(図表2)を見ると2009年3月末時点で最も純資産の大きいファンドであるキャピタル・グループの運用するAGTHX「American Funds Growth Fund of Amer A」は0.62%、このほかの同グループの運用する「American Funds」シリーズ(AIVSX、AWSHX、ANCFX、GFAFX)はアクティブファンドながら、いずれも加重平均エクスペンスレシオを下回っています。他にはインデックスファンド運用に強いバンガード・グループのインデックスファンド(VTSMX、VFINX、VINIX、VFIAX、VTSAX、VIIIX)はいずれも0.20%を下回る水準にあり、非常に低コストであることが分かります。上位20ファンドのうち、加重平均を上回っているのは、わずか3本と米国の投資家のコスト意識の高さが見て取れます。

▼図表1:日本と米国の国内株式ファンドのコスト比較
(図表1)日本と米国の国内株式ファンドのコスト比較
日本
単純平均 加重平均 ファンド
本数
1998 1.11 0.98 780
1999 1.12 1.11 693
2000 1.21 1.34 642
2001 1.28 1.45 757
2002 1.30 1.41 750
2003 1.32 1.36 719
2004 1.30 1.36 647
2005 1.30 1.35 659
2006 1.31 1.32 651
2007 1.30 1.29 704
2008 1.32 1.25 710
米国
単純平均 加重平均 ファンド
本数
1998 1.62 0.94 2,855
1999 1.64 0.94 3,234
2000 1.64 0.99 3,568
2001 1.69 1.01 3,778
2002 1.75 1.03 4,733
2003 1.77 1.03 5,100
2004 1.72 0.97 5,226
2005 1.68 0.93 5,281
2006 1.64 0.90 5,410
2007 1.60 0.87 5,372
2008 1.61 0.88 5,413

出所:モーニングスター、日本は信託報酬等(税込み)、米国はエクスペンスレシオの平均。加重平均は年平均純資産額で加重
▼図表2:米国の国内株式ファンド純資産額上位20本
名称 Ticker エクスペンス
レシオ
インデックス
ファンド
American Funds Growth Fund of Amer A AGTHX 0.62 No
Fidelity Contrafund FCNTX 0.94 No
American Funds Invt Co of Amer A AIVSX 0.57 No
Vanguard Total Stock Mkt Idx VTSMX 0.16 Yes
Vanguard 500 Index Investor VFINX 0.16 Yes
American Funds Washington Mutual A AWSHX 0.58 No
Dodge & Cox Stock DODGX 0.52 No
Vanguard Institutional Index VINIX 0.05 Yes
American Funds Fundamental Investors A ANCFX 0.61 No
Fidelity Growth Company FDGRX 0.96 No
Vanguard 500 Index Admiral VFIAX 0.08 Yes
Vanguard Total Stock Mkt Idx Adm VTSAX 0.08 Yes
Fidelity Magellan FMAGX 0.72 No
Vanguard Institutional Index Instl Pl VIIIX 0.02 Yes
Fidelity Low-Priced Stock FLPSX 0.98 No
Davis NY Venture A NYVTX 0.85 No
Vanguard Windsor II VWNFX 0.32 No
American Funds Growth Fund of Amer F-1 GFAFX 0.61 No
Fidelity Equity-Income FEQIX 0.71 No
Vanguard PRIMECAP VPMCX 0.43 No

 (図表1)を見ると、米国においては常に加重平均が単純平均を下回っているのに対して、日本においては1999年以降、単純平均が加重平均を上回り、2007年に再び、加重平均が単純平均を下回りました。1999年〜2006年まで日本では、相対的に信託報酬の高いファンドに資産が集まっていたと考えられます。しかし、(図表3)を見ると2006年以降の日本株式ファンドに占めるインデックスファンドの割合は、国内株式市場の低迷局面でも再び、上昇する傾向にあります。また、インデックスファンド自体の信託報酬率も低下傾向にあります。これはコストの高いインデックスファンドが償還し、低コストのインデックスファンドが設定されたためです。2008年の国内株式ファンドは流出続きましたが、インデックスファンドに限ってみると純流入となっており、投資家もコストの安いインデックスファンドを選別投資していることがうかがえます。

▼図表3:日本の国内株式型ファンドに占めるインデックスファンドの割合と信託報酬の平均
(図表3)日本の国内株式型ファンドに占めるインデックスファンドの割合と信託報酬の平均
出所:モーニングスター、モーニングスターカテゴリー分類で国内株式型に属するファンドのみを対象。
インデックスファンドは協会分類でTOPIX連動型、日経225連動型に属するファンド。データは各年末を基準。

 以上のように、日本と米国を比較すると継続的に徴収される運用経費が非常に高いファンドが存在するものの、加重平均では相対的に低く、特に米国の投資家のコスト意識は一段と高まっていると推測されます。また、アクティブファンドでも日本のインデックスファンド並みにコストの低いファンドもあります。米国では純資産額規模の上昇に応じて、徴収率を下げるファンドが多く、規模が大きくなるに連れて、エクスペンスレシオが低下するためです。一方で日本においても、コストの低いインデックスファンドへ資金が流入しており、投資家のコスト意識は高まっているように見受けらます。また、国内株式型以外の資産クラスでも同様の傾向が見られます。参考データを確認し、自身の保有するファンドを比較してみてはいかがでしょうか。

(加藤 信之)

※参考   Expense Ratio Changes / 日本の大分類別信託報酬

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