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アナリストの視点(ファンド)

「グローバル化」が資産運用に与える影響

2009-05-21

現在、世界経済は新興国の台頭により「世界経済の多極化、一体化(グローバル化)」が進んでいます。世界経済はグローバル化に伴い国境を越えた経済活動が活発になり、新興国をはじめ世界経済を発展させてきました。

 サブプライムローン問題が表面化し始めた頃、「デカップリング」と「リカップリング」という2つの説が話題になりました。「デカップリング」とは、端的には、例え米国経済・株式市場が低迷しても、中国をはじめ内需が盛んな新興国はそれほど大きな影響を受けないだろうという説です。一方、「リカップリング」とは、デカップリングとは逆の考え方で、米国経済・株式市場が低迷すれば新興国にも影響を及ぼし、世界経済・株式市場も低迷するだろうという考え方です。
 サブプライムローン問題がまだ現在ほど深刻ではなかった当初は、市場では「デカップリング論」がやや優性だったように思われます。しかし、金融危機に陥ると、それまである程度大丈夫だろうと言われていた新興国株は、先進国以上に大きく下落する結果となり、世界同時株安・不況に陥りました。こうした一連の混乱は「100年に1度の金融危機」と称されましたが、アメリカ発のサブプライムローン問題、金融危機がここまで世界的に被害が広がった背景として「グローバル化」が挙げられています。

 図1はIMFの世界各国の経済成長の見通しをグラフにしたものです。程度の差はあれ、いずれの国も前年を下回る傾向となっており、「世界経済の一体化」が伺えます。一方、2009年は先進国がマイナス成長の見通しであるのに対し、新興国・地域の中東欧、中国、インドではプラスの成長見通しとなっており、世界経済は新興国を含めた多極的成長へと変貌しつつあることを示唆しているといえます。

▼図1:一体化する世界経済〜世界各国経済成長動向(実質GDP)
図1:一体化する世界経済〜世界各国経済成長見通し(実質GDP)
出所:IMF「World Economic Outlook Database April 2009」よりモーニングスター作成

 世界経済の変化は図2のグラフからも見て伺えます。図2は新興国、先進国別の世界経済の実質GDP成長率寄与度を表しています。図2を見ると、2000年までは、新興国よりも先進国の成長率寄与度の方が大きく、先進国主導の経済成長であったことがわかります。しかし、2000年以降は新興国の成長率寄与度が先進国を上回って推移しています。このように近年、新興国が世界経済に与えるインパクトは先進国以上になってきており、世界経済が転換しつつあるということがこの図からも伺えます。

▼図2:世界経済の実質GDP成長率寄与度
図2:世界経済の実質GDP成長率寄与度
出所:IMF(2008a)、経済産業省よりモーニングスター作成
※2007年以降はIMF予測値、2006年以前についても一部の国・地域にIMF予測値が含まれている。

 このように、世界経済は以前と比較して変貌しつつあり、投資信託市場にも影響を及ぼしているようです。 以下の図3、4は、2009年4月末現在と、2004年4月末現在の過去5年間の類似ファンド分類別のファンドの相関関係(連動性)を表しています。相関係数とは、ある2つの資産の値動きの関係性(連動性)を数値化したもので、1に近いほど連動性が高く、-1に近いほど逆の値動きをすることになります。
 図3の2009年4月末を基準とした過去5年間の相関係数と、図4の2004年4月末基準(5年前)を基準とした過去5年間の相関係数を比べると、5年前と比較して、現在はほぼ全ての類似ファンド分類において相関係数(連動性)が高くなっていることがわかります。この原因としては昨年の世界同時株安の影響などもありますが、今回の金融危機発生以前から相関関係は高まっている傾向にあり(参考図参照)、主な原因としては前記しました「グローバル化」の影響が考えられます。経済のみならず「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」、「技術」などのグローバル化により、世界経済はより密接となり、金融資産の連動性も高まってきているのかもしれません。

 各資産クラスの相関関係が高まるということは、違う資産でも同じような動きをしやすくなっているということを意味しており、分散効果を発揮しにくい状況になっているとも言えます。
 分散投資にとって最も重要なポイントとして、ポートフォリオの相関関係が挙げられます。値動きの安定を目指して分散投資する場合、いろんな銘柄や資産に投資するだけで良いということにはなりません。例えば、連動性が高い(相関関係が高い)資産や銘柄にいくら分散投資しても、個別リスクの分散にはなりますが、値動きを安定させる分散効果は期待しにくいからです。「値動きの安定」を追及するのであれば、ポートフォリオの相関関係を考慮に入れる必要があります。できるだけ連動性が低い(相関関係が低い)資産を組み合わせることで、分散投資による値動きの安定性を追及することが可能となります。各金融資産の相関関係が高まっている現在、分散投資をする際は以前にも増して工夫する必要性があるといえます。

(吉田 絵美子)

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