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アナリストの視点(ファンド)

分配金の誤解

2009-10-01

 近年、毎月分配型ファンドに人気が集まっている。2009年8月末現在、モーニングスターが評価対象とする国内公募追加型株式投資信託2,742本のうち、毎月分配型ファンドは全体の2割弱程度しかない(図表1参照)。しかし、同月末現在のファンドの過去1年間資金純流入額ランキングを見ると、毎月分配型ファンドが上位100本中73本を占めているのだ。上位20本で見ても15本を毎月分配型が占めている(図表2参照)。分配金をお小遣い感覚として毎月楽しみにしている投資家は多く、人気の高い毎月分配型ファンドだが、以下、分配金の基本知識とともに、分配金に対する誤解がないか振り返ってみたい。

▼図表1:国内追加型株式投信の決算回数(本数ベース)
図表1:国内追加型株式投信の決算回数(本数ベース)
出所:モーニングスター
※2009年8月末基準
▼図表2:過去1年間の資金純流入額ランキング(2009年8月末基準)
順位 ファンド正式名 委託会社名 過去1年間
資金流入額
(百万円)
決算
回数
1 野村 新米国ハイ・イールド債券投信(ブラジルレアルコース)毎月分配型 野村アセット 431,546 毎月
2 野村 米国ハイ・イールド債券(ブラジルレアルコース)毎月分配型 野村アセット 179,305 毎月
3 ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型) 日興アセット 159,896 毎月
4 ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型) 大和投信 149,199 毎月
5 短期豪ドル債オープン(毎月分配型) 大和住銀投信 147,276 毎月
6 ダイワ 外国債券ファンド(毎月分配型)-ダイワスピリット- 大和投信 145,278 毎月
7 ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型) 大和投信 130,237 毎月
8 DIAM ワールド・リート・インカム・オープン(毎月決算コース) DIAM 129,980 毎月
9 欧州ハイ・イールド・ボンド・ファンド(豪ドルコース) 野村アセット 123,254 毎月
10 三菱UFJ 新興国債券ファンド通貨選択シリーズ<ブラジルレアルコース>(毎月分配型) 三菱UFJ投信 121,573 毎月
11 野村 新興国消費関連株投信 野村アセット 113,136 年1回
12 新興国国債オープン(毎月決算型) 岡三アセット 99,965 毎月
13 野村 新中国株投資 野村アセット 99,624 年1回
14 ダイワ・ブラジル・レアル債オープン(毎月分配型) 大和投信 91,127 毎月
15 野村ピクテ・ジェネリック&ゲノム・ファンド 野村アセット 87,632 年1回
16 日興フォルティス 中国A株ファンド フォルティス・アセット 79,670 年1回
17 高金利通貨ファンド 新光投信 73,265 毎月
18 新光 ブラジル債券ファンド 新光投信 65,469 毎月
19 日興DWS エマージング・ニューディール・ファンド ドイチェ・アセット 62,118 年1回
20 エマージング債券ファンド(毎月分配型) 大和住銀投信 60,685 毎月

ファンドの分配回数は多い方が得?

 「分配回数(ファンドの決算回数)が少ないファンドよりも分配回数が多いファンドの方が得」という考えは誤解。例えば、分配回数がより少ない(または分配金を再投資する)ファンドに投資することで「複利効果」が期待されるため、理論的には分配回数が少ないファンドほど、投資効率は良いことになる。また、分配金には普通分配金と特別分配金があるが、普通分配金には一律20%の源泉税が課される(ただし、2011年12月末までは10%の軽減税率)。例えば、毎月分配型ファンドへ投資し、毎月普通分配金が支払われた場合、その都度、分配金から税金が差し引かれることになる。税制面で見ても、分配金額が少ない方が投資効率は良くなる。ただ、ファンドの決算回数は一概にこれが良いと断定することはできない。なぜならば、投資家のニーズは様々であり、どの決算回数が適しているかは投資家によって異なるからである。ファンドの決算回数を決める際は、上記のような分配金に関するデメリット面もよく認知したうえで、自分の投資目的に合わせて選択したい。

分配金は預貯金につく利息と同じ?

 分配金を預貯金につく利息と同じような感覚で捉えていないだろうか。ファンドの分配金は、元本にプラスして支払われる預貯金とは違い、ファンドの純資産から取り崩して支払われる。つまり、分配金は自分の信託財産が一部現金化されて手元に戻って来たものなのだ。なお、分配金が支払われると、分配金の支払い分が純資産総額から減少することになるので、基準価額の下落要因となる。また、預貯金の利息は予め決められた利率で支払われるが、ファンドの分配金は、ファンドの運用状況によって支払われる額が変わる(運用状況によっては支払われない場合もある)ため、預貯金と違ってあらかじめ率などは決められていない。このように、ファンドの分配金は、預貯金の利息とは全く別物なのだ。

分配金が高ければ運用成績が良く、低ければ運用成績が悪い?

 分配金額だけでファンドの運用成績を測ることはできない。例え分配金を受け取ったとしても、受け取った分配金以上に基準価額が下落した場合、トータルではリターンがマイナスになるのだ。前記の通り分配金はファンドの純資産の一部を取り崩して支払われており、「分配金=ファンド全体のリターン」とはならない。ファンドの運用成績を見る場合は、分配金だけでなく基準価額の騰落率も加味したトータルリターンやリスクなどで総合的に判断する必要がある。

分配金のまとめ

  1. 普通分配金は受け取るたびに課税される。
  2. 分配金は、ファンドの純資産残高から取り崩して支払われる。
  3. 2の理由から、分配金の支払いはファンドの基準価額の下落要因となる。
  4. 分配金は銀行の預貯金につく利息と同じではなく、全く別物である。
  5. 分配金額の多い・少ないは、ファンドの運用成績を測る基準にはならない。運用成績を見る際は、トータルリターンやリスクなどで総合的に判断する。

(吉田 絵美子)

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