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アナリストの視点(ファンド)

新・分配金の誤解

2010-09-02

6割を占める毎月分配型

 わが国では、毎月分配型ファンドの人気が高く、近年はそうした傾向が一段と強まっている。モーニングスターが評価対象としている追加型株式型投信は、2010年7月末時点では3,002本で、そのうち毎月分配型は669本と、「本数」では約2割程度にとどまった。一方、同月末時点での毎月分配型の「純資産額」では約6割を超えた。過去の株式投信の純資産額の推移をみると、1999年12月末時点では毎月分配型は1割弱にとどまっていたものの、2007年12月末時点では5割を越え、その後も比率は上昇傾向にあり、今後もその比率が上昇する可能性がある(図1参照)。2004年8月以降の月間の純資金流出入額でみても、毎月分配型が純流出となったのは2008年の10月と12月の2ヵ月のみと、人気の高さがうかがわれる。

(図1)毎月分配型ファンドの純資産額の推移 (図1)毎月分配型ファンドの純資産額の推移

※2010年は7月末時点
出所:モーニングスター作成

毎月分配型は不利?

 このように人気が一段と高まっている毎月分配型だが、「分配回数(ファンドの決算回数)が少ないファンドよりも、分配回数が多いファンドの方が得」と考えていたとしたら、誤解である。以下の5つのポイントに注目したい。
 第1に、分配金はファンドの純資産を取り崩して支払われる。つまり、元本にプラスして支払われる預貯金とは異なり、分配金は信託財産が一部現金化されて手元に戻って来たものに過ぎない。そのため、分配金の支払いは基準価額の下落要因となり、分配金が多いことは投資家にとっては必ずしもプラスとならない場合がある。第2に、毎月分配型などの分配回数が多いファンドを購入する投資家の多くは分配金の受取を目的としていると推測されるが、分配金を受けとってしまうと複利効果が期待できない。例えば、年間10%の利息がつく金融商品を10年間保有すると100%の利息が得られる計算になるが、税引前の分配金を全額再投資することができれば159%の利息が得られる。
 第3に、分配金は課税される。具体的には、普通分配金と特別分配金があるが、普通分配金には一律20%の源泉税が課される(ただし、2011年12月末までは10%の軽減税率)。第4に、分配金は将来的には増減する可能性がある。直近では、分配金利回り(分配金÷基準価額)の高さから、グローバルREITや新興国債券ファンドが人気を集めたが、今後の経済状況等の影響を受けて変動する可能性があり、当初に期待していたほど分配金が得られない可能性もある。第5に、高い分配金が維持されていたとしても、基準価額が分配金の累計額以上に下落した場合、トータルで考えるとマイナスとなってしまう。モーニングスターでは、基準価額の騰落率ではなく、分配金(税引前)を再投資したと仮定して計算したトータルリターンをみるように薦めているのはそのためだ。
 これらに加え、投資対象や設定時期によっては、毎月分配型ファンドのコストは高めに設定されている場合もある。モーニングスターの類似ファンド分類「国際債券・グローバル(為替ヘッジなし)」に属するファンドの信託報酬等(税込み)をみると、毎月分配型平均は1.21%と、年1〜6回決算型平均の1.04%を上回る(図2参照)。

(図2)主要類似ファンド分類の毎月分配型の信託報酬比較(2010年7月末時点) (図2)主要類似ファンド分類の毎月分配型の信託報酬比較(2010年7月末時点)

出所:モーニングスター作成

資金ニーズににあわせた選択が必要

 投資家のニーズは様々で、全ての毎月分配型ファンドが投資対象としてふさわしくないとは言いがたい。ただ、毎月分配型からの分配金を、生活費や年金の補完として利用するといった目的を果たすためには、それ相応の金額を投資する必要がある。人気の毎月分配型ファンドを購入する前には、分配金の仕組みを理解した上で、直近の分配金の高さだけにとらわれることなく、トータルリターン、コストなどを含めて総合的に判断する必要がある。一方、毎月分配を受けとる必要性が乏しい投資家であれば、同じマザーファンド(実質的な運用を行うファンド)に投資を行っているファンドで、決算回数が少ないファンドがないか、事前にチェックしたい。

(吉田 誠)

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