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アナリストの視点(ファンド)

商品価格上昇の影響を考える

2011-01-27

「コモディティ・バブル」再現か

 FAO(国際連合食糧農業機関)によると、2010年12月に食料価格指数が直近でピークをつけた2008年6月を上回り、過去最高水準を示したという。今回の食料価格の上昇は、ロシアでの干ばつに加えて、政府による食料の輸出規制が加わったこと、欧米、オーストラリアやアルゼンチンで収穫高が当初予想を上回ったことが背景としている。穀物よりも砂糖や油糧種子の価格上昇が特に目立つとしているが、世界的な天候不順により、世界最大の砂糖生産国であるブラジルでは乾燥懸念が強まったほか、オーストラリアの洪水はオーストラリアの食品価格上昇に影響しており、鉄鉱石の輸出にも懸念が生じている。また、カカオの最大生産国であるコートジボアールではカカオ、コーヒーの輸出禁止が発表されるなど、食品価格の上昇につながる話題に事欠かない状況にある。

図表1 2010年の年初来からの主な商品指数の推移(2010年1月4日を基点とする)
図1:主な商品指数の2010年の年初来からの推移(2010年1月4日を基点とする)

出所:モーニングスター作成

 直近のピークである2008年の食料価格上昇時には、原油価格の大幅上昇も相まって世界的な商品価格上昇が注目された。一方、原油価格(WTI原油先物)の動向を当時と比較すると、2008年には1バレル=140ドル台の過去最高値まで上昇していたが、現状は上昇基調が高まっているとはいえ、1バレル=100ドル以下での推移となっている。とはいえ、原油価格は一時1バレル=40ドル近辺まで下落していたことを考えると、足元大きく上昇してきており、現状の価格水準からの上昇幅はまだあるとも考えられる。特に世界的に厳冬となっていることから需給がタイトになる可能性もあり、今後の原油価格の動向には目が離せないだろう。

 また、2010年のファンドの年間トータルリターンをみても、Jリートに投資するファンドが上位に並ぶ中、「グローバル・アンブレラUBS フード(豪ドル)」の年間トータルリターンが36.21%、「BR・ゴールド・メタル・オープンAコース」が31.71%、「野村 金先物投信(南アフリカランド)年2回」が30.83%となるなど、コモディティ関連に投資するファンドが上位に入り、良好なリターンを記録した。

図表2 2010年の年間トータルリターン上位の主なコモディティ関連ファンド
ファンド名 カテゴリー 委託会社 純資産
(百万円)
トータル
リターン1年(%)
トータル
リターン3年(%)
標準
偏差
1年
(%)
標準
偏差
3年
(%)
グローバル・アンブレラUBS フード(豪ドル) コモディティ ユービーエス・グローバル・アセット 5882 36.21 35.71
BR・ゴールド・メタル・オープンAコース 国際株式・グローバル・除く日本(H) ブラックロックジャパン 4535 31.71 7.18 19.27 34.91
野村 金先物投信(南アフリカランド)年2回 コモディティ 野村アセット 53 30.83 17.56
野村 金先物投信(豪ドル)年2回 コモディティ 野村アセット 576 29.52 18.87
野村 金先物投信(南アフリカランド)毎月 コモディティ 野村アセット 148 27.30 18.15
野村 金先物投信(豪ドル)毎月 コモディティ 野村アセット 478 27.20 18.86
MHAM 金先物ファンド(ロング型) コモディティ みずほ投信 1818 25.39 11.82
BR・ゴールド・メタル・オープンBコース 国際株式・グローバル・除く日本(F) ブラックロックジャパン 11149 22.77 -2.43 25.24 40.24
ブラックロック・ゴールド・ファンド 国際株式・グローバル・除く日本(F) ブラックロックジャパン 12027 22.66 -1.99 24.37 40.15
野村 金先物投信(ブラジルレアル)毎月 コモディティ 野村アセット 1103 22.06 18.35
野村 金先物投信(ブラジルレアル)年2回 コモディティ 野村アセット 305 22.03 18.33
資源株ファンド通貨選択S<ランド>(毎月) 国際株式・グローバル・除く日本(F) 日興アセット 852 20.94 38.49
グローバル資源エネルギーファンド 国際株式・北米(F) ばんせい投信 821 20.78 -6.02 27.78 32.68
資源ファンド(株式と通貨)南アフリカランド 国際株式・グローバル・除く日本(F) 日興アセット 650 20.61 38.60
コモディティ・セレクション(食糧) コモディティ 岡三アセット 1675 20.08 -8.52 21.83 30.83

食品価格上昇=「アグフレーション」

 一方、原油価格、食料価格の上昇はインフレ懸念につながることから、新興国、特に非資源国への影響は大きい。2010年末には中国はCPI(消費者物価指数)の上昇から利上げに転じており、ブラジルやタイ、インドなども利上げを行っている。インフレ懸念は新興国株式にはネガティブな影響を与えており、2011年年初からの新興国株式のパフォーマンスをみると、2010年には調整していた中国以外にも、インドなどの株式の下落は厳しいものとなっている。ただ、中国を除くとこうした新興国株式市場は概ね2010年に堅調だったことを考えると、現状では一時的な調整にあるとも考えられなくはない。

図表3:2010年9月末を基準とした代表的な新興国株価指数の推移
図表3:2010年9月末を基準とした代表的な新興国株価指数の推移

出所:モーニングスター作成

 とはいえ、食品価格の上昇は市民の不満に結びつき、地政学リスクの上昇につながるケースが考えられる。チュニジアの「ジャスミン革命」が起こったことでエジプトなどの周辺国での暴動に飛び火している現状を考えると、食品価格への不満が暴動といった地政学リスクへと拡大する可能性も少なくない。今後は政府ないし中央銀行がこうしたインフレリスクを管理できるかが、新興国投資の際により重要になってくるのではないだろうか。一方、インフレに対応した政策金利引き上げは資金の過剰流入も呼ぶことになるため、ブラジルのIOF(金融取引税)引き上げを例にとるように、為替面での政策変更に注意することも欠かせないだろう。

「2008年」は再現するか

 先進国では低金利下での過剰流動性の供給が続いており、こうした資金はリスクテイクの姿勢につながって、新興国株式市場に流れ込むことで、新興国株式の好パフォーマンスにつながった面もある。先進国株式市場はいまだ堅調な状態にあり、米国ではデフレ懸念に代わってインフレ観測が浮上してきている。株式は一般的にインフレ耐性があるとされることや、債券に資金が集まりすぎた反動もあり、低金利という「蛇口」が閉まることがない限りは株式に資金が回帰する傾向は折に触れて強まると考えられる。

 一方、直近で商品価格の上昇が話題となった2008年を振り返ってみると、ユーロ圏ではECB(欧州中央銀行)が利上げを行ったことが特筆すべきことだろう。足元でもユーロ圏のCPI(消費者物価指数)は2010年12月のユーロ圏CPI速報値が前年同月比2.2%上昇と、ECBの数値目標である2.0%を上回ってきている。トリシェECB総裁はインフレに対する強硬姿勢を示しており、ECBの本来の目標である「物価の安定」からは「利上げ」という選択肢も浮上してきている状況にある。2008年のECBの利上げがその後の世界経済の混乱を招いたと批判されていることに加え、ユーロ圏周辺国への資金調達支援策を継続する中、ユーロ圏内でも財政問題が尾を引いており、利上げを説明するロジックが難しいものとなることは確かだ。ただ、仮に2011年中にECBが利上げに動くとすれば、大きな混乱は避けられないとみるべきであり、新興国株式市場への影響は大きなものとなるだろう。

2008年のファンドの動向はどうだったのか

 2008年はファンドの年間のトータルリターンをみてみると、ほとんどのカテゴリーがマイナスとなるなど、世界的な金融危機の影響を大きく受けた年だった。この間、大きく円高が進行したことから、国内債券型のファンドのパフォーマンスは中でも比較的堅調だった。ただ、過去の年間リターンとの比較では、過去10年間で最大のマイナス(モーニングスター・インデックスベース)となっており、大きな影響を受けていることがわかる。また、インフレ懸念が波及したことから利回りは年前半に大きく上昇したことなど、国内債券市場も波乱の展開となっていた。

図表4 2008年の日本国債の利回りの推移
図表3:2010年9月末を基準とした代表的な新興国株価指数の推移

出所:モーニングスター作成

 一方、2011年に入り1月25日の日銀の金融政策決定会合で2011年度のCPI見通しの中央値が0.3%の上昇(3ヶ月前は0.1%の上昇)に引き上げられている。国内ではデフレ傾向は引き続き強いものの、2011年は海外のインフレ懸念動向によっては国内債券市場も大きく影響を受けることが予想される。

(渡邉 亮)

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