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アナリストの視点(ファンド)

東日本巨大地震で意識される国際分散投資

2011-03-17

 3月15日の日経平均株価は前日比10.55%の下落と、東日本巨大地震の影響を受けて史上3番目の下落率を記録した。直近で同程度の下落率を記録した日は、リーマンショックの影響から、同11.41%安となった2008年10月16日だった。ただし、今回の東日本巨大地震による下落とリーマンショックを受けた下落では、状況が大きく違う。今回の大幅な下落は国際分散投資の必要性を改めて感じさせるものとなったからだ。

有効性が低下したかに見えた国際分散投資

 様々な国の株式や債券などへ分散して投資し、国や地域ごとのリスクを分散させようとするのが国際分散投資である。国際分散投資は国ごとに資産価格の動きや為替動向が異なるため、国内のみの投資では実現できないリスクの低減を可能とする。ただ、サブプライムショック以降、「国際分散投資は意味がなかった」と言われることがある。これは、サブプライムショックが起きた時に、各国とも同時に資産価格が大きく下落したため、国際分散投資の効果が働かなかったところが大きい。実際、図1を見ると、2005年以降、世界的な経済成長期待の高まりによる株価上昇からサブプライムショック、リーマンショックを経て、日本と世界各国の株式市場の連動性が高まっているようにみえる。

図表1:日本と世界の株式市場の連動性
図1:日本と世界の株式市場の連動性

出所:「Morningstar Direct」よりモーニングスター作成
・1年間(12ヵ月間)の月次リターンをもとに相関係数を算出。日本株式に対する世界の株式の連動性の推移を算出。
・日本株式=日経平均株価を使用。米国株式=MSCI AC 米国指数、欧州株式=MSCI AC欧州指数、アジア各国=MSCI AC ファーイースト(除く日本)指数。海外の株式指数はすべて円換算して算出。

 上記の図1は、連動性を図る指標として日本の株価指数と先進国や新興国などの株価指数との1年間の月次リターンの相関係数を算出し、その推移を追ったものである。相関係数とはそれぞれの指数との値動きの連動性をみる指標で、図1では1に近づくほど連動性が高く、値が低いほど連動性が低いことを示す。一般に0.5を超えると連動性があると見られるようになる。

 図表1を見ると、2009年に世界的に株価回復する中では、連動性は再度、低下する傾向を示していた。日本の株式市場が世界の株式市場の上昇に追いつけなかったことなどが影響していた。しかし、2010年に円高傾向が強くなる中で、日本の株価の値動きと海外の株価は連動性が高まっている。そのため、国際分散投資の意義が薄れつつあった。

「イベントリスク」で意識される国際分散投資

 国際分散投資は上記のように、日本と各国の株式市場との連動性という観点から見た場合には、有効性が低下しつつあるようにも見える。ただ、今回の東日本巨大地震を受けて多くの投資家が感じたことは、個別の投資対象国の「イベントリスク」の大きさだろう。「イベントリスク」は、普段はあまり意識されることはないが、地震やテロ事件などの突発的なイベントによって、特定の国の株式市場が大きく下落すると意識される傾向にある。

図表2:3月10日〜3月15日にかけての各国の株価指数の騰落
日経平均株価 S&P500株価指数 FT100指数 ハンセン(香港) 上海総合指数
-17.53% -1.02% -2.57% -3.97% -2.06%

出所:モーニングスター
※すべて現地通貨ベース

 例えば、東日本巨大地震が起きる前日の3月10日から3月15日までに日経平均株価は−17.53%と大きく下落した一方で、米国のS&P500は−1.02%と低い下落率に留まっている。加えて、隣国である中国でもハンセン指数が−3.97%、上海総合株価指数が−2.06%と、その下落率は抑えられたものとなっている。また、休日明けの3月14日では、東日本巨大地震の全容が伝えられる中で、ハンセン指数、上海総合株価指数はともに上昇している。イベントリスクは今回の巨大地震だけではない。他の先進国、新興国でも起きている。例えば、直近ではエジプトのデモ運動など、過去には米国同時多発テロや米国のハリケーン・カトリーナなどが思い出される。今後、このようなイベントリスクによるポートフォリオの大きな毀損を避けるためにも、あらためて国際分散投資を意識した運用を心がけたい。

(辻 哲)

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