fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

テール・リスクに対する対応策

2011-07-07

 2008年10月のリーマンショックや2011年3月の東日本大震災などの発生を受け、機関投資家に限らず、個人投資家にとっても予測不可能な事象に対するリスク管理の重要性が増してきたように思われる。今回は「テール・リスク」と個人投資家のリスク管理について考えてみたい。

「テール・リスク」とは何か?

 想定外の突発的な事象のことを「テール・イベント」、このイベントから生ずるリスクを「テール・リスク」と呼ぶ。“テール”という用語は、ランダムな事象の起こりやすさを表す確率分布の“裾”の部分を指すが、確率分布という用語から「テール・リスク」を説明すると直感的に理解しにくいため、TOPIX(東証株価指数)を例に簡単な具体例で「テール・リスク」の説明を行う。

 図表1は過去10年間のTOPIXの月次リターンのマイナスリターンの発生確率を示したものである。▲15.0%までの発生確率は概ね理論値(過去のTOPIXの月次データをもとに算出)と同程度となるものの、▲15.0%を下回る発生確率についてはTOPIXが理論値を上回る。このように理論的には相当低い確率で発生するべき大幅下落が、想定されているよりも高い頻度で発生するリスクを「テール・リスク」と呼ぶ。「テール・リスク」は国内株式に限らず、他の資産でも観測される事象である。なお、残念ながら、過去のデータを見る限り、想定以上に高いリターンが得られる「テール・イベント」はそれほど多くないようである。

図表 1 TOPIX月次リターンのマイナスリターンの発生確率
月次リターンの範囲 TOPIX 理論値
-5.0% 〜 0.0% 30.0% 33.9%
-10.0% 〜 -5.0% 15.8% 14.9%
-15.0% 〜 -10.0% 1.7% 2.7%
〜 -15.0% 0.8% 0.2%

出所:モーニングスター作成
TOPIXの月次リターンは2011年6月末までの過去10年間(120カ月分)のデータを使用

「テール・リスク」への対応

 何らかのリスク資産に投資する以上、「テール・リスク」を完全に回避することは残念ながら不可能である。しかし、「テール・リスク」を低減させるための対応を取ることは出来る。

 日銀の白川総裁は、6月のオランダでの講演の中で金融機関の「テール・リスク」への対応について述べ、「テール・リスク」が顕在化する前後の対応策として、「リスク・エクスポージャーの集中回避(リスク資産の集中の回避)」や「冷静な行動」などを示した。これは、金融機関に限らず個人投資家にも当てはまる。

 「リスク資産の集中の回避」という観点では、東日本大震災時の相場環境が思い出される。2011年3月の月間の主要な資産のリターンをみると、国内株式のみが大幅下落となっただけで、他の資産への影響は軽微であった。分散投資が奏功する局面であったと言える。

 また、「冷静な対応」という観点では、近年最も大きな「テール・イベント」の一つであったリーマンショックが一例として挙げられる。国内追加型株式投信では、2008年10月にプラスリターンとなったファンドは株式ベア型ファンドのほか、債券ファンドの一部に留まり、9割近くのファンドが下落した。しかし、その後の回復をみると、例えば先進国株式と新興国株式では上昇幅は大きく異なっている(図表2参照)。重要なのは短期的な価格の動きに惑わされず、今後の見通しを考えることである。

 なお、機関投資家であれば、先物やオプションなどを利用することにより、「テール・リスク」にも対応したリスク管理を行っているが、個人投資家はこうした資産や取引に馴染みが薄く、商品性もやや難解であることから、機関投資家と同様の対応を取ることは難しい。

図表2 リーマンショック後の株式ファンドの推移
テール・リスクに対する対応策

出所:モーニングスター作成
データ期間:2008年8月末〜2011年6月末(2008年8月末を100として指数化)
データは以下のインデックスを使用
国内株式:モーニングスターインデックス「国内大型ブレンド」
先進国株式:モーニングスターインデックス「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」
新興国株式:モーニングスターインデックス「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」

ファンドの特性や最大下落率を確認

 モーニングスターでは、複数ファンドのポートフォリオ状況が一目で確認できる新ポートフォリオツール「X-Ray」の提供を6月末よりスタートさせた。このツールを使用することで保有ファンド全ての資産、地域、スタイル等の状況を確認し、ポートフォリオ管理、そして「テール・リスク」を低減するための分散投資や今後の見通しを立てることに役立てて欲しい。

 また、モーニングスターの個別ファンドページでは、最大下落率(1カ月、3カ月、6カ月、1年)の情報も公開している。保有ファンドが過去にどの程度下落したのかを確認しておき、様々な事態を想定しておくことも重要であろう。

(下村 優太)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー