fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

長期の運用実績が求められる、日本の投資信託市場

2011-08-25

1、日本の投資信託で長期運用をすることは難しかった

 米国債の格付け引き下げ以降、ニューヨークダウが1日に300ドルを超えて上下動するなど、ここ数週間、世界の株式市場は激動した。こうした時に意識されるのは、長期投資だろう。金融市場は平均に回帰する傾向があるため、短期的な視点から見ると大きく上下動していても、長期的な視点から見た時にはパフォーマンスが落ち着いた動きをしているように見えるためだ。そこで、日本の投資信託で長期間、運用されているファンドはどの程度存在するのか、調べてみた。

 はじめに、「長期間」の一つの目途として、10年前に運用されていたファンドがどのくらい存在しているのか調べた。2001年7月末時点で国内で存在していた追加型株式公募投信(※)は2,176ファンドとなっている。そのうち、2011年7月末時点まで運用が継続されている投資信託は638ファンドだった。つまり、10年以上、継続して運用されたファンドは全体の約30%ということになる。さらに、20年前となる1991年7月末時点で運用されていた627ファンドのうち、2011年7月末時点まで運用継続されていたファンドは53ファンドと、全体の約9%にとどまっている。つまり、過去10年間または20年間では、ITバブル崩壊やリーマンショックなど金融市場の激動期をいくつも経験してきたものの、日本の投資家が投資信託への投資を通じて、長期投資を実行することは非常に難しいものであった。

※除く、限定追加型、ミリオン、財形貯蓄ファンド

図表1:10年以上の運用を継続できた投資信託は非常に少ない


長期の運用実績が求められる、日本の投資信託市場

出所:モーニングスター作成
2011年7月末時点

2、投資信託が長期の資産形成の対象であるために

 このように、多くのファンドが10年、20年といった運用期間を経ずに償還されてしまう背景には、純資産額が大きく影響している。過去に償還されたファンドの約83%は、償還時の純資産額が10億円以下で償還されている。つまり、投資信託は運用を継続するために一定程度の純資産額が必要とされるが、その多くは純資産額を維持することが出来ていないのである。こうした背景には、国内の投信の売れ行きとして、長期の運用実績を有するファンドよりも、新規設定ファンドに資金が集まりやすいということやファンドの乗り換えなどが挙げられる。今後、こうした点が改善されなければ、個人投資家が投資信託を通じた長期投資を実現することは非常に難しい。そして、投資信託は個人投資家から長期の資産形成の対象としては見放されてしまうだろう。

図表2:長期のリスク・リターンに優れるアクティブファンド


ファンド名 カテゴリー名 信託開始日 モーニングスター
レーティング
純資産額
三菱UFJ/メロン グローバルバランス バランス 1998年3月19日 ★★★★★ 2,434
三菱UFJ MV20 安定 2000年12月20日 ★★★★★ 4,305
三菱UFJ MV40 安定成長 2000年12月20日 ★★★★★ 4,574
ダ・ヴィンチライト 安定成長 2001年3月20日 ★★★★★ 1,675
アジアオープン 国際株式・エマージング・複数国(F) 1993年10月19日 ★★★★★ 9,134
野村 ワールドスターオープン 国際株式・グローバル・含む日本(F) 1995年1月19日 ★★★★★ 4,602
BR・ゴールド・メタル・オープンBコース 国際株式・グローバル・除く日本(F) 1995年2月19日 ★★★★★ 9,868
フィデリティ・欧州中小型株・オープンB 国際株式・欧州(F) 1996年5月19日 ★★★★★ 3,034
AB・グローバル・ハイ・インカムA 国際債券・グローバル・含む日本(F) 1997年6月19日 ★★★★★ 30,806
BAM ワールド・ボンド&カレンシー・ファンド 国際債券・グローバル・除く日本(F) 1998年4月19日 ★★★★★ 31,155
DLIBJ 公社債オープン(短期コース) 国内債券・中長期債 1999年12月19日 ★★★★★ 29,150
DLIBJ 公社債オープン(中期コース) 国内債券・中長期債 1999年12月19日 ★★★★★ 19,065
三菱UFJ/メロン グローバルイノベーション 国内大型グロース 2000年6月20日 ★★★★★ 4,652
システム・オープン 国内大型ブレンド 1983年5月19日 ★★★★★ 5,982
スーパートレンドオープン 国内大型ブレンド 1990年2月19日 ★★★★★ 9,355
さわかみファンド 国内大型ブレンド 1999年8月19日 ★★★★★ 238,400
ニッセイ 日本株グロースオープン 国内大型ブレンド 2000年2月20日 ★★★★★ 4,580
朝日ライフ SRI社会貢献ファンド 国内中型ブレンド 2000年9月20日 ★★★★★ 2,963

出所:モーニングスター作成
2011年7月末時点、純資産額の単位は百万円

 長期の運用実績のあるファンドの中には、非常に良好なパフォーマンスをあげているアクティブファンドのほか、パッシブファンドもいくつか存在する。投資信託を選定するに当っては、過去のパフォーマンスを参考にすることはよくあるが、長期の運用実績を有するファンドでなければ、様々な期間にわたって比較することができない。また、10年以上の運用実績を有するファンドをカテゴリー別(※)に見ると、46のカテゴリーに分かれている。そのため、長期の運用実績を有するファンドから、分散投資を実行することも可能である。今後は、長期のパフォーマンス比較などから、投資する投資信託の選定を意識しても良いはずだ。

(辻 哲)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー