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アナリストの視点(ファンド)

拡大基調に金融庁が販売規制、通貨選択型ファンドのリスクを測る

2012-01-19

 2011年12月、純資産額が拡大する通貨選択型ファンドに対して、金融庁が販売規制に乗り出した。これは欧州財政危機によって為替市場が大きく変動し、通貨選択型ファンドの運用成績に影響を及ぼしていることが背景にあるようだ。ただ、通貨選択型ファンドの中でも人気が高いブラジルレアルや豪ドルといった通貨の円に対する変動が、特段、ここ1年程度で大きくなったわけではない。投資家側は今回の販売規制を機会に、通貨選択型ファンドやそれに対して影響を与えるだろうブラジルレアルや豪ドルなどの通貨の変動の大きさについて理解し、通貨選択型ファンドへの投資を再考することが求められる。そこで、今回は標準偏差(※)を用いて、通貨選択型ファンドの中でも人気が高いブラジルレアルや豪ドルがどの程度、リスクが高いのか、測ってみた。

※リターンのばらつきを表す指標で、値が大きいほどリスクが高い。

人気の通貨選択型ファンドを金融庁が規制した背景

 2011年末の追加型投資信託全体の純資産額は40兆8,100億円と、2010年末の46兆2,768億円から大きく減少した。こうした状況であるにも関わらず、ここ数年、人気の根強い通貨選択型ファンドはその規模を拡大させた。2011年末における通貨選択型ファンドの純資産額は8兆2,559億円と、2010年末の7兆720億円と比較して1兆1,839億円増加している。そのため、純資産額ベースでは、投資信託全体20%程度のシェアを占めるまでに拡大している。

 ただ、2011年12月に金融庁は通貨選択型ファンドについて、販売規制を強化する方針を打ち出した。規制強化の内容は、通貨選択型ファンドについて、為替変動リスクを投資家が理解しているか、投資家の投資方針に合致しているかなどを確認させるものとなっている。このような新たな規制の背景について、自見金融担当大臣は12月の閣議後の記者会見で、ギリシャショックなどによる為替市場の大幅な変動が通貨選択型ファンドにも影響を与えているため、といった趣旨の説明をしている。

図1:通貨選択型ファンドのシェア推移(純資産額ベース)


図1:通貨選択型ファンドのシェア推移(純資産額ベース)

出所:モーニングスター作成

通貨選択型ファンドのリスクはどのくらい?

 実際、通貨選択型ファンドの中でも人気が高いブラジルレアルコースファンド、豪ドルコースファンドは、資産クラス別に比較すると標準偏差が概ね高くなっていることが分かる。

 モーニングスター独自に各ファンドを資産クラス別に分類した「モーニングスターカテゴリー」(以下、MSカテゴリー)における、2011年12月末時点の過去1年間の標準偏差を比較する。下図をみると、ブラジルレアルコースファンドの純資産総額が最も大きいMSカテゴリー「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」では、ブラジルレアルコースファンドの平均値は23.97%となっている。MSカテゴリー「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」全体の平均値は14.66%となっており、9.31%上回っていることが分かる。

 次に、豪ドルコースファンドの純資産総額が最も大きい「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」では、豪ドルコースファンドの平均値が22.26%となっている。MSカテゴリー「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」全体の平均値が17.88%となっており、4.39%上回っていることが分かる。このように、過去1年間では通貨選択型ファンドの中でも人気が高いブラジルレアルコースファンド、豪ドルコースファンドはいずれも変動が大きいものとなっている。

 通貨選択型ファンドについては、さらに長期の運用成績を測ろうとすると、設定本数が急減してしまう。そこで、次にブラジルレアルコースファンド、豪ドルコースファンドの変動性に影響を与えていると推測されるブラジルレアル、豪ドルについて、標準偏差を見る。

図2:ブラジルレアルコースファンドの過去1年間の運用成績


原資産のMSカテゴリー トータル
リターン
(通貨選択
型平均)
標準偏差
(ブラジル
レアルコース
ファンド平均)
標準偏差
(カテゴリー
平均)
標準偏差の差
(ブラジル
レアルコース
ファンド平均
−カテゴリー
平均)
通貨選択型
純資産額
(億円)
国際債券・エマージング・複数国(F) -4.58% 23.97% 14.66% 9.31% 16,058
国際債券・ハイイールド債(F) -6.62% 24.36% 17.88% 6.48% 15,510
国際株式・グローバル・含む日本(F) 0.52% 23.09% 20.19% 2.89% 3,398
安定成長 -19.15% 27.64% 9.37% 18.27% 2,832
国際債券・グローバル・含む日本(F) -6.17% 21.07% 11.09% 9.98% 1,982
国内大型グロース -28.42% 26.94% 14.24% 12.70% 1,040
国際株式・グローバル・除く日本(F) -24.44% 47.60% 25.20% 22.40% 1,012
国内REIT -29.76% 23.43% 9.83% 13.60% 522
国際REIT・グローバル・含む日本(F) -12.47% 30.94% 22.03% 8.90% 513
国際REIT・特定地域(F) -6.44% 34.46% 25.62% 8.84% 419

2011年12月末時点
出所:モーニングスター作成

図3:豪ドルコースファンドの過去1年間の運用成績


原資産のMSカテゴリー トータル
リターン
(通貨選択
型平均)
標準偏差
(豪ドルコース
平均)
標準偏差
(カテゴリー
平均)
標準偏差の差
(豪ドルコース
ファンド平均
−カテゴリー
平均)
通貨選択型
純資産額
(億円)
国際債券・ハイイールド債(F) 0.55% 22.26% 17.88% 4.39% 5,003
国際債券・エマージング・複数国(F) 2.47% 20.19% 14.66% 5.53% 3,891
国際債券・グローバル・含む日本(F) 0.82% 17.93% 11.09% 6.83% 1,279
国際株式・グローバル・含む日本(F) 8.00% 19.86% 20.19% -0.33% 843
国内大型グロース -22.62% 24.08% 14.24% 9.84% 688
国際株式・グローバル・除く日本(F) -18.65% 46.31% 25.20% 21.11% 184
国内REIT -23.67% 19.96% 9.83% 10.13% 113
国際REIT・グローバル・含む日本(F) -5.30% 29.57% 22.03% 7.54% 104
国際REIT・特定地域(F) 4.89% 34.74% 25.62% 9.12% 32
コモディティ 0.15% 35.74% 24.95% 10.79% 31

2011年12月末時点
出所:モーニングスター作成

2011年のブラジルレアルや豪ドルの変動は新興国株式ファンド、先進国株ファンド並み

 まず、2011年のブラジルレアル(※)、豪ドル(※)の標準偏差を見ると、19.33%、17.07%となっている。これは単一国に投資する新興国株式ファンドや日本を投資先に含む先進国株式ファンド、ハイイールド債券ファンドなどと、同じくらいの高さを示している。

 資産クラス別に各ファンドの運用成績をモーニングスターがまとめた「モーニングスターインデックス」で比較する。すると、1カ国のみに投資する新興国株式ファンドの「国際株式・エマージング・単一国(為替ヘッジなし)」が21.15%、日本を投資先に含む先進国株式ファンドの「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」が18.87%、ハイイールド債券ファンドの「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」が17.12%などとなっている。

※ブラジルレアル=シティバンクの対顧客レート(TTM)、豪ドル=三菱東京UFJ銀行の対顧客レート(TTM)の月末の値を使用。

図4:ブラジルレアル、豪ドルとモーニングスターインデックスの標準偏差(年率)


図4:ブラジルレアル、豪ドルとモーニングスターインデックスの標準偏差(年率)

2011年12月末時点

ブラジルレアル、豪ドルは過去5年間で見ても変動が高い

 ブラジルレアル、豪ドルの変動性の高さは2011年に急上昇したわけではない。2011年12月末時点における過去5年間で、ブラジルレアル、豪ドルの標準偏差(年率)は20.78%、20.09%と過去1年間とほぼ変わらない。また、「モーニングスターインデックス」で比較すると、「国内REIT」の21.37%や「国内大型グロース」の20.65%、「国内大型バリュー」の20.30%、「国内大型ブレンド」の20.13%などの国内株式ファンドなどと近い水準である。つまり、ブラジルレアル、豪ドルの標準偏差は、欧州債務危機などの影響によって急上昇したわけではなく、もともと一定程度の変動があるようだ。

通貨選択型ファンドへの投資を再考する機会に

 金融庁が規制するように、販売側には為替の変動の大きさとそれに影響を受ける通貨選択型ファンドのリスクについて十分に理解できるように説明する体制作りが求められる。一方、投資家側は、上記のように概ねリスクが高い傾向にある通貨選択型ファンドを今後も保有するべきか、再考する機会とするべきだろう。また、今後、購入を検討している投資家は為替の変動性や通貨選択型ファンドの仕組みについて、十分に理解しているのか考え直してもらいたい。

(辻 哲)

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