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アナリストの視点(ファンド)

0.1%のコスト差は20年複利では約5%の差異に

2012-02-14

 投資信託の信託報酬が上昇傾向にある。追加型株式投信(DC、SMA、ETF除く)の実質信託報酬等(税込)の単純平均(以下、信託報酬等平均)は概ね右肩上がりで上昇し、この10年間で約0.1%上昇した(図1参照)。こうした背景にあるのは、新興国株式・債券、ハイイールド、REITなどを中心とした海外投資型ファンドが人気を集め、設定本数が増加傾向にあるため。また、ここ数年は通貨選択型ファンドが1シリーズで10数本同時に設定されたことも、信託報酬等平均の押し上げ要因となっている。

(図1)実質信託報酬等(税込)平均の推移


(図1)実質信託報酬等(税込)平均の推移

※ 現存しているファンドのみを対象とした単純平均
出所:モーニングスター作成

 カテゴリー別の信託報酬等平均の推移をみると、こうした傾向は明らかである(図2参照)。2011年までの過去10年間について、株式ファンドの主要なカテゴリー別の信託報酬等平均の推移をみると、先進国を主要投資対象とする「国内大型ブレンド」に大きな変化はなく、むしろ「国際株式・グローバル・除く日本(ヘッジなし)」はやや低下傾向にある。一方で、新興国株式を主要投資対象とする「国際株式・エマージング・単一国(ヘッジなし)」はやや低下傾向にあるものの、「国際株式・中国(ヘッジなし)」、「国際株式・エマージング・複数国(ヘッジなし)」は緩やかな上昇傾向にある。

 カテゴリー別の内訳をみると、信託報酬等平均が低下傾向にある「国際株式・エマージング・単一国(ヘッジなし)」は、近年設定が相次いだインドネシア株式ファンドがカテゴリー平均を下回るファンドが多かったことに加え、指数連動型ファンドの増加もカテゴリー平均の押し下げに寄与した。一方で、「国際株式・中国(ヘッジなし)」は、A株のみを主要投資対象とするファンドの信託報酬が高めに設定される傾向が強く、これらのファンドの設定本数の増加が、カテゴリー平均の押し上げの一因となった。また、「国際株式・エマージング・複数国(ヘッジなし)」は、近年は低コストのインデックスファンドの増加が同平均の押し下げ要因となっているものの、東欧、中東、アフリカなどの特定地域を投資対象とするファンドの増加が中国A株ファンドと同様に押し上げ要因となっており、全体としては高止まりしている。

(図2)主要カテゴリー別(株式)の実質信託報酬率(税込)平均の推移


(図2)主要カテゴリー別(株式)の実質信託報酬率(税込)平均の推移

※ 現存しているファンドのみを対象とした単純平均
出所:モーニングスター作成

 債券ファンドについて、主要なカテゴリー別の信託報酬等平均の推移をみると、人気の高い「国際債券・エマージング・複数国(ヘッジなし)」がインデックスファンドの増加により、緩やかながらも低下傾向にあるほか、「国際債券・グローバル・除く日本(ヘッジなし)」、「国際債券・ハイイールド債(ヘッジなし)」は概ね横ばいで推移している。

 つまり、株式及び債券ファンドの実質信託報酬等は、主要投資対象が同じファンド間でではそれほど大きな差異はないものの、海外投資型のファンドの多くは運用を外部再委託しているため、相対的に信託報酬が高く、これらのファンドの本数が傾向にあることに加え、中でもリスクの高い特定の地域・資産を投資対象とするファンドが増加傾向にあり、全体の実質信託報酬等の押し上げ要因となっている。

 購入時に一括して負担を求められる購入手数料とは異なり、信託財産から日々控除される信託報酬については、それほど意識していない投資家も多いかもしれない。ただ、仮に元金1,000万円を年間5%複利で20年間運用すると想定した場合、信託報酬が0.1%高い方が20年後の受取額は約48万円減少する(図3参照)。信託報酬の低いファンドが、運用成績等においても優れているとは一概には言えないものの、近年設定数が増加傾向にある特定地域に投資を行うファンドや、カテゴリー内で相対的に信託報酬が高いファンドに投資するにあたっては、事前によく比較、検討する必要がある。

(図3)コスト負担のシミュレーション


(図3)コスト負担のシミュレーション

※ 元金1,000万円を年率5%の複利利回りで、20年間運用したと仮定
出所:モーニングスター作成

(吉田 誠)

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