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アナリストの視点(ファンド)

リターンに関する誤解〜上昇局面の罠にはまらないようにリスクも考慮を〜

2012-12-18

2012年は世界的に株式市場、リート市場が上昇

 2012年の世界各国の株式市場は前年末よりも高い水準で終わりそうだ。2012年11月末までの年初来リターンをみると、先進国株式市場は21.98%、新興国株式市場は19.46%上昇している。世界的にリートも堅調で国内リートは33.98%、先進国リートは26.52%と大きく上昇している。そのため、2012年11月末時点の純資資産額ランキング上位10ファンドについても、9本のファンドが年初来リターンで10%以上上昇するなど、高いリターンをあげている。

 2012年に大きく上昇した株式やリートは相対的に変動が大きい(リスクの高い)ものの、こうした上昇局面ではリターンに注目が集まりやすい。個人投資家は、リターンが高い資産やファンドほど優れていると考える人が多いためだ。しかし、過去のリターンだけを評価してファンドを選べばよい、というのは誤解だ。上昇局面では個人投資家はリターンを重視する罠にはまりやすいものの、各資産、ファンドの変動の大きさ(リスクの高さ)こそ重視すべき指標である。

特定期間のリターンが継続するとは限らない

 各資産、ファンドのリターンは市場環境によって大きく左右される。そのため、特定期間で優位となっただけであって、その後も継続的に良好な運用成績をあげるとは限らない。図1のように各資産の2001年〜2011年の暦年のリターン及び2012年11月末までの年初来リターンの推移をみると、2012年は国内外の株式、リートが大きく上昇し、他の資産クラスに対して優位となっている。しかし、2011年は国内外の株式は大きく下落し、他の資産クラスに劣後している。また、海外リートも2012年は良好だったものの、2007年、2008年は他の資産クラスに対して大きく劣後している。つまり、各資産クラスによって優位となる局面は異なり、来年、再来年も同じような展開となるとは限らない。

図1:暦年の各資産のリターン(円ベース)

図1:暦年の各資産のリターン(円ベース)

※1.各年末時点の値をもとに算出。2012年は11月末時点。
※2.国内株式=TOPIX(東証株価指数、配当込み)、国内債券=ノムラBPI総合指数、国内リート=東証リート指数(配当込み)、先進国株式=MSCIコクサイ指数(税引前配当込み)、新興国株式=MSCIエマージング指数(税引前配当込み)、先進国債券=シティ世界国債(除く日本)、新興国債券=JPモルガンEMBIグローバルディバーシファイド、先進国リート=S&Pリート指数除く日本(配当込み)。
※3.海外資産はいずれも米ドルベースの各年末値に三菱東京UFJ銀行の対顧客為替レート(TTM)をかけて算出。
出所:「MorningstarDirect」などをもとにモーニングスター作成

リスクも考慮した運用を

 このため、各資産を評価するには、リターンの変動の大きさを把握する必要がある。変動の大きい資産の場合、今後も大きく上下する可能性が高く、期待される収益をあげる可能性が低いためだ。この変動の大きさ(リスクの高さ)を評価する指標の一つとして標準偏差(リターンのばらつきを表す指標で、大きいほどリスクが高い)がある。図2は各資産クラスの2001年〜2011年各年末時点及び2012年11月末時点の標準偏差の推移である。図2を見ると、新興国株式はほぼ一定して上位となっているのに対して、国内債券は最も低いことが分かる。他の資産の順位も毎年、一定程度入れ替わりはするものの急激な変化はあまり見られない。つまり、標準偏差はトータルリターンよりも各資産の順位は安定している傾向があり、過去の運用成績を評価するならば、標準偏差を重視すべきである。

 一方で、2012年が良好な市場環境だった影響もあり、実際にはリスクよりもリターンを重視する罠に個人投資家が陥っているように見える。2012年11月末時点の年初来の純資金流入額ランキングをみると、上位には相対的に変動が大きい(リスクが高い)資産である新興国株式や海外リートへ投資するファンドが多い。今後、個人投資家が投資対象資産の選定や配分を決める際には、リターンに関する指標だけでなく標準偏差などのリスク指標についても考慮することが望まれる。また、ファンドの評価、選定にあたっては、リスクに対してリターンをどの程度あげたのかを測る指標である、シャープレシオを相対的に比較することも有効だろう。モーニングスターのWEBサイトでは同じカテゴリーに属するファンドを比較できるファンド検索が可能となっているので、確認してもらいたい。

図2:暦年の各資産のリスク

図2:暦年の各資産のリスク

※1.各年末時点における過去1年間の月次リターンにもとづく標準偏差を算出。2012年は11月末時点。
※2.国内株式=TOPIX(東証株価指数)配当込み、国内債券=ノムラBPI総合指数、国内リート=東証リート指数(配当込み)、先進国株式=MSCIコクサイ指数(税引前配当込み)、新興国株式=MSCIエマージング指数(税引前配当込み)、先進国債券=シティ世界国債(除く日本)、新興国債券=JPモルガンEMBIグローバルディバーシファイド、先進国リート=S&Pリート指数除く日本(配当込み)。
※3.海外資産はいずれも米ドルベースの各年末値に三菱東京UFJ銀行の対顧客為替レート(TTM)をかけて算出。
出所:「MorningstarDirect」などをもとにモーニングスター作成

(辻 哲)

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