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アナリストの視点(ファンド)

国内株上昇のいま、改めて考えたい運用成績の見方に関する注意点

2013-02-14

 近年、私たちが扱う情報量は格段に増加している。リアルタイムでの情報取得が可能になったことに加え、その情報自体に含まれるデータ量も増加傾向にある。しかし、私たちはそのデータを有効に活用できているのだろうか?様々な情報を有効に活用している投資家がいる一方で、データの見方自体も良く分からないという投資家も少なくない。今回は国内株を例に取り上げ、データの見方に関する注意点をいくつか取り上げてみたい。

国内株のリターンは過去10年で年率+3.0%、20年で年率▲0.4%?

 リターンはどの程度の収益を獲得したかを表す、投資家にとって最も重要な指標の一つである。ただし、リターンには様々な”見せ方”があることに注意が必要である。
 期間の取り方はその一つである。長期投資といった場合、10年間、20年間など期間の取り方はデータ作成者が任意に決定することができる。例えば、TOPIX(配当込み)の長期の騰落率をみると、過去10年間は年率3.0%、過去20年間は年率▲0.4%となり、データ作成者は使用目的に応じていずれかの期間を使い分けることが可能である。また、年率・非年率の表記も重要となる。上記の騰落率の場合、年率3.0%は10年間で34.8%上昇、年率▲0.4%は20年間で7.4%下落と書き換えることができる。上昇・下落率の大きさを強調したい場合などには年率換算しないこともありうる。
 期間、時点、計算方法、比較対象など様々な選択肢の中から何を選択するかによって、データが投資家に与える印象は大きく異なったものとなる可能性がある。

図1 TOPIX(配当込み)の推移

図1 TOPIX(配当込み)の推移

出所:モーニングスター作成

リスクの注意点

 リスクを見る上でもリターンと同様の注意が必要だが、リスクはリターンとは違った視点でデータをみてみたい。
 資産運用では「長期投資でリスクが低減する」ということが信じられており、そうした事実を示そうとするデータを目にすることも多い。しかし、これは事実なのだろうか?リスクというのは一般的には株式や債券などの資産価格の値動きの大きさを表す指標であり、その大きさは様々な要因によって変化するため、長期投資で低減するというものではない(図2参照)。むしろ、投資時点からみれば、資産価格は時間とともに投資時点の価値から乖離していく可能性が高まるのが一般的である。
 とはいえ、「長期投資でリスクが低減する」という考え方が間違っているというわけではない。例えば、2013年1月末時点の過去1年間のTOPIX(配当込み)のリスク(以下、標準偏差を表す)は年率23%、同月末までの過去10年間のリスクは年率18%であり、長期投資でリスクは低減していることになる。短期投資では一時的に価格変動リスクが高まる可能性はあるが、長期投資ではそうしたリスクが平均化されたと考えることができるため、「長期投資でリスクが低減する」との考え方は完全に否定できるものではない。

図2 TOPIX(配当込み)のリスク推移

図2 TOPIX(配当込み)のリスク推移

出所:モーニングスター作成
リスクは各月末時点の標準偏差1年を表す。

今後はデータの見方に注意を

 資産運用に関するデータは様々なメディア、金融機関で目にする。しかし、そのデータ自体は正しくとも、”見せ方”や”期間”によっては導かれる結果は正反対にもなりうる。日本の景気回復期待を背景に、これから資産運用を始めようと考える投資家も少なくない中で、時には情報を疑うことも必要であろう。

(下村 優太)