fund_beginer fund_search fund_look



アナリストの視点(ファンド)

日本の投信業界の意識は「三流」、コストと情報公開で低評価―米モーニングスター調査

2013-05-23

 米モーニングスターはこのほど、世界24カ国の投信市場の環境をまとめたリポート「グローバル・ファンド・インベスター・エクスペリエンス(GFIE)」を発表した。同リポートは隔年で発表され、今回は第3回目。いつでも換金可能なオープンエンド型の公募投信の市場環境を評価対象として、「規制・税金」、「情報公開」、「手数料・費用」、「販売・メディア」という4つの項目で評価し、これらを合算してA(最高評価)からFまでランク付けした。「情報公開」と「手数料・費用」で高評価を得た米国がAと3年連続でトップとなった一方、南アフリカがDで最も評価が低かった。日本は昨年から評価を落としてCとなった(図表1)。GFIEで述べられた重要ポイントを報告し、日本がいわば「三流」と厳しい評価になった背景を探る。

図表1:各国総合評価

図表1:各国総合評価

注)↑前回調査より上昇 ↓低下 =変わらず ※新規調査対象
出所:米モーニングスター

ファンドマネジャーの名前など、情報公開が課題

 米モーニングスターが報告した調査の重要ポイントとしては、ファンドの販売方法、国・地域ごとの市場規模とコストの水準、情報公開の現状が挙げられる。特にファンドマネジャーの名前に関しては米国などが公開する一方、「日本において交付目論見書でファンドマネジャーの名前が掲載されることはまれで、経歴についての情報はない」と指摘するなど、今後の情報公開の在り方を議論するうえで示唆に富む結果となっている。

コミッションの禁止が世界的な動きに
 金融商品の提供会社が顧客への商品販売を仲介するフィナンシャル・アドバイザーに支払う手数料(コミッション)を禁止する動きが世界中で広がっている。英国ではコミッションの禁止を盛り込んだRDR(個人向け金融商品販売改革)が昨年末から実施された。豪州およびオランダでもコミッション禁止に向けた取り組みが進んでいる。コミッションの多寡によってアドバイザーが顧客に売りたい商品を選ぶと懸念されていることが背景にある。

欧州はファンドのコスト面で規模のメリット働かず
 欧州と米国の投信市場は同程度の規模だが、米国の方が手数料は大幅に低くなっており、ファンドのコストにおいて欧州は純資産額が増加した部分のコストが低下するといった規模のメリットが働いていない。

ほとんどの国でファンドマネジャーの名前は非公開
 ほとんどの国でファンドマネジャーの名前を非公開にしており、投資家はこれまでの運用の成功または失敗について、それが現在のファンドマネジャーの責任なのかどうかを知る術がない。今回の調査対象の中では中国とカナダ、米国のみがファンドマネジャーの名前と経歴の公開を義務付けている。

ポートフォリオ組入銘柄の公開に消極的な国も
豪州とニュージーランドはポートフォリオに組み入れる全銘柄の公開が義務付けられておらず、フランスと韓国、南アフリカ、英国はファンド保有者のみに全銘柄を公開するようになっており、投資家に対して望ましい姿勢ではない。

日本の評価、手数料の高さが影響

 こうした中、日本はC評価となったが、評価の内訳を見ると「規制・税金」がB(前回から上昇)、「情報公開」がC+(同変わらず)、「手数料・費用」がD+(同低下)、「販売・メディア」がB−(同低下)となっており、「手数料・費用」が足を引っ張っていることが分かる。米モーニングスターはファンドの資産加重ベースの平均エクスペンスレシオ(日本の信託報酬にほぼ相当するもの)について株式型、債券型など4つのタイプのファンドで各国を比較しているが、日本の国内籍ファンドは債券型で平均エクスペンスレシオが1.39%と最も高い水準、つまり高コストが低評価の主要因となっている(図表2)。

図表2:債券型ファンド(国内籍)の平均エクスペンスレシオの各国比較

図表2:債券型ファンド(国内籍)の平均エクスペンスレシオの各国比較

出所:米モーニングスター

 その他の項目においても、厳しい指摘が目立つ。「規制・税金」について、米モーニングターはファンド業界において複数ではなく単独の機関が取り締まることが規制コストや投信会社との効率的な意思疎通の観点から望ましいとしているが、日本では投信協会が国内籍ファンド、日本証券業協会が外国籍ファンドについてそれぞれ規則を定めており、統一性に欠けると指摘した。

 手数料・費用の次に評価が低かった「情報公開」では、交付目論見書が平易な言葉で説明されていないとしたほか、ほとんどのファンドは投資方針に関係する固有のリスクを明らかにせず、むしろ一般的なリスクの説明にとどまっているとした。コストに関しても、米モーニングスターが掲載することが望ましいとする信託報酬にその他費用を含めた年間のファンド保有コストが掲載されておらず、同コストの過去推移も記載がないと指摘。また、表示するリターンの期間は運用会社が任意に決めることができるため、恣意的になる点を問題視している。

 金融審議会が昨年12月に発表した「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」の最終報告では、理解しやすい形での運用報告書の提供、販売手数料や信託報酬などの説明の充実、リスクの分かりやすい表示が求められるといった問題提議がされたが、今回、海外との比較で改めて日本の投信業界の課題が浮き彫りになったと言えそうだ。

(坂本 浩明)

「アナリストの視点」よく読まれている記事(過去1週間)

アナリストの視点はRSSでも配信しています

バックナンバー