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アナリストの視点(ファンド)

米国リートファンド、人気回復傾向も量的緩和縮小で分配金に注意

2013-09-26

米国リートファンドの純資金流入が回復傾向

 米国リートファンド(モーニングスター類似ファンド分類「国際REIT・北米(為替ヘッジなし)」)の人気は一時的に低迷していたものの、最近になって回復しつつある。2011年、2012年と人気トップであった米国リートファンドは、純資産額上位のファンドの分配金引き下げなどをきっかけに、2013年1月には427億円の資金流出となった。しかし、その後は徐々に人気が回復し、2013年8月末までの年初来で3,698億円の純資金流入となっている。

 モーニングスター類似ファンド分類の中でも、2013年に入って人気が高まった国内株式ファンドや米国株式ファンドに次ぐ人気となっており、モーニングスター類似ファンド分類94分類中第5位となっている。また、2013年8月末時点の純資産額においても、ハイイールド債券ファンド(「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」)、エマージング債券ファンド(「国際債券・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」)に次ぐ、モーニングスター類似ファンド分類94分類中第3位の規模となっている。

米不動産市況の回復も、量的緩和の縮小懸念が影響

 しかし、投資対象である米国リートの運用成績は芳しくない。米国リートの運用成績をみると、5月にバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が量的緩和の規模縮小を示唆してから、調整が進んでいる。米国の不動産市況をみると、ニューヨークのオフィス賃料は上昇基調となっているものの、量的緩和の規模縮小によって、米国リートの資金調達コストが上昇するとの懸念が広がったことなどが影響しているようだ。

 リーマンショック以降、米国で金利低下が進む中、積極的な資金調達と投資を行ってきた。2012年は過去10年間で最高の資金調達額となっているほか、2013年においても8月末までで2012年を上回る。量的緩和の縮小による報道から金利は上昇しており、大規模な資金調達を行っているリートの収益を圧迫するほか、不動産投資自体が減退すると見られているようだ。

図1:米国リートの年間資金調達額の推移(公募)

図1:米国リートの年間資金調達額の推移(公募)

※1. 米国債利回り=「米国10年国債利回り」。2008年から2012年は各年末、2013年は8月末時点の米国債利回りを使用。
※2. 株式調達額、債券調達額、新規公開資金調達額はいずれもNSAREIT(米国不動産協会)のデータを使用。
出所:NSAREITのデータなどからモーニングスター作成

高い分配金利回りも、その継続性に注意が必要

 こうした中で米国リートファンドの平均リターン(類似ファンド分類インデックス)は2013年8月末までの年初来で7.32%となっている。同期間、米ドルが円に対して13.61%上昇となっていることから為替の変動分を考慮すると、低いパフォーマンスであり、他の海外資産に投資するファンドと比較しても劣後している。

図2:米国リートファンドの分配金利回りと米国リートの配当利回り

図2:米国リートファンドの分配金利回りと米国リートの配当利回り

※1. 期間は2008年8月末から2013年8月末
※2. 米国リート配当利回り=「FTSE NAREIT All REITsインデックス」の利回り
出所:「Morningstar Direct」よりモーニングスター作成。

 一方で、2013年8月末時点の米国リートファンドの平均分配金利回りは10%を超えている。特にここ数年は10%〜12%程度で推移していることから、人気を牽引している模様だ。ただし、米国リートファンドの平均分配金利回りは、ここ数年、米国リートの配当利回りを大きく上回って推移している。つまり、多くの米国リートファンドが組入れるリートの配当収入以上に、分配金を支払っているとみられる。

 ファンドの分配金利回りとリートの配当利回りの差額は、主に会計上の差異(収益調整金)などをもとにして分配金を支払っていることなどが影響している。収益調整金などをもとにして分配金を出し続けると、基準価額が低下することになる。実際に、投資家が享受するリターンは分配金と基準価額の騰落を合わせたリターンとなる。そのため投資家は、分配金利回りよりも、分配金と基準価額の騰落を合わせたリターン(トータルリターン)で評価すべきだろう。

 なお、各ファンドの運用報告書をみると、分配金のうち「当期の収益」が占める金額が示されている。「当期の収益」には配当収益と売買益が含まれており、それ以外の収益調整金などが「当期の収益以外」に含まれている。実際の運用報告書には、例えば2013年8月の分配金が80円、そのうち「当期の収益」は50円、「当期の収益以外」は30円などと、運用報告書の対象となる決算月の分配金の内訳が記載されている。運用報告書を確認した結果、「当期の収益」の割合が低い場合には、米国リートファンドへ投資している投資家は今後の運用戦略の見直すべきだろう。

(辻 哲)

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