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アナリストの視点(ファンド)

NISAで毎月分配ブーム終焉か―「複利の力」考慮した選択を

2013-10-10

 NISA(少額投資非課税制度)の口座開設申請手続きが10月1日にスタートし、2014年1月のNISA開始がいよいよ視野に入ってきた。手続き開始初日の申請件数は約358万件と、投資家の関心の高さが表れた。NISAを機に投資デビューする資産形成層も多いとみられ、市場活性化への期待も高まっている。

毎月分配型がNISA向きでない3つの理由

 NISA開始を前に改めて注意したいのが、毎月決算型など分配頻度の高いファンドへの投資だ。なぜ、NISAで毎月分配型ファンドへの投資に慎重になるべきなのか。理由は3つある。

 1つ目は、分配金の受け取りにおいてNISAの非課税メリットを受けられない可能性がある点だ。普通分配金は運用収益から支払われる分配金で課税対象だが、元本払戻金(特別分配金)は元本を取り崩して支払われる分配金でもともと非課税なことから、元本払戻金で元本を取り崩し続けるようなファンドではNISAの非課税メリットを享受することができない。

 2点目は、受け取った分配金を再投資した場合に、非課税枠を消費してしまうことだ。再投資分も含め年間の投資額が非課税枠の100万円を超えると、その分は一般口座・特定口座で投資されることになり、課税対象になる。こうした制約があることから、長期にわたり分配金を継続的に再投資したい投資家にとってNISAは使い勝手がよいとは言えない。

 毎月分配型がNISA向きではない最後の理由は、複利効果の問題だ。複利とは、ある資産へ投資することによって得られた収益を再投資することで、資産が雪だるま式に増えていくことだ。その対となる考え方が単利で、元本から得られた収益はそのまま受け取り、再投資はしない。毎月分配型ファンドは運用収益が得られたとしても、分配金として支払われてしまうため、再投資による複利効果をフルに得たい投資家には不向きだ。複利効果は長期であるほど威力を発揮するため、長期投資を前提としたNISAではなおさらだ。

 複利効果を実感するため、長期投資のシミュレーションをしてみよう。ここでは話を分かりやすくするため、投資期間などNISAの制限は考慮していないが、長期で複利効果を享受することの重要さは分かるだろう。例えば、1年に5%ずつ値上がりする資産にそれぞれ100万円投資をし、単利、複利で20年間運用したと仮定する。5年後には単利、複利ともに約1.3倍だが、資産がその後も5%ずつ値上がりすると投資開始から20年後には単利は2.0倍、複利は約2.7倍と、リターンに大きな差が付くことが分かる。複利効果は資産価格が上昇すればプラスに働くが、下落局面ではマイナスに働き損失が大きくなってしまうため、その点は注意が必要だが、それでもNISAのように長期投資で上昇局面に転じることを待てるのであれば、複利効果に期待した運用は有効だろう。

図1:単利と複利の元利合計の違い(5%上昇)

図1:単利と複利の元利合計の違い(5%上昇)

出所:モーニングスター作成

根強い人気の毎月分配型、18カ月間連続で資金流入

 複利効果の面で不利な毎月分配型だが、そうした事実とは裏腹に投資家の間では根強い人気がある。図2に示すように、毎月決算型は2013年8月までの過去18カ月間連続で資金流入となっており、相変わらずの人気だ。その傾向は国内株式市場の回復が顕著になり、投資家心理が改善し始めた年初から特に強くなった。

図2:決算頻度別 純資金流出入推移

図2:決算頻度別 純資金流出入推移

※1 期間は2010年8月から2013年8月
※2 確定拠出年金向け、ラップ口座向け、ETFなどを除く
※3 日経平均株価は月次ベース
出所:モーニングスター作成

 こうした日本での分配金への高いニーズは、米国と比べるとよく分かる。実際、2013年8月末時点の日本と米国の純資産残高上位5ファンドを比較すると、日本では全てが毎月決算型ファンドであるのに対して、米国では毎月分配型ファンドは1本のみで、年4回分配型ファンドが多く、年1回分配型ファンドもランクインしている。ファンドへの投資において分配金を重視する傾向が強い日本の投資家に比べて、米国の投資家は分配金だけではなく、複利効果も期待したファンド選びをしている傾向が見て取れる。日本の投資家がNISAを契機に米国のようなファンド選びのスタイルに移行するか、注目である。

図3:純資産残高ランキング上位5ファンド

ファンド名(米国) 百万ドル 分配頻度
PIMCO Total Return Fund 251,105 毎月分配
Vanguard Total Stock Market Index Fund 230,051 年4回分配
Vanguard Institutional Index Fund 138,973 年4回分配
Vanguard Five Hundred Index Fund 130,753 年4回分配
American Funds Growth Fund of America 123,491 年1回分配
ファンド名(日本) 百万円 決算頻度
グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型) 1,350,389 毎月決算
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド 971,604 毎月決算
新光 US-REITオープン 904,790 毎月決算
ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配) 839,406 毎月決算
フィデリティ・USリートB(H無) 740,601 毎月決算

※1 2013年8月末時点
※2 米国のファンドランキングはマネー・マーケット、ファンド・オブ・ファンズを除くオープンエンドファンドが対象
※3 日本のファンドランキングは確定拠出年金向け、ラップ口座向け、ETFなどを除くファンドが対象
出所:モーニングスター作成

NISAで分配頻度の少ないファンドが脚光

 日本では今後も退職後に安定的なインカムを得たい投資家を中心に、毎月分配型に一定のニーズがあると予想される。とは言え、分配金の支払いを極力抑えたファンドが足元で相次ぎ設定されていることを考えると、長期投資が前提となるNISAでは複利効果を最大限に活かせるファンドがトレンドになりそうだ。NISAを機に初めて投資をする資産形成層は、NISAの制度内容と毎月分配型の特性、複利効果を理解した上で、マイホーム購入費用の一部に充てるなど資産運用の目的に合せて資産配分を行い、ファンド購入をしてもらいたい。

(江黒 博樹)

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