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アナリストの視点(ファンド)

コスト高ファンドに「警鐘」―バリュー型は影響大―

2013-11-05

 多くの投資家にとって新たにファンドを購入する絶好の機会となるNISA(少額投資非課税制度)がいよいよ来年から始まる。NISA開始を前に注意したいのが、信託報酬がカテゴリー平均より高いアクティブファンドへの投資だ。信託報酬とはファンドを保有し続ける限り支払う必要がある運用管理費用のことだが、なぜ、こうしたコストの高いアクティブファンドへの投資に慎重になるべきなのか。それは、コストはリターンを確実に押し下げる要因となるからだ。今回、国内株式ファンドの中でも残高が大きいカテゴリーである大型株を対象に、「国内大型グロース」、「国内大型ブレンド」、「国内大型バリュー」の2013年9月末までの過去5年間の運用成績を調べた結果、コストの高いファンドはコストの低いファンドに対してトータルリターンが劣後する傾向にあることが分かった。

コストの高いアクティブファンドに資金殺到

 調査結果を示す前に、まずは資金動向を見てみよう。2013年9月末までの年初来の資金動向では、低いコストで運用しているアクティブファンドよりもコストが高いアクティブファンドに人気が集まっている。特にアベノミクス相場が注目を集めた年前半は資金が殺到した。また、コストの高いアクティブファンドの中でも通貨選択型や毎月決算型に資金が集中している。

図表1:国内株式大型ファンドの純資金流出入推移

図表1:国内株式大型ファンドの純資金流出入推移

※1 2013年9月末時点でモーニングスター類似ファンド分類「国内大型バリュー」、「国内大型ブレンド」、「国内大型グロース」に属するファンドが対象(確定拠出年金専用ファンド、ラップ口座専用ファンド、ETF(上場投資信託)を除く)
※2 信託報酬等(税込)が類似ファンド分類内で算出される平均の信託報酬等(税込)を下回るファンドを「低コストファンド」、上回るファンドを「高コストファンド」として計算
出所:モーニングスター作成

「国内大型バリュー」で顕著な「低コスト・高リターン」

 2013年9月末時点において、運用期間5年以上で国内株式の大型株を主要投資対象とするファンド253本(モーニングスター類似ファンド分類「国内大型グロース」、「国内大型ブレンド」、「国内大型バリュー」)の過去5年間のトータルリターンと対平均コストとの関係を調べた結果、コストの高いアクティブファンドはコストの低いアクティブファンドに比べて運用成績が悪い傾向にあることが分かった。類似ファンド分類別のベストリターン上位5本とワーストリターン下位5本の運用成績と対平均コストとの関係を示したのが図表2だ。

 「国内大型ブレンド」と「国内大型バリュー」のベストリターンのファンドは図表2の右上(青色で示した箇所)部分に集まり、同分類のワーストリターンのファンドは左下(赤色で示した箇所)に集まる傾向があった。つまり、パフォーマンスはコストが低いほど良好で、逆にコストが高いと振るわない結果となっている。

図表2:ベスト&ワーストリターン・対平均コスト分布図(上位下位5ファンド)

図表2:ベスト&ワーストリターン・対平均コスト分布図(上位下位5ファンド)

※1 2013年9月末時点でモーニングスター類似ファンド分類「国内大型グロース」、「国内大型ブレンド」、「国内大型バリュー」に属するファンドが対象(確定拠出年金専用ファンド、ラップ口座専用ファンド、ETF(上場投資信託)を除く)
※2 横軸「+/−類似ファンド分類平均差(信託報酬等(税込)、%)」は類似ファンド分類に属する各ファンドの信託報酬等(税込)の単純平均で算出した信託報酬等(税込)と各ファンドの信託報酬等(税込)との差分
※3 縦軸「5年トータルリターン(%、年率)」は2013年9月末までの過去5年間のトータルリターン
※4 信託報酬等(税込)は監査報酬含む税込み
出所:モーニングスター作成

 「低コスト・高リターン」の関係が特に顕著だったのは「国内大型バリュー」で、ベストリターン上位5位中4本が低コストで、逆にワーストリターンにおいては下位5位中4本がコストの高いファンドとなっていた(図表3)。ベストリターン上位にランクインした「NZAM 日本好配当株オープン(3カ月決算型)」の信託報酬等(税込)は調査対象の「国内大型バリュー」43本中第3位の低コストファンド、「システム・オープン」では第1位の低コストファンドとなっている。

図表3:ベスト&ワースト リターンランキング(国内大型バリュー)

ベストリターン(国内大型バリュー)

ファンド名 トータルリターン
5年(年率)
運用コスト
信託報酬等
(税込)
+/‐類似F分類
フィデリティ・日本バリュー・ファンド 9.25% 1.67 0.23
NZAM 日本好配当株オープン(3カ月決算型) 6.99% 1.01 -0.44
フィデリティ・日本配当成長株F(分配重視型) 6.22% 1.23 -0.22
フィデリティ・日本配当成長株投信 6.19% 1.23 -0.22
システム・オープン 6.14% 0.79 -0.66

ワーストリターン(国内大型バリュー)

ファンド名 トータルリターン
5年(年率)
運用コスト
信託報酬等
(税込)
+/-類似F分類
ダイワ 金融新時代ファンド -0.68% 1.60 0.15
(セクター10) I金融 -0.43% 1.63 0.18
(レインボーF) ファイナンシャル・情報株F 0.10% 1.49 0.04
コア30インデックス 0.14% 0.85 -0.60
(レインボーF) 市況産業F 0.76% 1.49 0.04

※1 2013年9月末時点で運用期間が5年以上のモーニングスター類似ファンド分類「国内大型バリュー」に属するファンドが対象(確定拠出年金専用ファンド、ラップ口座専用ファンド、ETF(上場投資信託)を除く)
※2 類似ファンド分類の信託報酬等(税込)の平均は単純平均で算出
※3 信託報酬等(税込)は監査報酬含む税込み
出所:モーニングスター作成

コストはなぜパフォーマンスに響くのか

 なぜ、「低コスト・高リターン」という結果になったのだろうか。それは、コストはリターンを確実に押し下げる要因となるからだ。基準価額の上昇・下落要因は(1)投資先の株式や債券などの価格の上昇・下落、(2)分配金の支払い(下落要因)、(3)運用費用の支払い(下落要因)の3つがある。この3つ目に当たるのがコストで、信託報酬や監査報酬など投信の運用、管理に必要な費用が差し引かれ、基準価額はその分下落する。個別ファンドごとのコストの差は売買頻度や運用スタッフの報酬の差などを反映しており、ベストリターン上位に入ったファンドは確実に響くコストを低く抑えていることが良好な運用成績につながっている。

 なお、「国内大型グロース」においては、リターン上位5ファンドの多くが高コストのファンドであった。これは企業の成長性を重視するグロース型ファンドが今回のアベノミクス相場のような急激な上昇相場を経てリターンが向上し、ファンドの運用成績にはコストの高さがそれほど影響しなかったのかもしれない。それでも、国内大型グロースのリターン下位5ファンドに目を転じると、4ファンドが類似ファンド分類平均を上回るコストとなっており、グロースといえども高いコストが重しになったと言えそうだ。

コストは投資家がコントロールできる数少ない要素

 アクティブファンドの手数料は、ベンチマーク以上のリターンを得るために支払うものと考えれば、類似ファンドとの相対コストにも気を配りたいところである。モーニングスターのホームページでファンドを選ぶ際は、信託報酬等合計が類似ファンド分類平均(「カテゴリー平均」と表示)を下回っているファンドに注目したい。投資家がコントロールできる数少ない要素であるコストを抑えることがパフォーマンス向上のための確実な手段となる。

(江黒 博樹)

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