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アナリストの視点(ファンド)

株式と債券、アベノミクス相場で失われた逆相関

2014-01-14

 一般的に反対の値動きをすると言われる株式と債券だが、常にそうなるとは限らない。日本では株式と債券の相関係数が2012年末以降、高まっている。相関係数は2つのデータの連動性を示す指標で、−1から1までの間の数値を取り、数値が高いほど連動性が高い。国内株式と国内債券の相関係数(過去1年間の月次リターンに基づく)は2012年末時点で−0.72と、正反対の値動きである逆相関の−1に近い水準だったが、アベノミクス相場で株価が上昇基調を強める中、相関係数はマイナスからプラスに転じた。2013年末時点では0.15と同年7月末に付けた直近ピークの0.18に接近している(図表1)。依然として高い連動性とは言えないものの、−1に近かった2012年末に比べ分散効果は薄れてきた。

図表1:国内株式と国内債券の相関係数推移

図表1:国内株式と国内債券の相関係数推移

※1 国内株式=TOPIX(配当込み)、国内債券=NOMURA−BPI総合
※2 期間は2013年1月〜12月、相関係数は各月末までの1年間の月次リターンに基づく
出所:モーニングスター

 なぜ、国内株式と国内債券の相関係数は高まったのだろうか。最大の理由として考えられるのが日銀の金融政策だ。日銀は2013年4月にデフレ脱却を目指し、日銀が経済全体に供給するお金の総量であるマネタリーベースを2年間で2倍に拡大し、長期国債やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の買入れ額を増大させる「量的・質的金融緩和」を導入した。日銀が大量の国債を購入することにより長期国債の価格に上昇圧力がかかる一方、積極的な金融政策を背景に株価も上昇トレンドを強めた。通常、景気回復を織り込み債券が売られてもおかしくない局面だが、日銀による異次元の金融緩和がそれを許さず、「株高・債券高」につながっている。

米国でも株式と債券の相関係数がプラスに

 株式と債券の相関係数が高まっているのは日本だけではなく、米国も同様だ。過去3年の米国の株式と債券の相関係数を見ると、2013年末にかけて高まっている(図表2)。米国はいち早く量的金融緩和の縮小に着手したが、今後も株式と債券の相関係数がプラスで推移するかは注目となる。これまで株式と債券価格の両方の下支えとなってきた緩和的な金融政策が転換し、金融引き締めに向かえば、いずれの価格に対しても下押し圧力が強まる可能性がある。翻って日本について見ても、株高要因である日銀の追加緩和観測が後退すれば、株式と債券にとって両方の売り材料となろう。

図表2:米国の株式と債券の相関係数推移

図表2:米国の株式と債券の相関係数推移

※1米国株式=S&P500(配当込み)、米国債=シティグループ米国BIG債券インデックス
※2 期間は2011年1月〜2013年12月、相関係数は各月末までの1年間の月次リターンに基づく
出所:モーニングスター

コモディティなど幅広い資産に分散を

 日米ともに株式と債券の分散効果が低下してきた現状、より幅広い資産への分散によりポートフォリオのリターンを安定化させるにはどうすればよいだろうか。その参考として、図表3は主要資産の相関係数を見たものだ。

図表3:主要資産の相関係数

  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
(1)国内株式   0.15 0.56 0.57 0.76 0.55 0.66 0.85 0.00
(2)国内債券 0.15   0.71 -0.13 -0.17 0.03 -0.07 0.20 -0.14
(3)国内REIT 0.56 0.71   0.07 0.08 0.12 0.07 0.43 -0.04
(4)先進国株式 0.57 -0.13 0.07   0.88 0.87 0.87 0.74 0.51
(5)先進国債券 0.76 -0.17 0.08 0.88   0.82 0.92 0.81 0.36
(6)新興国株式 0.55 0.03 0.12 0.87 0.82   0.89 0.75 0.21
(7)新興国債券 0.66 -0.07 0.07 0.87 0.92 0.89   0.85 0.20
(8)世界REIT 0.85 0.20 0.43 0.74 0.81 0.75 0.85   0.08
(9)コモディティ 0.00 -0.14 -0.04 0.51 0.36 0.21 0.20 0.08  

※1 国内株式=TOPIX(配当込み)、国内債券=NOMURA−BPI総合、国内REIT=東証REIT指数(配当込み)、先進国株式=MSCI−KOKUSAI(配当込み)、先進国債券=シティグループ世界国債除く日本、新興国株式=MSCIエマージング(配当込み)、新興国債券=JPモルガンEMBIグローバル ディバーシファイド、世界REIT=S&PグローバルREITインデックス(配当込み)、コモディティ=S&P/GSCI商品指数
※2 いずれの指数も円換算
※3 相関係数は2013年12月末時点の1年間の月次リターンに基づく
出所: モーニングスター

 例えば、国内株式を見ると、コモディティとの相関係数が0.00と国内債券より低く、分散投資の対象として検討する価値があるだろう。また、国内債券と国内株式の相関係数はすでに説明した通り0.15とプラスだが、国内債券とコモディティの相関係数は−0.14とマイナスとなっている。各資産のリターンだけに注目するのではなく、分散投資によりポートフォリオ全体で良好なリスク・リターンが達成できるかを意識したい。

(坂本 浩明)

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