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アナリストの視点(ファンド)

視界不良の日本株、「全天候型」投信で攻める

2014-04-22

 国内株式市場の先行き不透明感が強まっている。日経平均株価は4月第2週に1,100円を超える急落となったものの、翌週に500円以上の大幅反発を記録した。年初から下落基調が続くが(図表1)、今後も一本調子での上昇は期待しにくく、日銀の追加緩和をめぐる思惑や消費増税の影響などで市場が乱高下する展開を想定しておく必要がありそうだ。

図表1:日経平均株価の推移

図表1:日経平均株価の推移

出所:モーニングスター作成

 こうした中で注目されるのが、上昇相場にも下落相場にも強く、様々な市場環境に対応できるいわば「全天候型」の投資信託だ。指数を上回るパフォーマンスを目指す日本株のアクティブファンドは、上昇相場に強いが下落相場に弱い、もしくはその逆のケースが多い。しかし、一部のファンドは上昇・下落相場の両局面で良好な運用成績を残している。今回は「アップサイド・キャプチャー・レシオ」と「ダウンサイド・キャプチャー・レシオ」と呼ばれる指標を用いて、上昇相場にも下落相場にも強いファンドをスクリーニングした。

「アップサイド/ダウンサイド・キャプチャー・レシオ」とは何か

 スクリーニング結果を紹介する前に、アップサイド・キャプチャー・レシオとダウンサイド・キャプチャー・レシオの概要を説明する。両指標は、上昇相場と下落相場のそれぞれでファンドがベンチマークをどの程度上回ったかを表す。アップサイド・キャプチャー・レシオの算出方法は以下の通りだ(図表2)。ダウンサイド・キャプチャー・レシオは同様の計算をベンチマークが下落した月だけを対象に行う。

図表2:アップサイド・キャプチャー・レシオの計算式

図表2:アップサイド・キャプチャー・レシオの計算式

※リターン平均は幾何平均で算出
出所:モーニングスター作成

 もし、アップサイド・キャプチャー・レシオが100を上回れば、ベンチマークがプラスだった月に平均してベンチマークより高い上昇率だったことを意味し、数字が大きいほど良い。一方、ダウンサイド・キャプチャー・レシオが100を下回ればベンチマークがマイナスだった月に平均してベンチマークより低い下落率だったことを意味し、数字が小さいほど良い。

 米モーニングスターではウェブサイトで各ファンドの両指標を掲載することで、トータルリターンだけでは分からない、上昇・下落相場におけるパフォーマンスを示している。図表3は、米モーニングスターのウェブサイトに掲載されているバンガードのアクティブファンド「Vanguard PRIMECAP Inv」のデータだが、「↑」で示されるアップサイド・キャプチャー・レシオがすべての期間で100を上回り、「↓」で示されるダウンサイド・キャプチャー・レシオは過去5年を除くすべての期間で100を下回る、非常に優秀な結果となっている。カテゴリー平均と比べても優れていることが示されている。

図表3:米モーニングスターのウェブサイトで表示されるアップサイド/ダウンサイド・キャプチャー・レシオ(「Vanguard PRIMECAP Inv」の場合)

図表3:米モーニングスターのウェブサイトで表示されるアップサイド/ダウンサイド・キャプチャー・レシオ(「Vanguard PRIMECAP Inv」の場合)

※米モーニングスターでは米国株ファンドについて規模やスタイルに関わらず、S&P 500(配当込み)をベンチマークとして同レシオを算出している
出所:モーニングスター作成

トップは「三菱UFJ グローバルイノベーション」

 今回、ベンチマークをTOPIX(配当込み)として、2014年3月末までに10年以上の運用実績があるアクティブ運用の国内株式ファンド(DC、SMA、ETFなどを除く)228本を対象に両指標でスクリーニングを行ったところ、過去10年の運用成績に基づくアップサイド・キャプチャー・レシオが100を上回り、かつダウンサイド・キャプチャー・レシオが100を下回ったファンド(つまり、上昇・下落相場の両局面でベンチマークより優れた運用成績を残したファンド)は21本(図表4)となり、全体(228本)の1割に満たなかった。

図表4:上昇・下落相場の両方に強い国内株式ファンド

ファンド名 アップサイド ダウンサイド アップサイドとダウンサイドの差
三菱UFJ グローバルイノベーション 114.82 82.25 32.57
J-Stockアクティブ・オープン 114.69 90.10 24.59
スーパー小型株ポートフォリオ 105.79 86.08 19.71
三井住友・中小型株ファンド 102.67 83.91 18.76
(日本株セレクト・オープン) 日本・小型株 112.16 98.70 13.46
大型株ファンド 111.89 99.61 12.28
大和 ベストチョイス・オープン 109.45 98.13 11.32
フィデリティ・日本バリュー・ファンド 107.39 96.32 11.08
新光 小型株オープン 102.06 90.98 11.08
中小型株式オープン 105.28 94.58 10.69
ストラテジック・バリュー・オープン 104.15 94.03 10.12
NS-21成長株オープン 103.33 94.41 8.92
シュローダー 日本ファンド 102.13 93.39 8.73
スーパートレンドオープン 104.69 96.60 8.08
GS 日本小型株ファンド 102.36 95.24 7.12
日本新生ファンド 101.91 94.92 6.99
スパークス・ジャパン・エクイティ・ファンド 101.51 96.30 5.20
ジャパンニューエイジオープン 103.80 98.81 4.99
リサーチ・アクティブ・オープン 101.11 97.46 3.65
MHAM 日本バリュー株オープン 101.61 98.52 3.08
新光 ジャパンオープン 101.05 99.27 1.78

※アップサイド・キャプチャー・レシオからダウンサイド・キャプチャー・レシオを引いた値で降順。両指標の差が大きいことは、上昇相場でベンチマークを上回りやすく、下落相場でベンチマークを下回りにくいことを意味する
※2014年3月末時点
出所:モーニングスター作成

 アップサイド・キャプチャー・レシオが114.82と最も大きく、ダウンサイド・キャプチャー・レシオが82.25と最も小さかったのが「三菱UFJ グローバルイノベーション」だ。同ファンドは2013年までの暦年の過去10年間のトータルリターンをみると、TOPIX(配当込み)を8年間上回り、特に2005年は77.99%も大幅に上回っている。2009年〜2013年は5年連続で同指数をアウトパフォームし、「モーニングスター ファンド オブ ザ イヤー」を受賞した2011年は同指数のリターンが▲17.00%となる中、同ファンドは▲5.43%と持ちこたえた。一方、アベノミクス相場入りした2012年、2013年といずれも超過収益を獲得しており、市場環境を問わず優れた運用成績を残している。

長期で良好なパフォーマンスも、資金は集まらず

 図表4で紹介したファンドの上位10本はほとんどがモーニングスターレーティング4ツ星または5ツ星であり、リスクを抑えながら高いリターンを達成している。もっとも、これら10ファンドの純資産額はすべて100億円未満であり、資金は集まっていない。上昇相場と下落相場の両方に強いという特徴が、国内株式市場の先行きが見通しにくい今、もっと注目されてよいだろう。

(坂本 浩明)

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