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アナリストの視点(ファンド)

「混ぜるな危険!」ハイイールド債券との組み合わせに注意

2014-08-05

 「ハイイールド債券ブームがついに終焉か」――。そう思わせる資金の動きが7月の米国籍ファンドであった。米モーニングスターカテゴリー「High Yield Bond(ハイイールド債券)」に属するファンドが約61億ドル(6,100億円規模)の純資金流出を記録したのだ。流出規模としては、2013年6月以来1年ぶりの大きさとなる(図表1)。

図表1:米国籍ハイイールド債券ファンドの純資金流出入額推移(推計値)

図表1:米国籍ハイイールド債券ファンドの純資金流出入額推移(推計値)

出所:Morningstar Directにより、モーニングスター作成

イエレンFRB議長、“過熱”ぶりを警戒

 今回の資金流出の背景を説明する前に、ハイイールド債とは何かを改めて確認しておきたい。ハイイールド債券とは、格付けが投機的水準と言われる「BB」格以下の債券で、信用リスクが高い分、高い利回りが見込める商品だ。2014年7月末時点では日本の10年国債利回りが0.53%、米10年国債利回りが2.56%にとどまるのに対して、米国のハイイールド債券の利回りは6.18%と高い。米国ではリーマン・ショック後に超低金利が続き、高利回り商品へのニーズが高まったことで、ハイイールド債券ファンドに資金が流入。暦年では2013年まで6年連続で流入超過となり、この間の純資金流入額は合計で730億ドル(約7兆3,000億円)を超えた。

 売れ筋だったハイイールド債券ファンドがなぜ、ここにきて大規模な資金流出に見舞われたのか。理由は過熱感だ。ハイイールド債券への投機的な資金流入とバブルの発生を警戒する人物の一人が、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長。7月の議会証言では、行き過ぎたハイイールド債券の発行増加に懸念を示したほか、価格に過熱感があると警告した。実際、ハイイールド債券の割安・割高度合いを示す指標として注目される、米国10年債利回りに対する上乗せ金利(スプレッド)は6月末に3.25%となり、月次ベースではリーマン・ショック前の2007年6月以来7年ぶりの割高水準となっていた(図表2)。今年の10月にはハイイールド債券のような高リスク資産にとって追い風であった米量的金融緩和策が終了する見通し。こうした中、投資家は割安感が薄れたハイイールド債券への投資に一段と慎重になる可能性がある。

図表2:米ハイイールド債券のスプレッド推移(1996年12月末〜2014年7月末)

図表2:米ハイイールド債券のスプレッド推移(1996年12月末〜2014年7月末)

※ スプレッドは米10年国債利回りと米ハイイールド債券指数(BofAML US HY Master II Constd)の差として算出
出所:Morningstar Directにより、モーニングスター作成

日本でも人気化、シェアは10年で7倍

 米国でハイイールド債券の価格が下落トレンドに転じれば、日本の投資家にとっても“対岸の火事”では済まされない。国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用ファンド、ラップ口座専用ファンド、ETFなどを除く、以下同様)のうち、債券に投資するファンドの純資産残高シェアを見ると(図表3)、「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」は10年前の2004年7月に4%に過ぎなかったが、2014年7月には28%と最大シェアを占めるまでに成長している。

 一方、利回り面ではハイイールド債券に劣る「国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」のシェアはこの10年間で43%から10%に急減した。異例の低金利の中、投資家が高い利回りの商品を求めるのは米国投資家だけでなく、日本の投資家も同じだ。「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」の純資産残高は7月末時点で6兆765億円と巨額であるだけに、ひとたびハイイールド債券の価格が大きく変動すれば、国内投資家への影響は少なくないだろう。

図表3:債券型ファンド全体におけるハイイールド債券ファンドのシェア

図表3:債券型ファンド全体におけるハイイールド債券ファンドのシェア

※ モーニングスターカテゴリーに基づく((F)は為替ヘッジなし)
出所:モーニングスター作成

ハイイールド「債券」だが、株式と高い連動性

 特に現在のようにウクライナやパレスチナ情勢の緊迫化など地政学リスクが世界各地で高まっている状況において、値動きが大きい資産を持ち過ぎることには注意が必要だ。ハイイールド債券は、債券と言っても安全資産としてリスク回避局面に強いわけではなく、むしろ株式と同じような値動きをする。図表4は、海外株式に投資するファンドとハイイールド債券に投資するファンド(いずれも為替ヘッジなし)のパフォーマンスの平均値を指数として示したものだが、リーマン・ショックの際は海外株式と同様に急落している。ハイイールド債券の2008年通年の下落率は、ハイイールド債そのものの下落に加えて円高のダブルパンチで▲42%と、大きく下落した。ハイイールド債券ファンドの下落率は海外株式ファンドの▲55%ほどではなかったが、国内株式ファンド(国内大型ブレンド)の▲43%にほぼ匹敵する大きな下げ幅となった。

図表4:海外株式ファンドとハイイールド債券ファンドのパフォーマンス(2004年6月末〜2014年6月末)

図表4:海外株式ファンドとハイイールド債券ファンドのパフォーマンス(2004年6月末〜2014年6月末)

※ モーニングスターインデックス(カテゴリー、単純)に基づく((F)は為替ヘッジなし)
出所:モーニングスター作成

 ハイイールド債券の利回りの高さが投資家のニーズを満たしているのは事実であり、今後もそうした役割が期待されるだろう。しかしながら、ポートフォリオを構築する際は、上記したリスクの高さを考慮すべきだ。ポートフォリオの大半がハイイールド債券ファンドで占められていたり、分散投資していても同じようにリスクの高い商品ばかりであったりすると、下落局面で大きな損失を被る恐れがある。

ハイイールド債券との相関係数が高い資産は?

 図表5は、ハイイールド債券ファンドと各カテゴリーのファンドとの相関係数について、相関係数が最も高い5つのカテゴリーを一覧にしたものだ。相関係数は資産価格の連動性を表すもので、1が完全な連動、−1が正反対の値動きとなる。

図表5:ハイイールド債券ファンドとの相関係数

相関係数が高いカテゴリー 相関係数
国際株式・エマージング・複数国(F)(単純) 0.96
国際債券・転換社債(F)(単純) 0.96
国際債券・グローバル・含む日本(F)(単純) 0.95
国際債券・エマージング・複数国(F)(単純) 0.95
国際株式・グローバル・含む日本(F)(単純) 0.95

※1.モーニングスターインデックス(カテゴリー、単純)に基づく((F)は為替ヘッジなし)
※2.2014年6月末までの過去5年間の「国際債券・ハイイールド債(F)(単純)」と各カテゴリーの月次リターンに基づき、相関係数を計算。過去5年分のリターンがないカテゴリーは除く
出所:モーニングスター作成

 相関係数が高い5つとしては、海外の株式や債券に為替ヘッジを行わずに投資するファンドのカテゴリーが主に該当した。これらのカテゴリーに属するファンドとハイイールド債券ファンドを一緒に保有している投資家は、下落局面で分散効果が十分に発揮されない恐れがあるため、要注意だ。なお、モーニングスターウェブサイトの「投資信託」ページにある「相性のよいファンドから探す」機能を利用することで、投資家自身がモーニングスターカテゴリー同士の相関係数を簡単に調べることができるので、これにより効果的な分散投資を実践して欲しい。

(坂本 浩明)

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