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アナリストの視点(ファンド)

日本で実質トップになったREITファンドが、海外で不人気なのはなぜ?

2014-08-26

日本のREITファンドの世界シェアは3割に

 2014年7月末時点における大分類別純資産総額(※1)のシェアをみると、海外REITが13.3%、国内REITが4.5%と、両者の合計が先進国債券を0.5%上回り、実質的にはREITファンドが第1位となった。8月に入ってからも、モーニングスターの推計(23日まで)では、先進国債券は約500億円の資金流入超過となったものの、海外REITも約1,300億円、国内REITも約70億円の資金流入超過となっており、REITファンドのシェアは一段と高まりそうだ。

 こうした日本でのREITファンドの人気の高まりは、グローバルでも影響が大きい。国内籍のグローバルREITファンドの純資産総額(※2)は、金融危機直後の2008年12月末時点では約120億ドルにとどまっていたものの、2014年7月末時点では約940億ドルと、約8倍に拡大し、シェアも15%から30%へと大幅に上昇した(図表1参照)。ファンドを通じた「ジャパンマネー」は、今や米国に次ぐ世界第2位のREITの買い手となった。

(※1)国内公募追加型株式投信(DC、SMA、ETF等除く)、以下、円ベースの国内籍ファンドは同一基準
(※2)オープンエンドファンド(ETF含む、MMF、ファンドオブファンズ除く)、以下、ドルベースのファンドは同一基準

図表1:グローバルREITファンドの純資産総額の推移(米ドルベース)

図表1:グローバルREITファンドの純資産総額の推移(米ドルベース)

※ 期間:2008年12月から2014年7月
※ 各月末時点におけるGlobal Category「Real Estate Sector Equity」に属するファンド
出所:MS Directより、モーニングスター作成

REITの市場規模はブラジルや南アの株式市場と同水準

 ただし、REITを資産運用の中心にすえる日本は、世界的にみるとかなり異質だ。そもそも、2014年7月末時点におけるグローバルREITファンドの国籍別シェアでは、米国が約50%、日本が約30%、豪州が約5%と、上位3ヵ国で85%を占める。一方で、各国の全ファンドに対するREITファンドのシェアは、2割に迫る勢いの日本とは対照的に、米国は1%、豪州も2%前後での推移が続いている。その理由の一つとして、REITは市場規模が小さく、大量の資金を運用するには不向きな点が挙げられる。2014年7月末時点における時価総額(※3)を比較すると、グローバル株式市場の約60兆ドル、先進国債券市場の21兆ドルに対して、グローバルREITは約1兆ドルにとどまる。ちなみに、株式市場で1兆ドル程度の規模といえば、ブラジルや南アフリカなどの新興国が中心だ。

(※3)世界の株式市場は「World Federation of Exchanges」、先進国債券市場は「シティ世界国債インデックス」、世界のREITは「S&P Global REIT指数」の時価総額に基づく
各国の株式市場の時価総額は、ブラジルがサンパウロ証券取引所、南アフリカがヨハネスブルグ証券取引所、米国がNY証券取引所、日本が東京証券取引所

リスクが高く、株式やハイイールド債券とでは分散投資の効果が得にくい

 市場規模が小さい資産は、価格変動が大きくなりやすい点にも注意が必要。一般的にREITは、株式と債券の中間にある「ミドルリスク・ミドルリターン」の資産と説明されてきたが、現実にはかなりの「ハイリスク・ハイリターン」となっている。2014年7月末までの過去15年間のリスク・リターン(米ドルベース)をみると、リターンは新興国債券に次ぐ高水準にあるものの、リスクは新興国株式に次ぐ高さで、新興国債券のおよそ倍、海外債券や米中期国債の4倍程度となっている(図表2参照)。

 また、同期間の相関係数をみると、大型株、小型株、海外株式、ハイイールド債券に対してはいずれも0.6を上回っており、債券以外の主要な資産との保有では分散投資の効果が発揮されにくいのも特徴だ。REITなどのオルタナティブ資産は他資産との価格連動性の低さなどから注目が集まり、分散投資の観点から組み入れる動きが広がったものの、期待されたほどの効果が発揮されない場合もある。

図表2:米モーニングスターカテゴリーのリスク・リターン(年率、米ドルベース)

図表2:米モーニングスターカテゴリーのリスク・リターン(年率、米ドルベース)

※ 2014年7月末時点までの過去15年間
※ 大型株=US OE Large Blend、小型株=US OE Small Blend、海外株式=US OE World Stock、新興国株式=US OE Diversified Emerging Mkts、長期国債=US OE Long Government、中期国債=US OE Intermediate Government、海外債券=US OE World Bond、新興国債券=US OE Emerging Markets Bond、ハイイールド債券=US OE High Yield Bond、REIT=US OE Real Estate
出所:MS Directより、モーニングスターが作成

米国での資金流入はパッシブへ大きく傾斜中

 ここ数年の新たな動きとして注目されるのが、グローバルREITファンドの約5割を保有する米国でのアクティブからパッシブへの資金シフトだ。2011年以降は4年連続でパッシブがアクティブを上回っており、投資家のパッシブ志向は鮮明になっている(図表3参照)。米国籍のREITファンドの7割を占める米国を主要投資対象ファンドについては、既に2014年2月にはパッシブの純資産総額がアクティブを上回りはじめており、年内に全リートファンドでもパッシブがアクティブを逆転する可能性が出てきた。

 こうした背景の一つとして、アクティブファンドのパフォーマンスの低迷が挙げられる。2014年7月末時点における米国籍REITファンドの純資産額ランキング第1位の「バンガード REITインデックスファンド」(以下、当ファンド)が連動を目指す指数は130銘柄程度で構成されている。市場規模が小さく、銘柄数も少ないREITではアクティブ運用の余地はそれほど大きくなく、同月末時点の過去3年間のトータルリターンで当ファンドを上回ったアクティブファンドは2割以下にとどまる(※4)。

(※4)米国籍オープンエンドファンドのうち、米モーニングスターカテゴリー「Real Estate」に属するオールデストシェアクラスを対象に集計

図表3:米国籍REITファンドの純資金流出入額の推移(2005年〜2014年)

図表3:米国籍REITファンドの純資金流出入額の推移(2005年〜2014年)

※ 米モーニングスターカテゴリー「Global Real Estate」、「Real Estate」に属するファンド
※ 2014年は7月までの累積値
出所:MS Directより、モーニングスター作成

 こうした海外の状況をみると、現在の日本におけるアクティブファンドを中心としたREITファンドへの人気の集中には違和感を覚えざるをえない。もちろん、米国を中心とした海外投資家の行動が常に正しいわけではないが、あまりにも海外との「ギャップ」が広がりすぎてはいないだろうか。また、今回はふれなかったが、これまで世界的に低下傾向にあった金利が反転・上昇した際の価格変動や、一部の国内籍REITファンドにおける高水準の分配金の継続性などの懸念もある。市場規模が小さく、変動率が高い市場では、後手を踏むと傷が一段と深くなる傾向があり、継続的に資金が流入している好調なときこそ、株式や債券などの伝統的な資産への分散投資や低コストのインデックスファンドの活用なども検討しておくべきだろう。

(吉田 誠)

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