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アナリストの視点(ファンド)

米国で「スマートベータ」の残高が過去最大、日本でも人気波及?それとも静観?

2014-09-16

 「スマートベータ」が米国で人気を集めている。スマートベータとは、企業の財務や業績など時価総額以外の要因に基づき銘柄を組み入れる指数である。スマートベータを活用する米国籍オープンエンドファンド(MMF、ファンドオブファンズ除く、ETF含む)の純資産総額をみると、2014年8月末時点で4,595億ドル(約47兆円規模)と、過去5年間で約4倍に急拡大(図1)。データが確認できる1993年2月以降で最大の純資産総額となった。本数でみても、5年前は約200本だったが、2014年8月末には約380本に増加している。

図1:米「スマートベータ」ファンドの純資産総額推移(2004年8月末〜2014年8月末)

図1:米「スマートベータ」ファンドの純資産総額推移(2004年8月末〜2014年8月末)

※ 米国籍オープンエンドファンド(MMF、ファンドオブファンズ除く、ETF含む)
出所:MS directより、モーニングスター作成

スマートベータって何か良さそうだけど…

 米国ではスマートベータファンドが投資先として選択肢の一つになっているものの、そもそもスマートベータファンドが何か分からない国内投資家も多いのではないだろうか。

 スマートベータファンドとは、パッシブ運用(指数に連動した投資成果を目指す運用)とアクティブ運用(指数を超える投資成果を目指す運用)の中間に位置するもので、運用会社や指数算出会社が特定の戦略やルールに基づいて独自に指数を作り、その指数に連動した投資成果を目指した運用を行うファンドのことである。例えば、割安株や成長株、高配当株などの属性に注目し、等金額投資(各銘柄に同じ比率で投資すること)のルールに基づいて銘柄を組み入れることにより、スマートベータ指数が作られる。こうしたスマートベータ指数をベンチマークとするファンドがスマートベータファンドと呼ばれる。

 機関投資家がベンチマークにするTOPIXやS&P500といった従来型指数の多くは、(浮動株)時価総額加重平均で算出されるため、時価総額上位の銘柄がパフォーマンスに大きな影響を与える。また、時価総額加重平均の指数をベンチマークとするファンドは、株価上昇で時価総額が増加した銘柄が組み入れ上位になるため、「安く買って高く売る」の逆の投資行動を取っていることになる。一方、スマートベータ指数は特定の属性の銘柄を対象に時価総額加重以外の基準でウェイト付けされるので、「安く買って高く売る」投資行動が可能となるため、TOPIXなどの従来型指数とは異なった投資機会を提供する。

 ただ、スマートベータ指数が常に従来の指数を上回るわけではないことに注意したい。図2は、S&P高配当貴族指数(20年以上増配を続けている米国株で構成。以下、高配当株)とS&P500の暦年リターン推移である。2007年末に投資を始めて2013年末まで保有していた場合、高配当株のトータルリターンは年率9.05%と、S&P500の同6.24%より優れたパフォーマンスとなるが、暦年で見た場合、リターンは3勝3敗の五分となっている。リーマン・ショック下の2008年には、高配当株はS&P500よりも下落幅を抑えることに成功しているものの、2009年や2012年、2013年といった上昇局面では劣後している。スマートベータ指数といえども、万能ではないことが分かる。

図2:暦年リターン推移(ドルベース、2008年〜2013年)

図2:暦年リターン推移(ドルベース、2008年〜2013年)

※ 高配当株=「S&P High Yield Dividend Aristcrts TR USD」、S&P500=「S&P 500 TR USD」
出所:MS directより、モーニングスター作成

スマートベータは日本でも根付くか

 スマートベータファンドは、米国では過去最大の純資産総額になっているものの、日本ではまだ本数・種類が少なく、人気を集めていないのが現状だ。

 例えば、高配当株のスマートベータ指数を活用した国内ETFは、「(NEXT FUNDS)野村日本株高配当70連動型ETF」が挙げられるが、2014年8月末時点の純資産額は195億円に留まる。また、企業のファンダメンタルズ(売上高や営業キャッシュフローなどの業績)に着目したスマートベータ指数を活用した国内ETF「(NEXT FUNDS)R/Nファンダメンタル上場投信」も同月末時点で50億円と、同じく低水準だ。

 そのほか、世界最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資を決めたスマートベータ指数の一種である「JPX日経インデックス400」に連動する国内公募追加型株式投信(DC、SMA除く、ETF含む)は、2014年9月12日時点で20本、2,215億円となる。同指数の算出開始から1年経たずに2,000億円を突破したことは注目に値するが、TOPIX連動型の35本、4兆1,813億円(同)には遠く及ばない。2014年8月末までの過去8カ月間は「JPX日経インデックス400」のトータルリターンが▲0.32%となり、TOPIXの▲0.71%を上回ったものの、まだ長期の実績がないためか、本格的な人気化には至っていない。

 GPIFがスマートベータファンドへの投資を決めたが、国内の個人投資家もスマートベータファンドに資金を振り向けるのか注目したい。

(江黒 博樹)

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