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アナリストの視点(ファンド)

ETF市場、“いびつ”な成長遂げた日本

2014-11-11

 国内ETF(上場投資信託)の商品ラインナップが以前に比べ充実してきた。国内ETFの本数は2014年9月末時点で121本(投信協会に登録のETF、以下同様)と、10年前の14本から大幅に増加した。最近ではブラックロック・ジャパンが外債ETF3本と「JPX 日経インデックス400」連動ETFを新たに上場すると発表。国内投資家にとって品揃えが一段と豊富になることは朗報だろう。もっとも、本数は増えたものの、実態は“ETF先進国”の米国と大きく異なる部分も多い。今回は、日米のETF市場の資金フローや純資産残高を確認し、その違いについて述べたい。

資金の受け皿が複数ある米国と国内株式一人勝ちの日本

 日本と比べた米国のETF市場の違いを一言で表せば、規模が圧倒的に違うのは当然ながら、資金フローと残高が一つの資産に偏っていないことが挙げられる。年初来の米国上場ETFの資金フロー(モーニングスター推計値)を見ると、10月は306億ドルの純資金流入と、9カ月連続の流入超だった。内訳(図表1)を見ると、米国株式に加えて債券の流入が目立っており、全体をけん引していることが分かる。他にも、海外株式は10月は純資金流出だったが、9月までは8カ月連続の純資金流入となっていた。少なくとも年初来の動きを見る限り、米国株式への流入が低迷しても、他の資産がカバーして全体としては流入超を維持している。

図表1:米国上場ETFの純資金流出入(月次)

図表1:米国上場ETFの純資金流出入(月次)

※ 米モーニングスターのUSカテゴリーグループに基づく
※ 期間は年初来(推計値)
出所:Morningstar Directを基にモーニングスター作成

 一方、国内上場ETFでは国内株式への依存が鮮明だ。10月は全体で719億円の資金流入超となったが、9月まで年初来で純資金流出となった3カ月はいずれも、国内株式が純資金流出となった月であり、それ以外に資金流入を支える資産がなかった。国内株式の次には特殊運用型の存在が大きいが、これはブル・ベア型ファンドである。中でも、「(NEXT FUNDS)日経平均レバレッジ上場投信」の資金フローが大きく影響している。例えば、10月は特殊運用型が1815億円の純資金流入となったが、このうち同ETFが1674億円の純資金流入と、大半を占める。ただ、ブル・ベア型は相場活況時には資金流入が見込めるが、長期で安定した流入が見込めるタイプの資産とは言い難い。

図表2:国内上場ETFの純資金流出入(月次)

図表2:国内上場ETFの純資金流出入(月次)

※ 期間は年初来(推計値)
出所:Morningstar Directを基にモーニングスター作成

 なお、こうした資産の偏りの違いは、日米ETFの純資産額の比率を見ても明らかだ(図表3及び4)。米国では、米国株式が40%超と最も多いが、それ以外の主要資産のシェアもバランスが良い。一方、日本では国内株式が92%とほぼ一人勝ちの様相。ファンドの規模はETF選びの一つのポイントに過ぎないが、流動性の高いETFが国内株式に集中している状況は改善されるべきだろう。米国では複数のETFを組み合わせてポートフォリオを構築することが個人の投資手法として広く認識されている。日本においても同様の環境を実現するには、コストの低下とともに、幅広い資産において十分な規模及び流動性を有するETFが求められる。

図表3:米国上場ETFのカテゴリー別純資産額比率

図表3:米国上場ETFのカテゴリー別純資産額比率

※ 米モーニングスターのUSカテゴリーグループに基づく
※ 2014年10月末時点
出所:Morningstar Directを基にモーニングスター作成

図表4:国内上場ETFのカテゴリー別純資産額比率

図表4:国内上場ETFのカテゴリー別純資産額比率

※ モーニングスター大分類に基づく
※ 2014年10月末時点
出所:モーニングスター

日銀の追加緩和で国内株式への一極集中は続く?

 最後に、冒頭で紹介した年初来の日米の資金フローについて、個別ファンドのランキングを見てみよう。REITや海外株式とともに、債券ファンドが3本入っている点が注目される。昨年は債券から株式への資金移動を意味する「グレートローテーション」が言われた。足元も米利上げへの織り込みから債券価格の下落が警戒されている状況である。しかしながら、今年はETFへの投資において、地政学リスクの高まりなどから債券が買われたこともあってか関連商品が資金を集めている。こうしたときに資金の受け皿となる債券ETFがあることが米国市場の魅力と言える。

図表5:米国上場ETFの純資金流入額ランキング

  ETF名 カテゴリー 純資金流入額(億ドル)
1 iShares Core S&P 500 大型ブレンド 82
2 Vanguard Five Hundred Index Fund 大型ブレンド 74
3 Vanguard Total Bond Market Index Fund 中期債 58
4 Vanguard Total Stock Market Index Fund 大型ブレンド 56
5 Vanguard Developed Markets Index Fund 海外大型ブレンド 54
6 iShares Core US Aggregate Bond 中期債 53
7 Vanguard REIT Index Fund REIT 41
8 iShares 1-3 Year Treasury Bond 短期国債 35
9 iShares MSCI EAFE 海外大型ブレンド 31
10 Vanguard Value Index Fund 大型バリュー 27

※ 期間は年初来(推計値)
出所:Morningstar Directを基にモーニングスター作成

図表6:国内上場ETFの純資金流入額ランキング

  ETF名 カテゴリー 純資金流入額
(億円)
1 TOPIX連動型上場投資信託 国内大型ブレンド 2,773
2 日経225連動型上場投資信託 国内大型グロース 2,577
3 (NEXT FUNDS)日経平均レバレッジ上場投信 株式ブル型 1,123
4 ダイワ 上場投信-トピックス 国内大型ブレンド 1,065
5 (NEXT FUNDS) JPX日経インデックス400 国内大型ブレンド 1,010
6 MAXIS 日経225上場投信 国内大型グロース 852
7 MAXIS トピックス上場投信 国内大型ブレンド 683
8 上場インデックスファンド225 国内大型グロース 636
9 iシェアーズ日経225ETF 国内大型グロース 608
10 MAXIS JPX日経インデックス400上場投信 国内大型ブレンド 434

※ 期間は年初来(10月はモーニングスター推計値)
出所:モーニングスター

 日本ではランキング上位をすべて国内株式型とブル型が占めた。中でも上位2ファンドへの流入が目立つ。2位の「日経225連動型上場投資信託」は10月末時点の純資産額が2兆1496億円と、上場全ETFのみならず、国内公募追加型株式投信の中でも最大のファンドだ。流入ランキングで1位となった「TOPIX連動型上場投資信託」の純資産額は1億9103億円で、国内ファンドでは「日経225連動型上場投資信託」に次いで第2位。これら2ファンドで国内株式ETFの純資産総額の40%超を占める。

 ETFは日銀が量的金融緩和で買い入れの対象としたことで認知度が高まった。日銀が10月末に決定した追加緩和でETFの買い入れ額を3倍にしたことで一段の資金流入が見込まれるが、一部のファンドだけに資金が向かうのではなく、米国のように幅広い資産においてファンドの残高が拡大し、分散投資の対象として魅力が高まる環境が望まれる。

(坂本 浩明)

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