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アナリストの視点(ファンド)

投資家の本当の“儲け”が分かる「インベスターリターン」とは?

2014-11-13

 ファンドの収益を表す際、対象とする期間でどれだけ値上がり(値下がり)したかを表す指標として「トータルリターン」を用いることが多い。トータルリターンは投資家が一定期間そのファンドを保有し続けたと仮定した場合の収益だ。しかし、投資家が実際に得た収益は売買のタイミングによって異なる。そこで、モーニングスターでは投資家が得た平均的なリターンを表す指標として「インベスターリターン」を算出している。インベスターリターンは金額加重リターンとも言われ、ファンドに資金が流入した時期の比重を高く、資産が流出した時期の比重を低くしている。あるファンドが多額の資金を集めると、流入後のパフォーマンスは流入前のパフォーマンスよりも大きく影響を受けることになる。「このファンドを持っている投資家は実際、どの程度儲かっているのか」を知ることができる指標ということだ。

 分かりやすく言えば、多くの投資家が高値掴みをしたファンドのインベスターリターンは低くなる。例として図表1を見てみよう。点線は値動き、棒グラフは純資産額を意味する。Aファンドは値上がりが期待できるとして多額の資金が流入した。しかし、その後相場環境が悪化して基準価額が大幅に下落。期待して買った多くの投資家は損を被ることになった。こうしたパターンがインベスターリターンの低下につながる例である。逆にBファンドのように、値動きが緩やかに上昇基調を続け、さらに安定的に資金が流入したことにより純資産残高が大きくなったファンドのインベスターリターンはトータルリターンより高くなる傾向がある。多くの投資家が儲けを実感できているファンドと言える。

図表1:インベスターリターンのイメージ

図表1:インベスターリターンのイメージ

出所:米モーニングスター

 ここで、モーニングスターの類似ファンド分類別に、インベスターリターンからトータルリターンを引いた差を「インベスターギャップ」として定義し、その数値を見てみよう。インベスターギャップの値が大きいということは、一般的に投資家がトータルリターンとして目にするファンドの“実力”よりも、実態として投資家は儲かっていることを意味する。つまり、高値掴みではなく、いいタイミングで購入している投資家が多いということになる(図表1)。

図表2:類似ファンド分類別の「インベスターギャップ」

類似ファンド分類 トータル
リターン
インベスター
リターン
インベスター
ギャップ
国際REIT・北米(為替ヘッジなし) 6.5% 13.9% 7.4%
国際株式・北米(為替ヘッジなし) 8.1% 13.8% 5.7%
国内REIT 6.4% 10.2% 3.7%
国内大型ブレンド 3.4% 5.1% 1.7%
日経225連動型 5.4% 6.9% 1.5%
国際REIT・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし) 5.5% 6.8% 1.3%
国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし) 10.6% 11.8% 1.2%
国際債券・オセアニア(為替ヘッジなし) 7.1% 8.2% 1.2%
安定成長 2.9% 3.0% 0.0%
国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし) 6.4% 6.4% 0.0%
バランス 3.7% 3.5% -0.1%
国際債券・北米(為替ヘッジなし) 3.9% 3.6% -0.3%
国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし) 3.9% 3.3% -0.7%
国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし) 4.3% 3.5% -0.8%
国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし) 6.3% 5.3% -1.0%
国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし) 4.1% 3.0% -1.1%
国際債券・エマージング・複数国(F) 7.0% 5.5% -1.5%

※1 期間は2014年10月から過去10年リターン(年率)
※2 「インベスターギャップ」=「インベスターリターン」−「トータルリターン」
※3 国内公募追加型株式投資信託(確定拠出年金専用、ラップ口座専用、ETFなどを除く)が対象
※4 2014年10月末時点でファンドの純資産額の合計が1兆円以上の類似ファンド分類が対象
出所:モーニングスター作成

 純資産額がトップの「新光 US−REITオープン」が属する「国際REIT・北米(為替ヘッジなし)」は「インベスターギャップ」が最も大きく、投資家が実際に最も利益を感じていると思われる分類である。米国REITは、リーマン・ショック時に下落したことで2009年に基準価額に対する分配金の利回りが高くなり人気を集めた。その後、大きな調整局面もなく、米国REIT市場が結果的に上昇を続けたことで、投資家は「トータルリターン」以上の収益を得たということだろう。今後、金融引き締め局面でも儲けを実感できるかは不透明だが、これまでは有望な投資対象だったことになる。

 株式型においては、「国内大型ブレンド」や「日経225連動型」よりも米国の「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」のほうがプラスの幅が大きい。米モーニングスターが行った2013年末までの過去10年間の同様の調査においても、主要資産の中で米国株式が最もインベスターギャップが良好であった。米国株式も米国REITと同様に、リーマン・ショック後に上昇基調を維持してきた資産である。インベスターギャップの数値が大きいということは、本格的な上昇が始まる前にファンドを購入し、その後値上がりの恩恵を受けられた投資家が多いことを意味する。また、「安定成長」や「バランス」など複数の資産に分散投資をしているファンドにおいてはインベスターギャップが0に近く、投資家の売買タイミングによってパフォーマンスに優劣が付きにくく、買い持ちが多いと推測される。

 一方、ほとんどの債券型のファンドはマイナスのインベスターギャップとなった。債券ファンドを購入する投資家の多くは毎月分配型ファンドを好んでおり、マーケット環境そのものではなく、各ファンドの分配金動向によって資金の流出入が影響される傾向が強い。このため、意図せずに、売買タイミングが失敗している可能性がありそうだ。このような中、債券型で「インベスターギャップ」が唯一のプラスとなっている「国際債券・オセアニア(為替ヘッジなし)」は過去10年間の暦年リターン(トータルリターンとインベスターリターンともに)において2008年のリーマン・ショック時のみ下落し、それ以外は安定的に上昇している。長期的な上昇傾向の中、資金も継続的に流入し、投資家は収益を得ている。

 なお、モーニングスターのホームページは個別ファンドのインベスターリターンを参照することも可能である(図表3)。

図表3:モーニングスターのホームページで表示されるインベスターリターンの例

図表3:モーニングスターのホームページで表示されるインベスターリターンの例

出所:モーニングスター

 上記したように、一時的な流行で資金が急激に流入し、その後値下がり基調となるようなファンドはインベスターリターンが低い。ファンドマネジャーの“腕”を表すトータルリターンも大事だが、投資家の本当の儲けであるインベスターリターンも、ファンド選びの際に参考にしたい。

(平賀 優一)

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