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アナリストの視点(ファンド)

再考:新興国ファンドの視点

2015-01-27

 BRICsをはじめとする新興国市場が注目されて10年程度経ちました。投資に関心のある方は新興国ファンドに飛びついた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、よく注意してファンドの中身を精査しないと思わぬリスクにさらされる可能性があります。

新興国経済は先進国経済と直結(対外的リスク)

 ここで、ブラジルの株式に投資するファンドを持っているとします。すると、おそらくファンドを持った途端に、ブラジルの経済事情をあれこれ集めチェックしたくなるのではないでしょうか。

 例えば、ブラジルのように一次産品や衣類などの軽工業製品を生産している新興国は特に貿易相手国の景気動向に左右される傾向にあります。それは、自国の経済(GDP)が輸出先相手と直結しているからです。ブラジルの輸出先第2位の米国経済が悪化すれば、米国でブラジル産オレンジを買う人が減るのは当然ですね(図表1)。その結果、ブラジルの代表的な株価指数・ボベスパのパフォーマンスは米国経済が回復するまで、低下傾向が続く(少し極端に言えば)と考えるのが自然です。

 新興国経済はおおむね、先進国ほどの強固な経済基盤をもちあわせておらず、マーケットの変動に敏感な一次産品を中心に輸出している国ばかりです。日本のように高付加価値の自動車や機械等を輸出するわけではありません。

図1:ブラジルの主要貿易先(2013年)

図1:ブラジルの主要貿易先(2013年)

出所:JETROのデータを基にモーニングスター作成

影響力のある輸入大国(連鎖のリスク)

 逆の発想で考えるとどういうことなのか。新興国経済は状況により先進国(輸入国)の経済状態に大きく依存します。極端に言えば、先進国の輸入によって経済が成り立っている国が世の中には多数存在します。米国が風邪をひくと米国に輸出ばかりしている新興国は風邪どころではありません。高熱を出してフラフラになるかもしれません。それは、おそらく数十か国に影響がでるでしょう。持っている新興国ファンドの組入れ対象国の主要貿易相手が同じ国ばかりであれば、景気下降局面でのリスクは倍増するかもしれません。新興国ファンドが複数国を投資対象としている場合には要注意です。ここで主要新興国の主な輸出相手国・地域の上位を見てみましょう(図表2)。各新興国の貿易相手の上位は、米国、日本、中国、EUなどが多く、新興国経済にとって結びつきが強いことが分かります。インドネシア経済は日本の輸入に大きく依存していることが分かります。さらに、トルコの経済はEUと強く結びついていることが分かります。

図2:代表的な新興国の主要輸出相手国・地域

  1位 比率 2位 比率 3位 比率
メキシコ 米国 78.8% EU 5.2% カナダ 2.7%
ブラジル 中国 19.0% 米国 10.0% アルゼンチン 8.0%
アルゼンチン ブラジル 20.8% EU 14.4% 中国 6.8%
インドネシア 日本 14.8% 中国 12.4% EU 9.2%
インド 米国 12.4% アラブ首長国連邦(UAE) 10.3% 中国 4.7%
中国 香港 17.4% 米国 16.7% EU 15.3%
南アフリカ 中国 14.3% 米国 8.3% 日本 6.6%
トルコ EU 38.8% イラク 7.1% イラン 6.5%

※ メキシコ、ブラジル、インド、インドネシア、中国、南アフリカは2013年時点、
アルゼンチン、トルコは2012年時点
出所:JETROのデータを基にモーニングスター作成

重要となる景気循環とタイミング(タイミングリスク)

 ファンドの前提として中長期の運用成果を目指していることから、景気の循環的な側面を無視しがちですが、景気後退期に入ってからの新興国ファンド購入は難しいものがあります。投資対象国ばかり見ていたのでは、なかなか新興国特有のリスクに目を向けることはできません。特に 新興国ファンドは、投資対象国の主要貿易相手が景気回復期なのか後退期なのか注意深くモニターする必要があります。実際にあったのは、2007年の後半からに米国の景気後退が鮮明になりつつある時期に、中東の新興国株式の株価が上昇し始めました。実際に起きていたのは低調な米国経済から資金の逃避先として潤沢なオイルマネーに活気づいていた中東に資金が移動したことによります。しかしながら、中東の主な原油輸出先である米国の景気がいっそう低迷すると、短期の資金流入で湧いた中東株式のバブルがはじけ株価が下落しました。中東の株価(木)だけを見ていると全体の経済の仕組み(森)を見失う可能性があります(図表3)。

図3:米国景気後退時期の株価の推移(米国とUAE)

図3:ブラジルの主要貿易先(2013年)

※ 米国景気後退期は全米経済研究所(NBER)による定義
出所:JETROのデータを基にモーニングスター作成

 新興国ファンドを例に挙げて見ましたが、他のファンドを見る上でも当てはまることがあるかもしれません。ネガティブなことばかりでしたが、裏を返すと、逆のパターンもあるわけです。最近では、景気が着実に回復している米国経済と新興国がお互いの経済的な恩恵を享受しつつ、新興国ファンドのパフォーマンスを支えている面はあります。メキシコなどはいい例です。ここ数年間好調な米国経済を背景にメキシコからの米国向け輸出が堅調に伸びています。

 新興国ファンドは市場の割安感であったり、利回りの高さなど、ついつい金融的な効率ばかりに注目しがちですが、もっと経済な観点からファンドの商品を評価してもよいのではないかと考えます。

(熱田 高広)

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