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アナリストの視点(ファンド)

米国REITが四半期では過去最大の資金流出、過去の利上げ局面では株式が優位

2015-07-23

第2四半期の米国籍REITは過去最大の流出を記録

 6月の米国籍オープンエンドファンド(ETF含む、ファンドオブファンズ等除く)のカテゴリー別純資金流出入額をみると、流入超過の上位にはグローバル株式、ヘルスケア、米国中期債などが並ぶ一方で、流出超過の上位には米国株式、ハイイールド債券、米国REIT(不動産投信)などが並んだ。中でも、米国REITは27億ドルの流出超過と、集計可能な1993年以降では2007年5月に次ぐ過去2番目の流出規模となった。4月から3ヵ月連続の流出超過となったこともあり、2015年第2四半期(4−6月期)は累計で60億ドルの流出超過と、四半期ベースでは過去最高の流出規模となった(図表1参照)。また、近年はアクティブが流出超過、パッシブが流入超過となる傾向が強かったものの、2015年第2四半期はアクティブが過去3番目の流出超過額、パッシブは過去最高の流出超過額となっており、米国REITファンド全般に解約が及んでいるのも特徴的だ。

図表1:米国REITファンドの純資金流出入額の推移(四半期)

図表1:米国REITファンドの純資金流出入額の推移(四半期)

期間:2007年第1四半期〜2015年第2四半期
※ 米国REITファンド=米国籍オープンエンドファンド(ETF含む、ファンドオブファンズ等は除く)のうち、モーニングスターカテゴリーで「Real Estate」に属するファンド
※ 純資金流出入額はモーニングスター推計値
出所:モーニングスター作成

利上げ局面では劣後するREITのパフォーマンス

 こうした背景には、米国の利上げに対する懸念がある。REIT、株式などは利上げ局面での運用成績悪化が連想されやすく、実際に利上げが行われる前に早めに解約しておこうという動きが強まっていると推測される。では、実際に過去の利上げ局面ではREIT価格はどのように推移したのだろうか。米国では1980年以降、6回の利上げ局面があったが、同期間でREITの騰落率がマイナスとなったのは第5期(1999年5月〜2000年5月)の▲1%のみ(図表2参照)。他の5期のうち、第6期(2004年5月〜2006年6月)の6割超の上昇は、その後の住宅バブルの崩壊、金融危機へとつながっていくだけにあまり参考にならないとしても、4期では1〜6%程度のプラスとなっている。利上げ局面は一般的には景気が良く、不動産価格や賃料も堅調に推移するという前提に立てば、REIT価格も堅調に推移するのは当然とも思える。

図表2:米国の利上げ局面におけるREIT、株式、ドル円の騰落率

利上げ局面 政策金利の
引き上げ幅(%)
米国REIT
騰落率(%)
米国株式
騰落率(%)
ドル円レート
騰落率(%)
1984年2月〜1984年8月 2.25 1.87 8.70 3.61
1986年11月〜1987年9月 1.37 4.99 32.38 -9.77
1988年2月〜1989年2月 3.25 5.61 11.89 -0.76
1994年1月〜1995年2月 3.00 0.49 4.45 -11.52
1999年5月〜2000年5月 1.75 -1.17 10.48 -11.59
2004年5月〜2006年6月 4.25 62.57 17.75 4.65

※ 政策金利は月末基準で判定
※ 米国REIT=FTSE NAREIT All Equity REITs Index(配当込、ドルベース)、株式=S&P500(TR、ドルベース)、ドル円レート騰落率=東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月末(日本銀行)で、騰落率がプラス(マイナス)の場合はドル高(安)・円安(高)
出所:モーニングスター作成

 ただし、1〜5%程度のリターンは米国REITのパフォーマンスとしては必ずしも高いとはいえない点には注意が必要だ。そもそも米国REITは年3〜7%程度の配当利回りがあり、それ以下のパフォーマンスではREIT価格は下落している可能性がある。また、米国REITは長期的には概ね右肩上がりの上昇が続いてきており、1984年1月末と2015年6月末の指数を比較すると約27倍、1年間保有した場合は約8割の確率でプラス、平均リターン(ローリングリターン)は13%となっている。つまり、過去の経験則では、利上げ局面は半年から2年程度で終了するが、その間に得られるリターンが1〜5%程度であれば、REITはその期間は避けて投資を行った方がよい、という考え方も成り立つ。REITにとって、金利の上昇は資金調達コストの上昇、配当利回り面での魅力の低下といったマイナス面の影響もあるため、賃料収入の増加などで補えない場合には価格の低迷につながりやすい。

円ベースでは「耐える期間」となる可能性も

 米国株式の場合も、1年間保有した場合のプラスの確率、平均リターンともにREITとほとんど異ならず、利上げ期間中のリターンが4〜32%とばらつきがあることから、利上げ期間中に好景気を織り込んで上昇ピッチが早まっているとまではいえない。ただし、米国株式は6期の全てで騰落率がプラス、第6期を除く5期でREITの騰落率を上回っており、利上げ期間中では株式の方が優位となる傾向がある。ちなみに、1984年1月末と2015年6月末の指数を比較すると、米国株式も米国REITと同様に約27倍になっている。過去10年以上にわたり、米国REITファンドのシェアが1%前後からほとんど変化しないのは、長期のパフォーマンスでは差がなく、近年は価格連動性も高まる中、あえてREITそのものの流動性やファンドの選択肢などで劣る米国REITファンドに投資する意味が乏しいことも一因となっているかもしれない。

 一方、為替レートについては、米国の利上げ・日本の低金利持続→日米の金利差拡大→ドル高・円安との連想が働きやすいが、1985年(プラザ合意)以降の5期中4期はドル安・円高となり、うち3期は10%程度のドル安・円高となっている。そのため、円ベースのリターンは、米国株式が5期中3期で、米国REITが同2期でプラスとなっているものの、その2期の内訳は異例の上昇となった第6期と、6%前後のプラスにとどまった第3期だ。つまり、過去の実績を見る限り、利上げ局面中の円ベースでの米国REITのパフォーマンスはそれほど高いリターンが期待できない「耐える期間」となる可能性がある。

(吉田 誠)

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